ゼロから始める音楽理論.2-コードについて学ぶ-
はじめに
作曲には音感やセンスが必要で、難易度も高いと思っていませんか?実は誰にでもできます。音楽の授業で習った"ドレミファソラシド"さえ覚えていれば、オリジナル曲は書けるのです。作曲に興味がある方、初音ミクを使ってみたいけれど曲は書けない方、何かスキルを身につけたいと考えておられる方、豆知識として音楽理論を掻い摘んでみませんか。本記事は全文無料にて公開しておりますが、参考になりましたらご支援頂けると助かります。
前回のおさらい
前回の記事では、①音は12あること ②その12の音名はイタリア語のドレミ以外にもいくつかの言語で表記されること ③音同士は互いに半音1つ分ずつ離れており、この2つの音同士の間隔を音程と呼ぶこと ④1曲の中で使う音は定められた間隔に従って12→7に絞られ、この7つの音同士の間隔をスケール(音階)と呼ぶこと ⑤明るい曲に使うメジャー・スケール(全全半全全全半)と暗い曲に使うマイナー・スケール(全半全全半全全)があること ⑥12の音の何処から始めても音同士の間隔は変えてはいけないこと ⑦曲に使用するスケールが決まるとその曲のキー(使用する♯や♭の数のこと、実質6個まで)や明るい(メジャー・キー/長調)、暗い(マイナー・キー/短調)が決まること ⑧♯や♭の数が同じになる(=使う7つの音が同じになる)1つの長調と1つの短調の組み合わせがあり、これを平行調と呼ぶこと ⑨ピアノで全部白鍵で弾ける(♯や♭が付かない)のは、ドから始めるCメジャー(ハ長調)とラから始めるAマイナー(イ短調)の組み合わせであること、の9点をお伝えしました。思い出して頂けましたか?ここには概要しか書いていませんので、是非前回の記事にも目を通してみて下さい。
複数の音を扱うには
楽曲とは当然ですが、歌メロだけが鳴っているわけではありません。複数の異なる音が同時に鳴っているはずです。3つ、あるいは4つの音を同時に鳴らした時の響きを和音、コードと呼びます。ギターやキーボードなどの伴奏に使い、コードを代表する音はベースに使用しています。他にハモりや装飾音のトラックを入れる場合もありますが、全ての音程楽器は音が濁らないように入れなければなりません。そこでコードの知識が必要になってくるのです。音楽とはコード伴奏のトラックのみならず、楽曲全体でも常に何らかのコードを構成しているものなのです。要するにドラムやFXを除く、ドレミがある全てのトラックは常に綺麗にハモらねばならないのです。この記事では前回以上に難しい言葉も増えますが、何度か読めば使えるコードやその規則が理解できると思います。
音程には名前が付いている
上の図では前回の白鍵縛りは一旦忘れて、12の音全てで考えて下さい。これは音程に付けられた名前で、スケールと同じく半音の数により決められます。音程の種類には①完全音程②長音程と短音程③増音程と減音程の5種類3セットが存在します。上の画像では完全音程(Perfect interval)をP、長音程(Major interval)をM、短音程(minor interval)をm、増音程(augmented interval)を+、減音程(diminished interval)を-で略記しています。まず完全音程と長、短音程が基本にあり、それらの半音上が増音程、半音下が減音程になります。これらに度数を併記し、完全◯度、長◯度などと表します。度数はドを基準にする場合はドが1度、レが2度、ミが3度、ファが4度、ソが5度、ラが6度、シが7度となり、次の8度で1オクターブ上のドの音に戻ります。1、4、5度は完全音程ですが、その他の2、3、6、7度には長音程と短音程が存在します。8度以上は1オクターブ下と同じです。
ややこしいので1つずつ確認していきましょう。完全1度は始点の音で、上の図ではドから数えます。1度がドなら2度はレの音です。短2度がレ♭、長2度がレになります。3度のミにも短3度のミ♭と長3度のミがあります。そして4度、5度のファとソは完全音程ですから、それぞれ完全4度、完全5度となります。間の黒鍵はファ♯と考えれば完全4度であるファの半音上なので増4度となり、ソ♭と考えれば完全5度であるソの半音下なので減5度となります。6度のラにも短6度であるラ♭と長6度であるラがありますが、短6度のラ♭をソ♯と読み替えると、完全5度の半音上の音となるので増5度の扱いに変わります。ラ♭はラの仲間なので6度ですが、ソ♯はあくまでソの仲間なので同じ音でも5度なのです。これは短6度に限らず、どの音も♯に読み替えると同じことが起きます。短3度のミ♭も、レ♯と読めば長2度であるレの半音上、増2度の扱いです。7度のシにも短7度であるシ♭と長7度であるシがあります。そして一周回って完全8度=完全1度の1オクターブ上、となります。9度以降もまた2度と同じく、短9度がレ♭で長9度がレ…と続いていきます。かなり凝ったコードでは13度の音まで使いますが、通常は7度、9度までと考えて構いません。完全音程である1、4、5度と増4度(=減5度)以外は半音1つ毎に短長短長…と続いていく感じになります。
