中之島文楽(2018.10.5)
10/5 (金)の観劇日記。大阪市中央公会堂の大集会室(一階入ってすぐの一番大きなホール)にて、壺坂観音霊験記、沢市内より山の段。
文楽の裾野を広げるための催しで、第一部は入門編のトーク、第二部が公演。第一部は司会の落語家桂吉坊さん、文楽ビギナーの純名里沙さんに加えて、ゲスト技芸員は今年のはじめに六世織太夫を襲名した竹本織太夫さん。太夫としての力量は言わずもがなだが、太夫不足の現状を打破し文楽を盛り上げるべくさまざまな試みを続ける、またテレビなどの露出も多いいわゆるスター技芸員。第二部でも太夫を務める。第一部はそれなりに楽しめました。ここのところかなりマメに文楽に通っている私としてはまあ枕の枕。
壺坂は文楽の中では珍しくハッピーエンド、ストーリーも登場人物もシンプルでわかりやすく、入門のための観劇には適した演目と言える。三味線は竹澤宗助さん(とても好きな三味線弾きさんのひとり!)、ツレ弾きに鶴澤燕二郎さん(若手、伸び盛り!頑張ってた!)。人形は私の好きな吉田玉男さんが沢市を遣い、お里は吉田一輔さんでした。
国立劇場および国立文楽劇場以外の場所での文楽観劇は初めてでしたが、ホールの音環境はかなり残念。真ん中あたりに座っていたのだけれど、三味線の音が遠い遠い。かと思えば御簾内(ホールなので御簾ではないが)の囃子の音がとにかくでかい。応援団か!みたいな太鼓の音だった(笑)舞台転換もドタバタと音が響いていてなかなかすごかった。しかも、お里の左遣いの人が途中で岩の上を表している高い台から派手に落下されていた。お怪我がなかったのかすぐに人形は動き始めたが、なかなかのアクシデントでした…。他にも、字幕がけっこう長い間映らなくなるというトラブルも。幸いあらすじが非常にシンプルなので、多少見失ってもついていけるとはいえ、これが初めての文楽という人にはかなり厳しかったかもですね。
とはいえ、太夫も三味線も冴えていた。特に山に場面転換するあたりからはキレキレで、いわゆるクドキどころとされている「三つ違いの兄さんと…」よりも、お里を家に返した沢市がひとりで自殺の決意を固めるあたりの語りがぐっと盛り上がった。その後のお里の狂ったような「沢市様いなう」でクライマックス。投身自殺は人形遣いが息を合わせて人形を下に放り投げるんですね。人形遣いは、お里の大ぶりな遣い方が目立った。わかりやすく表現しようとしているのかもしれないが、大げさな動きはかえって人形が人形であることを強調する結果となり、悲しい場面もコミカルに見えて冷めてしまう。盲目の沢市はそれと対照的に抑えた表現で、静かな悲しみをうまくにじませていた。と共に、観音様の霊験があらたかになった後の喜びの舞(最後急に舞が始まってわりとびっくりした)とのコントラストが出て良い。玉男さんの沢市、今年の冬にみた平家女護島での俊寛を思い出しましたね。あれは素晴らしかったなあ。
全体としては楽しめましたが、音環境が難しかったので、早く劇場での本公演が観たい。11月の公演が楽しみ。なんとか楽日までに日本に帰ってこれる感じで長期出張することになったので、時差ボケ必至だけどとにかくチケットを押さえてある!