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コロナ禍で感じた、サービスを形作る「関係性」の変化〜妊婦になったデザインリサーチャーの目線から〜

立場が変わると、見えるものも変わる。
よく会社での立場や役職を語るときに、そう語られることが多いのですが、「妊婦」という立場になって、家庭でも同じだなあと感じています。
現在、妊娠六か月。
順調にいけば10月半ばにお子が生まれます。

約半年の妊娠生活の中で、デザインリサーチャーとしても、サービスを見る目線が大きく変わりました。この記事では、その目線の変化を書いていきたいと思います。

「移動の障壁が高い」コンテクストを身をもって実感

まず第一に感じたのが、「移動の障壁が高い」コンテクストの大変さ。

私は旅行が大好き。電車も飛行機も高速バスも大好きです。
好きすぎて旅行会社に8年半勤務したくらいです。めっちゃ乗り物酔いするけど愛してる。

しかし、妊娠初期はつわりがひどく、乗り物に一切乗ることができなくなりました。徒歩5分のスーパーに歩いていくだけで帰宅後2時間寝込むのに、毎日通勤なんて無理ゲー。

しかし、そんな移動に大きな障壁ある状態でも、孤立せず社会とつながれる実感があったのがとてもありがたいなと感じました。

・会社の手厚い助けもあり、仕事の負荷を減らしリモートでの勤務ができた
・コロナの影響もあり、世間的にもオンラインでのウェビナーやイベントが開催されて参加できた(東海大の富田研への参加や、共著者として2020年度春季HCD研究発表会にも参加したりしてました!)
・友人との毎朝のオンラインラジオ体操

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↑「コロナの問題に立ち向かう人々を招いてオンライン対話する遠隔富研」での様子

また、マタニティ系の運動クラスはコロナの影響で軒並み中止になったり、移動に不安も継続してあることから、妊婦としての体験もオンラインが多くなりました。
戌の日の安産祈願とか、産前のストレッチクラスも、オンラインで参加しました。

また、近い週数の妊婦さんとの出会いも、オンラインで。
俗にいう、Twitterでのマタ垢というやつです。つわりがひどくて嘆いてた時期に、リアルの友人に作成を勧められました。

好きなタイミングで情報交換するよさと共に、その中の数人とはZoomでおしゃべりしたりして、楽しみなことや不安のシェア、近況報告をしあってます。
これが、とても気分転換にいいし、楽しい!37歳にして、また新たな切り口で日本の色々なところに話せる友達が増えた気持ちになって嬉しいなーと思うのです。

匿名でもない、完全バーチャルでもない、「本質を共有するリモート」の関係性

継続して移動に障壁がある中で、ふと気づいたのは。
「あれ、顔の見えるリモートだからこそ、心地よく本質を共有できているな」ということ。

体は何かの事情があって移動できなくても。
同じ切実な、本質的なテーマを囲んで、匿名ではないリアルな人の存在を視覚・聴覚で感じる。
そして密接につながりつながりすぎず、ゆるやかに交流できる。


「移動の障壁が高い」というコンテクストは、決して妊婦だけではありません。産後の方、子育て中の方、介護中の方、介護をうけている方、障害を持っている方など、様々な方に共通するコンテクストです。

そういう人でも、身体に引け目を感じず、心地よく社会とつながっていける新たな文化が生まれたのが2020年の今のタイミングなんじゃないかな、と思うのです。

「本質を共有するリモート」の関係性のサービスは、まだまだ発展途上!

もちろん、その「本質を共有するリモート」の文化は発展途上です。
今は生まれた取り組みを、実践して、改善していくタイミングだと捉えています。リアルな場と比較して同等の完璧さを求めても仕方ないっ。

いちリサーチャーとしては、参加したサービスについては、新たな挑戦をしてくださったサービス提供者の方へ感謝の意を伝えるとともに、ユーザーとしての率直な評価に協力をしています。

いちユーザーとしても、サービスをデザインする人間としても、より素敵な関係性を育むサービスが生まれて続いていってほしいなと思います。

また、こうした関係性の誕生に、まだまだ制度面やハード面は追随できてないなと感じる部分も多いです。

例えば、育児休業給付金の給付金額が、時短勤務をすると減額される問題。
「体調にあわせ、毎日時短勤務」のような柔軟な働き方を会社と個人が行ってしまうと、育児休業給付金が減ってしまうのです…
(詳しくは以下、ご覧ください)

また、感染面の心配から、診察の同席、立ち合い出産や面会、産後のお見舞いも2020年6月現在は本当に限られています。
私の出産予定の病院は、診察の同席はNG、出産当日のみ夫が面会可能、他の親族は面会NG…ぐぬぬぬ。

孫の顔を両親、義両親にすぐみせたいんだけどなあ。オンライン面会の方法を検討せねばなりません。親世代はZoom使わないし、LINEで中継かなあ、でもスマホでやるとめっちゃ疲れそう…と、悩みは絶えません。

家庭の関係性も変わり、家庭の意味も変わる

我が家はコロナの影響と、私の妊娠という影響を同じタイミングでうけたたため、家庭環境が一変しました。
ほぼ毎日夫は自宅でリモート勤務し、私はのんびりマタニティライフしつつ時々仕事関係のプロジェクトを進めています。

見えてなかった夫の働き方が見え、接する情報量が増えたことで、近所のランチ場所について話したり、マネジメント層どうし会社の組織づくりについて議論をしたりと、会話も増えました。

「仕事後にのんびりする場所、生活を営む場所」だった家庭が、「仕事と生活という、異質なプロジェクトが同時に進行する異文化拠点」に変化してきたのです。
そのシームレスさは、時に安心感もあれば、煩雑さや窮屈さも感じます。

体調がいつ変わるかわからない妊婦にとっては、夫が家にいてくれるというのは何にも代えがたい安心感でもあります。
反面、「仕事後にのんびりする場所、生活を営む場所」前提で住んでいる自宅は、「異質なプロジェクトが同時に進行する異文化拠点」に最適化されていません。
書斎はありますが、異なる会社で働く2人が同時に動くのには限界があります。

私は「場」の力でモードを大きく切り替えて集中力をあげる性質なので、こうした「場の力をかりる」をどう代替するか、働くうえで鍵となりそうです。

サービス利用者の関係性が変われば、サービス運営者の関係性も変わる

「本質を共有するリモート」の関係性は、仕事にもあてはまってきます。
サービス利用者の関係性が変われば、サービス運営のかたちもかわる。
そのかたちとは、サービスを運営する側の組織、チームの在り方
でもあると思うのです。

個人については、リアルの場や会社に紐付いたラベリングから、仕事も家庭も複数タグをつけて動く関係へ。
新入社員の教育は、密接OJTから、複数メンターがついてのゆるやかな関係構築や技術支援の関係へ。

人と文化、情報の国際移動が発展した20世紀、そして加速した21世紀初頭。
今度は、文化と情報の移動がより加速していって、よりその個人にあった、新たなつながり方の選択肢がふえていくといいな、と願っています。

そしてまた、自分も、サービスのデザインに携わる人間として、そうした新たなつながり方をつくり、支えていきたいと思うのです。

サポートでいただいた費用は、私と我が家の猫さまのfika代(おやつ代)にあてさせていただきます! /ᐠ。ꞈ。ᐟ✿\ < ニャー ちゅーるが好きだニャー