見出し画像

【旅エッセイ29】城山公園の蝶々

 歴史をさかのぼると、日本にはお城が25,000もあった。

 その名残が地名の「城山」で、日本中いたるところに「城山」という山や「城山公園」がある。かつては日本中にあったのに、一国一城令や城主のお家取り潰しで廃城にされ現存するお城は12しかない。

 千葉県館山城にある館山城も、現存しない側。館山市の城山公園にある天守は、かつて城があった場所に再建されたレプリカ。

 とはいえ、城山公園が良い場所であることには変わりない。千葉県館山市は江戸時代に刊行された大長編小説「南総里見八犬伝」のゆかりの地で、館山城は資料館になっている。里見八犬伝のファンが日本中から訪れる、ひとつの聖地。

 あいにく私は里見八犬伝は読んだことがなかったので聖地巡礼とは別の目的で訪れた。

 目当てはもちろん、自然の景色。

 お城は高い場所に建てられる。建物自体を高くする場合もあるけれど、標高が高くないと戦争になった時に周辺を一望できなくて戦えない。なのでお城のあった場所を訪れると、けっこうな確率で街を見下ろすようなきれいな景色が見られる。

 館山市の城山公園も、予想通り。頂上から房総半島と東京湾が一望できた。高いところは素晴らしい。タダで絶景が観られるのだから。

 城山公園の見所は里見八犬伝の資料館と景色だけでなく、登る途中にクジャクのいる小屋もある。公園の管理をしているおじさんから「クジャクは朝と夕方の涼しい時間に羽を広げるよ」と教えてもらった。
 
 しばらくクジャクを眺めていると、日陰に逃げてから羽根を伸ばしてくつろいでいた。クジャクも暑いのは苦手らしい。

 そんな城山公園で撮った、お気に入りの一枚。クジャクでも景色でもレプリカの天守でもなく、花の蜜を吸うアゲハ蝶。

 黄色い羽、紫の花、茂る緑と青い空。

 高いところだけが絶景じゃないな、と城山を舞うアゲハ蝶を眺めて思う。

 



いいなと思ったら応援しよう!

東武@ペンシルビバップ
また新しい山に登ります。