#3 柳ヶ瀬エッセイ「くろねこWUO!」
「エッセイの最後の依頼は、この場所で施術(セッション)を受けてきてほしい。」わたしが個展を開催する「喫茶星時」のオーナーからそんな一報をいただいた。
くろねこWUO!は、小関千恵さんが開くボディケアのお店。初めての体験、初めての出会いに心が躍った。
最近ちょうど、身体が重たかった。これは身体だけの問題ではないことも自分でわかっていた。慣れない環境で、慣れない人間関係に揉まれながら、毎日を過ごしていたから。なにか言葉にできない黒いもやもやが、身体のどこかに溜まっている感じがしていた。
くろねこWUO!は、まるで古民家のような落ち着きがあった。ちえさんは、一目見た瞬間から不思議と安心できる存在だった。この人だったら、委ねても大丈夫だ、と心の奥底のわたしがそう言っていた。
まずは足つぼ。仰向けになって、天井を見ながら施術を受け、ぽつぽつとお話をする。
ちえさんの施術は、お金にも、時間にもとらわれないスタイルだ。投げ銭システムをとっていて、施術者に申し訳なくない、自分が納得できる金額を払ってください、というものだった。
ちえさんは、資本主義の社会に疑問を持たれていた。お金の価値は人それぞれなのに、なんでお金を持っている人が得をするのだろう、と。わたしも、エステや美容を受けることを、お金を理由に何度も諦めてきた。そういうところにお金を払える人は、生活にゆとりがある人なのだと思っていた。
わたしがちえさんの施術を受けられているのは、お金で人の価値を決めていない人だから。わたしはこうしてご縁をもらえたのだと思った。お金で自分の価値を決められなかった時、人として見てくれた時、わたしはなにかを返したい、と強く思うのだ。
ボディケアのセッションは、今まで感じたことのない、ちえさんとの繋がりと、自分の身体と心との繋がりを実感した。不思議な感覚だった。海に浮かんでいるのに、森の中で森林浴をしているような、それでも人と自分と繋がっているような。
だんだん、呼吸がしやすくなっていった。関節が、開いていく感じがした。身体だけじゃなくて、心が軽くなっていった。言葉にならない言葉が、すっといなくなったり、また入ってきたりしていく。ただ委ねているだけなのに、どんどん自分の中身が変化していくのがわかった。
「アズちゃんは、肩の関節に感情が溜まりやすいね」
人生で初めて言われた言葉なのに、とてもしっくりきた。仕事で疲れると、どんどん呼吸がしにくくて苦しくなる。肩と首が凝ってくる。施術してもらったあとは凝りとわるい塊が綺麗さっぱりなくなっていた。
ちえさんの施術は、わたしの心と身体を丸ごと守ってくれる。風通しよくしてくれる。わたしの価値はわたしが決めていいんだと教えてくれる。
また、柳ヶ瀬に通いたい場所ができて、嬉しかった。わたしのことを理解してくれる人がここにもいて、嬉しかった。こうして言葉にしたら、喜んでくれる人がいて嬉しかった。
わたしがわたしであるために、またちえさんのセッションを受けに来よう。
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3ヶ月間、柳ヶ瀬エッセイを連載して柳ヶ瀬のことが大好きになったし、もっと知りたくなりました。まだまだ面白い出会いがある、と確信しています。
ご依頼をいただいたごろーさん、出会ってくれた皆さん、ありがとうございました。お仕事関係なく、また柳ヶ瀬で面白い出会いがあったときにはエッセイを書こうと思います。
読んでくれたあなたも、ありがとうございました。
またどこかで出会いましょう。
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