2つの音の響きですが、完全1度に対して長3度、短3度、完全5度の音は重ねて使いやすい良い響きになります。完全4度、長6度も悪くありません。減5度や増5度だとオバケでも出そうな不気味さを感じますので、これはポイント使いが良いでしょう。7度の響きはコードだと割とベーシックですが、1オクターブ下では1度と近すぎるため濁ります。2度も完全に濁った響きになりますが、こちらも1オクターブ上の長9度だとコードでよく使われており、ジャジーな曲では特に頻出の音になります。
コードを構成する音の役割
コードとは濁らない音程で3つ以上の音を重ねたものになります。コードを構成する音にはそれぞれ役割がありますが、例えるなら"自分自身、衣服、靴、アクセサリー"です。一番下の音は"根音"や"ルート音"と呼ばれています。これは自分自身ですから、コードを代表する音でありコードの名前です。"C"コード(ドミソ)の一番下の音は"C"ですから、ドなのだと分かります。ベースにも根音を使います。衣服に相当する真ん中の音は、多くの場合で"第三音"です。これは衣服なのでゆめかわコーデとピープスコーデの違いのように、与える印象を大きく左右する音です。Cの真ん中はドに対して長3度となるミですから、Cは明るい響きのゆめかわコーデです。ここが短3度であるミ♭になるとCm(ドミ♭ソ)となり、途端に暗い響きになります。上の音は"第五音"と呼び、靴のようにコードの安定感に関わる音です。CやCmの上の音はソであり、これはドに対して完全5度となる音です。ここが完全音程であることにより、CやCmをスニーカーのように安定感のある響きにしています。第五音が増5度のソ♯であるCaug(ドミソ♯)、あるいは減5度のソ♭であるCm-5/Cdim(ドミ♭ソ♭)などはハイヒールのように不安定な響きです。コードの基本はこのように1度、3度、5度の音を重ねることであり、3度の長短や5度の増減により長三和音(無印)、短三和音(m)、増三和音(aug)、減三和音(dim)の4種類に分類されるのです。実際の運用では長三和音と短三和音をメインで使用し、減三和音や増三和音はポイント使いです。1度、3度、5度の組み合わせは根音がドならドミソ、レならレファラ、ミならミソシ、ファならファラド、ソならソシレ、ラならラドミ、シならシレファの7種類ですので、これは呪文のように唱えて覚えておきましょう。当然CメジャーとAマイナー以外のキーであれば、必要に応じて♯や♭を付けます。Dであればレファ♯ラ、B♭であればシ♭レファではありますが、根音がレならレファラ、シならシレファの組み合わせ自体は変わりません。
このように自分自身があり、服を着て、靴を履いていればそれで十分外へ出られます。ですから下(根音)、真ん中(第三音)、上(第五音)の3つの音があればコードとしては成立します。ただコードもおしゃれが楽しめますので、アクセサリーとして4つ目の音で着飾る場合も多々あります。ジャズやボサノバなどでは欠かせませんね。基本的には長7度や短7度の音を重ねますが、代わりに長6度や長9度を用いることもあります。ここでは割愛しますが、テンションコードと呼ばれる5つ目の音を重ねたコードまで存在します。その場合には完全11度や長13度まで使われたりします。これらは着こなしが非常に難しいアイテムと言えます。ド派手なアクセサリーで飾るとおしゃれにはなりますが、ファッション同様にやり過ぎは禁物です。
ここからは再びCメジャーで使える7つの音、白鍵のみで考えていきます。多くの場合ではCメジャーの曲であればCだけを使う、というわけにもいきません。前の記事で選んだ7つの音全てに対して第三音(3度)と第五音(5度)を重ね、コードも7つ使用できます。上の表はCメジャーで使える7つの音”ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ”の各音を始点(=完全1度)として縦に並べ、横はそれぞれ13度までの音を表にしています。種類には完全1度から数えた音程の種類を略記しています。ファを1度とすると、例えばシの音はファ(1度)、ソ(2度)、ラ(3度)、シ(4度)で4度となり、種類には+と書かれています。これは鍵盤をファから完全1度〜、短2度〜、長2度〜と1つずつ順番に数えていくと、白鍵のシは増4度の位置にある、ということを示しています。
7つのコードとコード名の読み方
上の表は1度、3度、5度のみを抜き出し、Cメジャーで使える7つのコードとしてまとめたものです。この7つのコードさえあれば、伴奏とベースも入れられます。ところで先程からちょこちょこ出てくるコード名ですが、改めてBm-5って何?となりますね。なのでいっそのこと、頻出パターンを以下に全て書き出してみました。上が音を3つ重ねる基本のコード、下が4つのおしゃれコードです。
