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狼と狐のセリアンが多い理由

 友人の【セリアン/Therian】から、狼と狐のセリアンが多い理由を尋ねられたので、私なりの回答をさせていただければと考えました。
 ただ、あくまでもこれは一般論+私の個人的な推測に過ぎないので、あまり過信しすぎないでください。【セリアンスロピー/Therianthropy】にも【アザーキニティ/Otherkinity】にも「絶対的な正解」も「間違い」もありません。だからこそ予測と推論と統計学が我々の道標となってくれる事を期待しております。

 海外では狼はとても象徴的な動物として扱われています。野生の化身、孤高、威風堂々、カッコいい、そんなイメージを持っている方が多いのではないかと思います。だからこそ、【コーピングリンク/Copinglink】のような「動物になってみたい」という願望を持った方が、憧れの気持ちから恣意的に選んでしまいがちな動物の筆頭候補と言えます。

 日本では稲荷信仰の影響で、狼の代わりに狐が象徴的な生き物として扱われています。また、「化けないFox」は世界じゅうに分布していますが、「化ける妖狐」は日本特産であると言えます。
 それ故に、日本には狐に対して感情移入しやすい文化的な土台があります。

 ただ。
 別の項でこれまで述べてきたとおり、何年も何十年も一貫して【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】を名乗っている方の数は、実はそう多くありません。【コーピングリンク/Copinglink】のような後に【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】を辞めてしまう人々の方が、残念ながら全体としての割合ではかなり多いのが現状です。
 しかも彼ら彼女らが【コーピングリンク/Copinglink】であると明確に見分けられるタイミングが、【セリアン/Therian】を辞める時の自己申告であるため、彼らは自らが「偽物」であると暴露する寸前までは多数決やアンケートに「【セリアン/Therian】として」参加出来てしまうのです。夢の無い話になってしまいますが、おそらくこれこそが狼や狐の【セリアン/Therian】が異様に多い一番の理由なのではないかと考えられます。

 とはいえ、他にも推論はできます。

 以前の項で説明したとおり、【覚醒/Awakening】を経験する事が【セリアン/Therian】や【アザーキン/Otherkin】にとって必ずしも幸せに直結するとは限りません。【覚醒/Awakening】を経験せずに済めば、少なくとも大きな違和感や苦痛を覚えたりする事はないかもしれません。実際に【セリアンスロピー/Therianthropy】や【アザーキニティ/Otherkinity】意識してしまったが故に【種族違和/Species Dysphoria】が強くなってしまったという例も報告されているので、少なくとも人間社会の中で生きていくためには【覚醒/Awakening】しない方が良いと考える方がいても不思議ではありません。

 ですから、本当は【セリアン/Therian】であるにもかかわらず、【セリアン/Therian】であると気付いていない方もある程度の数がいらっしゃるのではないかと私は推測しています。

【覚醒/Awakening】のきっかけは【自己同一感覚/That's me! Feeling】である場合が大半ですが、人間と大きく離れた生態を持つ【セリオタイプ/Theriotype】の方は、人間の生き方や文化に対して強い拒絶反応を示してしまう場合も予測されます。それが【覚醒/Awakening】の直接的な引き金となる場合も十分に想定されます。

 つまり、人間と共に暮らしている犬猫などの【セリアン/Therian】であれば、たとえ若干の違和感を覚えていたとしても必ずしも【覚醒/Awakening】しなくても生きていけるのかもしれない、と仮説を立てる事もできます。
 
逆説的に言うならば、【覚醒/Awakening】してしまった【セリアン/Therian】の中で多数派を占める狼や狐には、人間の生態や文化に対して強い拒絶反応を示してしまう何らかの特徴があるのかもしれません。
 実際に私自身も特定の人間の生態や習性には半ば本能的な拒否反応や恐怖を覚えてしまう事も多く、自分が普通の人々とは違う存在である事を再認識させられる機会も少なくありません。

 さらには、そういった狼や狐の持つ特性をよく観察した人間が、「人間から見た狼や狐のイメージ」を形成していったのかもしれません。狼の持つ「孤高」や「勇敢」といった印象は、単純に実際の狼の生態を示すだけでなく、人間の生態と狼の生態の違いが際立った部分であるとも考えれます。

 ですから、一見するとかなりシンプルな問題ではありますが、その背景には実はかなり複雑な文化的事情が隠されているのやもしれません。
 いずれにせよ、【セリアンスロピー/Therianthropy】は「人間の心理学」や 文化人類学(Cultural Anthropology) だけでなく 動物学(Zoology)動物行動学(Ethology) とも深い関わりがあります。
 そもそも人類の文化が非常に多くの事象の影響を受けて醸成されてきたため、「それぞれの動物に関する何となくの印象やイメージ」という単純ですが根深い問題になってくると、明確に「これだ」という原因を求めるのは難しくなってきてしまうのではないかと思います。

 いずれにせよ……
【セリアン/Therian】の中に一定数の【コーピングリンク/Copinglink】が含まれていると仮定するならば、「何故狼と狐の【セリアン/Therian】が多いのか」という問題を「何故狼と狐の【セリアン/Therian】が多いのか」と、「何故狼や狐を【キース/Kith】に選ぶ【コーピングリンク/Copinglink】が多いのか」という二つの問題に切り分ける必要があると感じます。

【セリアン/Therian】の人口比については、

1.「その動物がどの程度人間に認知されているか」「自分の【セリオタイプ/Theriotype】に関する正しい情報にどの程度アクセスし得るか」に直結するため、「本物の」【セリアン/Therian】であったとしても、「より有名な動物種」を自分の【セリオタイプ/Theriotype】だと誤認しやすいこと。

2.そもそも狼や狐の生態や種族特性が人間の持つ文化や生態との齟齬や摩擦を生じさせやすく、結果として狼や狐の【セリアン/Therian】が選択的に【覚醒/Awakening】しやすいのではないか。

 この二つが原因ではないかと仮説を立てることができます。

【コーピングリンク/Copinglink】は性質上自分で【キース/Kith】を「選ぶ」ことが出来てしまうため、「カッコいい」とか「可愛い」という印象を自分が持った種族の「仮面を被る」事が多いと予想されます。ですから、こと【コーピングリンク/Copinglink】の方々に関しては、人口比は「種族の人気投票の結果」と読み替えてしまっても良いのかもしれません。