月明かりの下で ベスは子犬のように
第一話
<母さん大変だあ!>
今日、安曇野の親せきから子犬が来る。春休みが終わって学校が始まれば、僕は小学三年生になる。「犬を飼ってもいいよ」といわれてから、ずっと待ち焦がれていた子犬だ。朝早くから目が覚め、そわそわうろうろ、落ち着かない。
ビー、ビー、玄関のほうで警笛が鳴ったのは、もう夕方だった。下駄をつっかけて飛び出すと、車から出てきたおじさんが笑いながら、あごをしゃくって、車の荷台にあるダンボール箱を指した。荷台に手をかけ背伸びして中をのぞくと、二匹の子犬が顔を出して