目を上げて天を仰げ
とにかく、人は何か希望を持っておらねばならぬ。その希望に向かって突進してさえおれば、少々の心身の苦悩はなんともなくなる。
ところが、世には、真に自分が熱望していることに全力をそそぐことができずに、心にもないことに心身を労せしめられている人々が随分多い。気の毒なことだ。
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強いてはならぬ。強いられてはならぬ。十人十居ろの心のままに思う存分すすましめよ。
人を批判するのは自己を基としてだ。弱くおろかなる自己を基として他をさばくことがどうしてできよう。
あるままにあらしめよ!なるままにならしめよ!そして、めいめいをして考えしめよ!悟らしめよ!
ひからびた道徳のきずなに、なお黙々としてつながれている人々よ!
目をあげて天を仰げ!地を見よ!そしえ、なんのこだわりなく、スラスラと進展してやまぬ大自然の自由さを味わえ!
吾とわが手に綱をない、われとわが身をしばっている愚かなる人ちょうものの衆団よ!
神を呼び、人を呪うことをしばし止めて、われとわが手に、わが綱を切らずや。
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ああ、世の終わりの世の始めの苦悩とはなんぞ?
アダム、エバの食いし知恵の味の嘔吐なり
いまぞ神は曲人より正宗をうばわん
そしえ、持つべき者に持つべき物を持たしめん
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間断なく望み
間断なく為し
間断なく省み
間断なく悟れ!
そしてまた新しく望み、為し、省み、悟れ!
かくえ極まりなからんとき
われらは向上して極まりなし
出口日出麿著 『信仰覚書』 第五巻 「目を上げて天を仰げ」