【北杜市考古資料館】3館企画展示「縄文いきものがたり」を見に行く
はじめに
北杜市考古資料館は、北杜市大泉町(旧大泉村)に所在する谷戸城(中世の山城)のふもとにあります。
もとは「谷戸城ふるさと歴史館」として2007年(平成19年)に開館したもので、その後、北杜市内の考古資料館を統合する形で「北杜市考古資料館」となっています。北杜市は2004年(平成16年)7町村が合併して誕生し、2年後に小淵沢町を編入し現在の形になりました。
金生遺跡
考古資料館を見学する前に近くの金生遺跡(国指定史跡)に立ち寄りました。
金生遺跡は、縄文時代後期の集落跡、祭祀跡と言われています。金生遺跡公園として整備され、住居や配石遺構が復元されています。ここから出土した中空土偶(ちゅーた)は考古資料館に展示されています。
また、冬至の日の入りは西にそびえる甲斐駒ヶ岳の頂上に太陽がかかることが知られています。
北杜市考古資料館
北杜市内には国指定の史跡が3か所あります。金生遺跡、谷戸城、梅ノ木遺跡です。この考古資料館は北杜市の中でも北寄りの位置にあり、決して交通の便はよくありませんが、金生遺跡、谷戸城というふたつの史跡の見学施設ということでこの場所にあります。
建物はたいへんきれいで清潔感のある現代的な建物です。受付はエントランスを進んで左側です。この施設に常駐する学芸員はいません。学芸員は北杜市郷土資料館に学芸課があり、そちらからやって来るとのこと。
常設展示
常設展示は吹き抜けの階段から2階へ進みます。ちなみに、展示はすべて撮影可能とのこと。こちらの施設がSNS発信を積極的にやっていたるため、SNS利用に対しても好意的です。
常設展示は「石器・縄文」「弥生~平安」時代でフロアで分けられいます。さらに上ってきた階段とは別の階段で階下で進むと「中世」となり、エントランスへ戻ってくる流れです。
縄文については金生遺跡に関する内容が大きいです。有名な「中空土偶」があります。また、北杜市の資料として旧津金学校で展示されていた津金御所前遺跡の「出産文土器」などもこちらへ移動しています。
中世は谷戸城を治めていた逸見氏を祖とする甲斐源氏に関する展示内容が大部分です。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に甲斐源氏の武田信義(八嶋智人さん)が登場したこともあり、甲斐の源氏の系譜についてはじっくり確認したいところです。
縄文いきものがたり
毎年恒例となっている3館共同企画の企画展示です。井戸尻考古館に続いて、2館目として訪問しました。
3館とは
・長野県原村・八ヶ岳美術館
・長野県富士見町・井戸尻考古館
・山梨県北杜市・北杜市考古資料館
今年のテーマは「縄文いきものがたり」(2022.7.7~11.23)として土器などに描かれた、いきものたちにスポットライトをあてます。
北杜市の展示は「抽象文土器に潜むもの」として抽象文土器の成立と変化の過程を追います。
土器に描かれている「抽象文」ですが、井戸尻考古館では「みづち」(想像上の水棲動物)と呼んでいるように何者であるのか分かっていません。「何者か」を抽象化したと考えられるため「抽象文」というのが一般的な呼び名です。その「何者か」についてはサンショウウオあるいはヘビ、はたまたイルカなど諸説あるといいます。
展示の土器ですが、初期の抽象文に驚きました。立体的であるとともにリアルにうろこが施されています。うろこといって、これは水の生物よりも蛇のような印象です。
抽象文はやがて時代を経るとももに変化して衰退していくのですが、およぞ30点の土器と解説パネルで「抽象文土器」の変化の過程を追っています。
現在北杜市となっているこの地域は出土量から「抽象文土器」の中心地と考えられるといいます。
関連イベントとして八王子出発のバスツアー(2022.8.27~28)が予定されています。3館を2日間で巡って、1泊目はなんと井戸尻史跡公園でテント泊だとか。
21世紀の縄文人20222
もうひとつ企画展示をやっておりました。
「21世紀の縄文人展2022」(2022.7.16~8.21)です。こちらも、毎年夏に恒例の企画です。山梨、長野など八ヶ岳周辺で活動する画家、造形作家たちが、縄文人の造形からインスピレーションを受けて制作した作品を展示しています。
エントランスロビー横の展示スペースとその奥の企画展示室に作品が並べられています。
参加アーティストは12人。経歴や本職もさまざまな作家さんたちが、思い思いに自身の「縄文」を表現しています。
おわりに
以上、北杜市の考古資料館と企画展示の紹介でした。
こちらの休館日は火曜と水曜の週2日あるので、平日は注意が必要です。とくに「縄文いきものがたり」3館のスタンプラリーを一日で制覇しようとする場合は、それぞれの館で休館日が異なりますので事前確認が必要です。