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遺言書で定められること

ご自身が亡くなった後に、自身の意思通りに財産を相続させることが出来るよう、また、残されたご家族が円満に過ごせるよう、遺言書をのこしておくとは大事なことです。

でも、遺言書には、どんなことを書いてもそれが法的に有効になる訳ではありません。

遺言書で定めることができることは、法律で定められています。

本日は、遺言書ではどんなことを定めることが出来るのか、解説したいと思います。

相続に関すること

遺言書で定めることができることには、大きく分けて相続に関すること、と身分関係に関すること、の二つがあります。

相続に関することの中では、以下のことについて、遺言書で定めることができる、とされています。

・相続人が相続する持分の指定(民法902条)

相続人の中で、誰がどれだけの財産を相続するのか、は法律で定められていますが(民法900条、901条)、遺言でこれと異なる定めをすることが出来ます。

・具体的な遺産の分割方法の指定、及び分割の禁止(民法908条)

具体的に誰がどの財産を相続するか、遺産分割の方法を遺言で定め、若しくはこれを定めることを他の人に委託し、又は5年を超えない期間を定めて、遺産を分割することを禁止することが出来ます。

・遺贈(民法964条)

遺言で、法定相続人(詳しくは誰が相続人になるの?の記事をご覧ください)以外の人に包括的に又は、特定の名義で、財産を引き継がせることが出来ます。

・遺言執行者の指定(民法1006条)

遺言書の内容を実現する人(遺言執行者)を、遺言で指定し、又はその指定を他の人に委託することが出来ます。

・特定の人を相続人から廃除することと、その取消し(民法893条、民法894条2項)

自身が亡くなった場合に、相続人となる者で、遺留分を有する者が、自身に対して虐待などをした場合には、その者が相続人とならないよう、事前に家庭裁判所に請求することができます。これを推定相続人の廃除といいます(民法892条)。

遺言者は、遺言で、推定相続人を廃除することや、廃除を取り消すことの意思表示をすることが出来ます。

・祖先の祭祀を主宰する者の指定(民法897条1項)

系譜(家系図)・祭具(位牌や仏壇)・墳墓のような先祖を祭り、供養するための財産は、法律上、他の財産とは区別して取り扱われています。

こういった財産は、被相続人が祖先の祭祀を主宰すべき者(祭祀主宰者)を指定した場合には、その者が引き継ぐとされています。

遺言者は、遺言で、こういった祭祀財産を管理する、祭祀主宰者を指定することが出来ます。

・相続財産に欠陥があった場合の取り扱いの定め(民法914条)

相続財産に欠陥があった場合、相続分に応じて、相続人間で価値の減額分を補い合うこと、とされていますが(民法911条~913条)、遺言者は、遺言でこれと異なる定めをすることが出来ます。

・特別受益者の持戻しの免除(民法903条3項)

被相続人から、遺贈や生前贈与を受けた者(特別受益者)がいた場合は、その分の価額を相続財産に加えた上で各人の相続分を算定します。

そして、上記に従って算定された相続分から、遺贈や生前贈与の価額を控除した残額が、特別受益者の相続分とされています。

つまり、被相続人から遺贈や生前贈与を受けた者は、その分だけ相続分の価額が減額されることとなるのですが、遺言者は、遺言でこれと異なる定めをすることが出来ます。

・遺贈の減殺方法の指定(民法1047条1項2号)

兄弟姉妹以外の相続人は、一定の相続分(遺留分)を相続することが保障されており、これが侵害された場合は、受遺者(遺言によって財産を受けた人)または受贈者(被相続人から贈与を受けた人)に対して、侵害された価額に相当する金銭の支払を請求することができる、とされています(民法1042条、1046条)。

受遺者又は受贈者は、遺留分を有する相続人から、これを請求された場合は、その分を負担しなければなりませんが、受遺者や受贈者が複数いた場合に、誰が優先してこれを負担すべきか、は法律で定められています(民法1047条1項)。

基本的には受遺者と受贈者とがいる場合は、受遺者が先に負担し、受贈者が複数あるときは後に贈与を受けた者から順に負担します(民法1047条1項1号、3号)。

受遺者が複数いるときや、同時に贈与を受けた受贈者が複数いる場合には、その目的物の価額に応じて負担すること、とされていますが、遺言者は、この場合に、遺言で、これと異なる定めをすることが出来ます。

身分関係に関すること

・認知(民法781条2項)

遺言で、嫡出でない子(法律上の婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子供のこと)を認知し、法律上の父子関係を生じさせることが出来ます。

・未成年後見人及び未成年後見監督人の指定(民法839条、848条)

未成年に対して最後に親権を行う場合は、遺言で、自身が亡くなった後に、未成年者の監護養育や財産管理、法律行為の代理などを行う者(未成年後見人)と、その者が正しく職務を行っているかを監督する者(未成年後見監督人)を指定することが出来ます。

その他

相続に関することと、身分行為に関することの他に、以下のことについても遺言で定めることが出来ます。

・一般財団法人の設立(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)

遺言者は、遺言で、一般財団法人を設立することが出来ます。

・保険金受取人の変更(保険法44条)

遺言者は、遺言で、保険金の受取人を変更することが出来ます。

・信託の設定(信託法3条2号)

遺言者は、遺言で、信託を設定することが出来ます。

まとめ

上で述べた、法律で定められていること以外のことを遺言書に記載したとしても、法律上の効力は有しません。

ですが、これ以外のことを遺言書に書いてはいけないわけではありません。

ご自身が亡くなった後、大切な方に残したいメッセージもあると思います。

家族に対する感謝の気持ちや、葬儀に関する希望なども、法的拘束力は有しないものの、ご自身の想いを伝えるものとして、遺言書に残しておくことが出来ます。

遺言書で定めることができることを理解したうえで、大切なご家族のために遺言書をのこしておけると良いですね。



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