[感想]【海が走るエンドロール】
今年に入って、読んだ漫画で特に面白く、興味深い漫画作品と出会いました。
2022年度、「このマンガがすごい!2022」オンナ編部門にて、1位にランクインしました、たらちねジョン先生が描いた『海が走るエンドロール』という作品であります。↓
現在、本作品は単行本で2巻まで発売されており、思わず作品世界に没頭してしまうほどの魅力が溢れた素晴らしい作品でありました。
それぞれ、読み終えた本作の感想を簡潔にまとめたいと思います。↓
【感想】『海が走るエンドロール』1巻
夫と死別した茅野うみ子さんというお婆さんは数十年ぶりに映画館を訪れると、海という映像専攻の美大生に出会う。彼との出会いで、うみ子さんは映画を撮る側になると決断する。映画の世界へと足を踏み込み、彼女の人生はここから、新たに始まる。
物語の後半で、うみ子さんが海くんに「‘‘作る人と作らない人の境界線てなんだろう’’」と問うシーンがあります。海くんは、それに対して興味、環境、色んなものがあると思うと返答する。その言葉を受けたうみ子さんは、「‘‘船を出すか’’」という答えを出したシーンは本当に感慨深いものがありました。
環境や年齢にとらわれず、誰しも‘‘船を出す’’為の海というものは存在するという表現は心の底から感動させられました。映画のみならず、これは創作する場合においても当てはまるだろうと感じました。うみ子さんのイニシアティブな考え方を通して、本作品は私自身の創作への原動力にもなりました。
【感想】 『海が走るエンドロール』2巻
自主映画製作の中で、うみ子さんは経験値と客観性において経験不足であることを指摘される。
うみ子さんは海くんとの映画製作についての話、友人たちとのやり取りで海くんの存在、彼の人間性を初めて理解することとなる。
物語世界と現実世界を巡り、映画における物語の中での出来事と現実での私たちが経験する出来事には理解するまでには視野の狭さというものが壁になることがある。
うみ子さんが海くんを思うシーンが特に印象的でした。
1巻での内容を踏まえて、環境や年齢にとらわれず、誰しも‘‘船を出す’’為の海というものの存在、映画製作やそれ以外での‘‘創作する’’うみ子さんのイニシアティブな考え方は2巻では更なる飛躍的な自己成長へと繋がる展開になり、とても素晴らしいものでした。
【本作の全体を通した感想】
本作品の1~2巻までのストーリーを通して、うみ子さんや海くんの内省が色濃く描かれており、読者である私たちを作品世界に引き込ませる、強い力がある作品であると実感させられました。
漫画による、芸術表現の特性を活かして、私たちはこの作品から様々な価値を学び得るものがあると考えさせられました。
文学、映画、絵画、音楽などにはない、漫画でしか描くことが出来ない芸術表現を巧みに描いた作品であると痛感させられました。
ぜひとも、続刊が楽しみであり、この作品に出会えたことは、私自身にとっては、とても幸せなことだと感じました。