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カレーと恋に落ちたとき
私の初めてのカレー体験は、まだ地元札幌にいるころである。夏は涼しいはずの北海道だが、数年に一度、クソ暑い夏が来る。
その年もそんな夏休みだった。
友人に誘われて行き着いた場所は、円山という場所にある、狭いカウンターだけの半地下の店。昼に客が行列をなしているそこは、まるで穴蔵。巣に戻る蟻のようだった。
先ほど述べたようにクソ暑い夏である。待ち人たちは、ハンカチで汗を拭きながら眉間にしわを寄せている。しかも、アンダーグラウンドな雰囲気漂う人々が多かったように記憶している。知る人ぞ知る腹を満たしてくれる地下帝国。レアな音と酒を求め集うクラブ如く、鼻が効く者だけが集まるカレー屋。
ガキだった私はドキドキした。汗をかきながら黒い壁の暗いカウンターに座った。出てきたカレーは今まで見たこともないルックス。サラサラしていて水っぽい。鶏肉以外に具がない。戸惑いが隠せないまま、一口食べてみた。玉ねぎの甘みと本格的なスパイスの香り。最初は美味しいかどうかわからないまま食べたように思う。しかし、気がついたら完食。一日中、強烈にスパイスが鼻孔をくすぐり、中毒性のある旨味に心全部持っていかれた。
「また会いたい!」(また食べたい)
恋に落ちた。
そして毎日のように通い始めた。
札幌円山『ミルチ』
ここから私のカレー人生が始まった。
今は北海道らしいウッド調の綺麗な一戸建てとなった店舗。
あの不思議な空間にまた会いたい。
写真は、東京でミルチを感じたい時に行く
新宿『curry 草枕』