赤は一番下の音、すなわち根音が何の音かを表します。Cだとドですね。青は真ん中の音についての情報ですが、明るいコードか暗いコードかを示します。明るいコードは特に何も書きません。Cを構成する"ドミソ"の真ん中は長3度のミで明るい響きなので、ただのCです。暗いコードにはmを付けます。Cの真ん中のミが短3度のミ♭になり"ドミ♭ソ"となると暗く、名前にmが付きCmになります。ここがsus4と書かれていると、真ん中が3度ではなく完全4度の音、Csus4ではファ、すなわち"ドファソ"になります。sus4は明るくも暗くもない響きと言われています。緑で書かれているaugや-5/dimは上の音についての情報で、5度の音が完全5度よりも半音上がったり下がったりしている、ということを示します。CやCmなど、上の音が完全5度である場合は特に書かれません。augは増5度で半音上がっており、Caugだとドミソではなく"ドミソ♯"、ということになります。augの場合、3度の音は必ず長3度の方です。-5、あるいはdimは減5度で半音下がっており、Cm-5(=Cdim)の場合は"ドミ♭ソ♭"となります。dimの場合、3度の音は必ず短3度の方になります。黄色は4つ目の音の情報で、M7は長7度の音が加わっていることを示します。長7度には7の前にMが付いています。CM7は長7度の音がシなので"ドミソ(C)"と"シ(M7)"、CmM7では"ドミ♭ソ(Cm)"と"シ(M7)"となります。7は短7度が加わっていることを示します。短7度の場合は単に7とだけ書かれます。Cm7では短7度であるシ♭を加えて"ドミ♭ソ(Cm)"と"シ♭(7)"、C7では"ドミソ(C)"と"シ♭(7)"、Cm7-5ではさらに上の音が半音下がっているので"ドミ♭ソ♭(Cm-5)"と"シ♭(7)"となります。add9は7度の代わりに長9度が加わっていることを示します。Cadd9ではレを加えて"ドミソ(C)"と"レ(9)"ですね。6は7度の代わりに長6度が加わっていることを示します。C6ではラを加えて"ドミソ(C)"と"ラ(6)"、Cm6では"ドミ♭ソ(Cm)"と"ラ(6)"となります。
コードも7つの音さえあればいい
話は先程の表に戻りますが、2、3、6、7番目のコードにはmが付けられていますね。Cメジャーは明るいキーですが、Cメジャーで使用できる7つのコードのうち1、4、5番目のコードは明るく、2、3、6、7番目のコードは実は暗いのです。Cメジャーに限らず、DメジャーだろうがAメジャーだろうが明るいのは1、4、5番目のコードだけです。明るい曲を書きたいはずなのに、何故全てが明るい響きのコードではないのでしょうか。結論を言うと、全部明るくすると7つの音から外れてしまうのです。2番目のレを根音とするDm(レファラ)の短3度である第三音"ファ"を半音上げると、長3度となってD(レファ♯ラ)になります。ですが、ファ♯はCメジャーで使える7つの音には入っていないですよね。なので"ファ♯"が必要となるDは使えず、白鍵のみで弾けるDmがCメジャーで使えるコードなのです。7番目のコードについても、Bm(シレファ♯)やB(シレ♯ファ♯)にしようと思ってもファ♯やレ♯が入ってしまいます。Cメジャーは白鍵のみのルールですから、白鍵での"シレファ"しか作れません。シに対して完全5度の音はファ♯ですから、白鍵のファは半音下がり減5度となるのでBm"-5"、あるいはBdimと呼ばれるコードがCメジャーで使えるコードなのです。Cメジャーで使える7つの音だけでコードを作ると、必ずそのようになるのです。先程の表の"種類"に書かれた記号を確かめてみて下さいね。これは他のメジャーキーでも同じことです。
4つ目の音を重ねる場合、明るいコードには長7度(M7)が、暗いコードには短7度(7)が付けられますが、5番目のコードは明るくても短7度(7)の方が付きます。Cメジャー・スケールの5番目の音であるソを根音とするG(ソシレ)は、ソに対して長7度の音がファ♯なので、GM7にしてしまうと"ソシレファ♯"でやはりスケール外になってしまいます。ファを白鍵にすると短7度になるので、GM7(ソシレファ♯)ではなくG7(ソシレファ)がCメジャーのコードなのです。これもCメジャーに限らず、5番目のコードには短7度が定石です。キーがGメジャー(♯が1つ付く)だとGは1番目のコードになるので、4つ目の音は長7度のファ♯を重ねてGM7になれますね。そしてGメジャーでも5番目(ソラシドレ、のレですよ)のコードD(レファ♯ラ)にはやはり長7度のド♯ではなく、短7度である白鍵のドが付いてD7(レファ♯ラド)となります。そしてレから始まるDメジャー(#が2つ付く)ではDが1番目になるので、DM7(レファ♯ラド♯)です。明るいコードなんだから長7度で5番目も飾りたいけど、それには♯が足りないから短7度で飾っとくしかないんだな〜、とでも思っておいて下さい。ですがこのGやG7、CメジャーではCやCM7の次に重要なコードなのですが、コードの機能を説明する時にお話ししますね。
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