#2 柳ヶ瀬商店街エッセイ「ニュー銀座堂」
彼女たちとの出会いは、8月1日だった。岐阜の柳ヶ瀬商店街を探索しているときにニュー銀座堂とたまたま出会って、そこにいた彼女たちは今まさに展示の搬入を終えた様子だった。
Humpit。踊りの中川鈴音さんと、衣裳の平野みなみさんの2人のユニットの展示が始まろうとしているところに、わたしは出会った。
彼女たちはこのニュー銀座堂で寝て食べて、生活をしながら空間展示を作り上げていったそうだ。衣装を作って、踊りを考えて、ひたすら創作する日々を想像してみた。
わたしは出会いからすこし日が経った今日、彼女たちの展示を観にいくことにした。出会った頃はまっさらだったあの空間が、どう変わっているのかわくわくしていた。
開演からの30分間、わたしはこの空間に引き込まれていた。
このニュー銀座堂というアートスペースと、ここで作られていった衣裳と、見事に融合したコンテンポラリーダンス。こんな展示をわたしは観たことがなかった。
生活の音で繰り出される動きひとつ、目線ひとつ、指先の衣裳ひとつ、その全部が彼女たちのこの部屋の、世界の中で生きている。
掛け布団が衣装になる瞬間。紐を結んで、それが可愛らしいチェックのワンピースになった。その瞬間、この部屋が彼女の一部となった。
部屋の中で、雨が降る音がした。ゴーゴーと降り出して、ソファの下で雨宿りをしていたり、ゴミ袋がレインコートの衣裳になっていったり、それを身に纏いひとつの動きとして溶け込んだりしていく。
音楽はない。言葉もない。それは純粋な表現で、創作で、アートギャラリーという空間ではなく彼女たちの部屋で、生きる展示だった。
衣裳の使い方、展示されている物の意味、ダンスの動き、ここで生み出されているものに思いを馳せる。じっくり時間をかけて、そのすべてはこの部屋として溶けながらも存在している。違和感が生まれそうなのに、それほど違和感なく、ひとつひとつが形を纏いながら組み合わさって生きていた。
出会った10日前はまっさらであったこの場所が、こうして彼女たちによって生きる部屋として存在し、ひとつの作品と仕上がっていることにわたしは感動した。
どうやら彼女たち2人は遠くに住んでいるらしかった。そうして落ち合って同じ場所、この柳ヶ瀬商店街にあるニュー銀座堂という場所で、生活まるごと作品にしている生き方こそが作品だと思った。
コンテンポラリーダンスをかじっただけのわたしが、この場所で最後に一緒に踊らせてもらいました。貴重な経験…!
友達0人から移り住んだこの岐阜という土地に、こんな素敵な場所があることに感謝したい。
ニュー銀座堂、通います。
素敵な出会いをありがとう。
わたしも頑張らなきゃ。
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↓柳ヶ瀬商店街エッセイを依頼してくださった
喫茶星時 ごろーさん Instagram
p.s.
今後こちらの喫茶星時にて
あるイベントを企画していきます
続報をお楽しみに…!!