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日本の学校のIBDPは、海外大進学/国内大進学を考えると、どうなのか?

去年の夏、3年半のアメリカ駐在から帰国し、息子は中学3年の二学期から、首都圏の国立IB校に編入しました。かつて、駐在に出る前に、息子より2歳年上の娘が中学1年の間だけ通っていた学校です。

この学校は、入学すると全員がMYPで学びます。高2&高3で選択するDPは、学年のうち10分の1くらいの人数が定員です。

高1までのMYPの学びでも、レポートが多く、勉強は結構大変のようです。
でも、卒業生が保護者会などで話してくれたお話を聞くと、「この学校で鍛えられたから、大学に行くとすごく楽」、との共通認識がみさなんあるそうです。

これはある時、東大理系(女子)と一橋文系(男子)に進まれた卒業生が、生徒同席の保護者会でお話してくれたころですが、「中高の時と大学とどちらが大変か」という後輩からの質問に「もちろん中高の時」と口を揃えて回答していました。もちろん、学問の難易度は大学の方が難しいけれど、課題の数や、その他諸々の活動との時間のマネジメントなどを考えると、圧倒的に中高時代の方が勉強は大変だった、とのことでした(!)

さらに、大学に入ると、自分はレポートやプレゼン準備をサクサク進め、パワポなども当たり前に作成できるのに対し、ほかの高校出身の生徒はこういったことがなかなかあまり得意でないのをみて驚いたそうです。議論でも、「高校時代には自分はまったくリーダーシップを取る場面もなくて、周りのもっとテキパキした子がどんどんやっていたけれど、大学に入ったらそんなタイプでなかった自分が、プロジェクトやディスカッションを率いる立場になっている・・」というお話も印象的でした。
このお二人の卒業生たちは、たしかDPは選択しなかったとおっしゃっていたと記憶しています。

IB校で学び過ごしていくと、やはり「動ける」学び人になるのが、IB教育の特徴なのかなあ、と感じた一場面でした。


さて、ずっと下書きに入れていたのですが、日本のIBDPについて、意外と知られていないと思われることがあるので、今回はそれについて書いてみます。私自身はIB教育を受けたことはありませんし、子どもたちもDPを選択していません。ですから、すべてリサーチからの知識と、先にあげた子どもの高校で実際にDPを選択した(あるいはしなかった)さまざまな先輩方の声を集めて集積した内容となります。(あとアメリカの現地校のIBプログラムを取っていた方の話もいくつか聞いています)

今回の記事のデータは、オンライン家庭教師EDUBALさんが発信されている情報をたくさん使用させていただきました。

まず、IBについて、そしてDPについてあまり知らない場合は、Edubalさんによる、「IB科目選択ガイド」でIBの基本から細かい科目の内容まで理解することができますので、こちらを一読されることをおすすめします。


以下は、「文部科学省IB教育推進コンソーシアム」ウェブサイトから。

DPというのは、日本の学校の場合、高校2年と3年で履修するプログラムです。
海外のIB校やインターナショナルスクールでは、基本的にほとんどの生徒がDPに進むことが普通ですが、日本のIB校の場合、学年のうち一部だけが選択するプログラムとなっています。

DPでは、コアと呼ばれる必須3科目に加えて、6つのグループから、基本的には1科目ずつを選択して履修します。

コアと呼ばれる必修の3科目
6つの分野(グループ)

文系と理系、両方を深く学ばなくてはいけないことから、学習負担の大きいプログラムだと認識されています。そして、難易度はHL(ハイヤーレベル)とSL(スタンダードレベル)があり、6つの科目のうち、3科目はHLを履修することになっています。

ただし、芸術科目の代わりに、ほかのグループから2科目を選択することも可能とされています。海外のトップ大、特に理系に進む場合などでは、数学あるいはサイエンス分野から2科目履修することが求められていることが多く、芸術科目を選択しない学生も多いようです。

各グループ、特に社会系とサイエンス系の分野で選択できる科目は多様で、面白そうな科目がいろいろありますよね。

これらの各分野からの科目選択は基本的に自由に選ぶわかえですが、実は、大学や学部によっては、出願には「数学(HL)が必須」「理科は物理が/化学が(HL)で必須」というような、出願要件の決まりがあることもあります。

つまり、高校2年になる前の履修選択の段階で、いきたい大学をある程度決めて、必要な履修科目を知った上で、これらを選択する必要があるのです。(もちろんそうでなくてもよいのですが、大学受験が近づいた時に、「この大学のこの学部は〇〇がないと受けられないんだって!😭)と言うことにならないように、理系の場合にはとりあえずなんとなくでもこの辺りを事前に考えておいた方がいい、ということです。これは普通の高校の課程の場合も、海外大に出願する場合には同じ部分がありますね。)

したがって、理系を希望している場合、多くの場合、芸術科目は取らずに、サイエンス科目などで2科目選択することになるようです。

ここまでが、一般的なDPにおける科目選択についての内容でした。


ここからは、日本の一条校のIB校でのDPについてです。

日本の一条校のIB校では、DPを選択する生徒は、こちらの記事でも少し触れましたが、実はそんなに多くありません。

理由としては、まず、教員の人数も限られているため、定員を設けていることが多いことがひとつ。そして、日本の大学を一般の試験で受ける場合、DPの勉強が大変で、一般的な受験勉強をする時間が取れない、そして受験においてはDPの学びをあまり評価してもらえない、という、「日本の大学の一般受験との親和性が低い」ことがひとつ。そして、海外大進学を希望している場合に、敢えてDPを避けて、一般のプログラムにすることがあることがひとつ、言えそうです。


今回は、最後に挙げた、海外大学に進学したい場合に、敢えてDPを選ばないことがあることについて書きたいと思います。

再びEDUBALさんの、こちらはインスタグラム「おまかせ!IB情報局」(Edubal_IB)から画像をお借りします。

少し前に、首都圏の一条校の、国公立のIB校の、詳細をあげてくださっていました。

注目していただきたいのは、DPで選択できる科目です。
それぞれの学校で、グループから選択できる科目がすでに決まっていることが多いのです。

都立国際と横浜国際高校では、サイエンスが3科目から選択でき、SL/HLも選択できるようですが、他の多くの学校では、サイエンス科目を自分で選択することはできません。そして芸術科目は、どの学校も一つだけ、事前に決まってしまっています(都立国際では設定がないようです)。
一条校でDPで学ぶ場合、個人の関心に従って科目選択することがほとんどできないのです。


私立の学校を加えると、首都圏のDPプログラムがあるIB校はもう少し増えます。

こういった科目選択の制約は、IB校に通う生徒がDPを選択するかどうかに、少なからず影響を与えていると思います。

息子の高校で、また別の3名の卒業生、こちらは海外大学に進む先輩方がお話してくれる機会がありました。
その3名のうち、財団系奨学金を取得してIVYリーグの大学の理系学部に進学される2名は、DPは選択しなかった、とおっしゃっていました。自分の研究に時間を使いたかったこと、そして、物理が選択できなかったことが理由だそうです。
一方で、もう1名、カナダの2年制大学に進学予定(3年から編入を目指している)の方は、DPを選択していて、それはそれは有意義な2年間だった!!✨ とのことでした。最終スコアは悪くないと思うけれど抜きん出ているわけではなく、トップ大などの出願では闘えないスコアだったと認識されていて、急遽海外大へ進路を変えたこと、予算の関係などから、まず2年制大学に進学することにしたそうです。

✅ただ、首都圏のみでなく全国で見ると、一条校のIB認定校(リンク先※)ももっとたくさんありますし、その中には、例えば、ほぼ首都圏の茨城県の茗溪学園や、関西で人気のある立命館宇治中学校・高等学校などでは、社会系もサイエンス系も複数科目が開講されているようです。

IBの学びは全人教育と呼ばれるもので、本当に興味深く、いいものだなと、個人的には思っています。
その真骨頂となるDPではありますが、選択科目の関係で大学進学という現実的な問題と折り合いがつかなかったり、あるいは、勉強や部活やバイトや人間関係、いろいろなことに大忙しな高校生という時代をどう過ごすか、という時間配分の部分で、IB校に行っていてもDPプログラムを選択しないことも割と多いいうことを、この辺りについて疑問に思っている方にシェアできたらと思い、私の知っていることをまとめてみました。

しかしながら、DPを選択しなくても、IB的な学びを進めることには違いないので、日本の高校カリキュラムを選択しても、IB校では、MYP時代と同じく、主体的に学んでいくことには変わりないようです。

逆に、DPを選択すると、はじめこそ勉強の大変さに後悔することもあると聞きますが、最終的には、本当に素晴らしい2年間と学びを得られた✨ と大満足になると聞くことも多いです☺️

何を選択しても、高校時代は、忙しく、楽しく、充実したものになるのでしょう。

記事がどなたかのお役に立てれば幸いです。



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