『カルトブランディング』書籍まとめ
1.カルトブランディングとは
カルトブランドの見分け方については以下の2点がある。
イデオロギーが革新的であること
※普遍的だったり既視感があったりする場合、カルトブランドには該当しない。明確なコミュニティーを持っていること
※外に開かれていない、アンダーグラウンドすぎるコミュニティーはカルトブランドとして認められない。
また、車に貼られているステッカーはカルトブランドであることが多い。
敢えてコストと労力をかけて貼っているということは「信者」になっている可能性が高い。
2.カルトブランディングが必要な理由
カルトブランドは、孤独を癒やしてくれる存在である。
生きる意味を提示し、信者は「自分らしくあれる」と感じることができる。主体的に生きることができ、自分の人生を歩むことができる。
疎外感や妬みは生まれず、幸福感が孤独を打ち消してくれる。
カルトブランドの信者は、プロダクトではなく体験を買っているのだ。
さらには「仲間」を買っているともいえる。
コミュニティに入ることで、人との交流機会を得ることができるからである。
3.カルトブランドのキーワード
革新的なイデオロギーを持っていること
尖ったイメージを消費者が抱くのも革新的なイデオロギーによるものであり、これが弱ければカルトブランドとは呼べない。
例)環境保護を謳うパタゴニア異端児であること
2番煎じではいけない。新たに独自のポジションを確立させる必要がある。
例)「本格的な軽四輪駆動車」であるジムニー外に開かれたコミュニティが存在していること
そのブランドを愛する人間たちのコミュニティの存在も、カルトブランドの必須要件となる。
例)スズキのジムニー「JCJ」(ジムニークラブオブジャパン)強力なリーダーシップがあること
強力なリーダーシップは、カルトブランドに必要な要素である。
創業者や経営者が強力なリーダーシップを発揮するケースもあれば、ブランドが業界のリーダーとして走り続けるというケースもある。敵の存在があること
世の中をよくするための「共通の敵」を見つけ、「問題・原理・原因」を明らかにすることで、戦いに勝利しよう、とのメッセージを届ける。
この一連の流れをストーリーテリングコンテンツとしてまとめることで、オーディエンスの統一が可能となる。象徴が存在すること
カルトブランディングにおいても、象徴は不可欠な存在だ。
「○○の象徴」のように、何かのシンボルとしてのポジションを獲得することが重要となる。共感を生むストーリーがあること
人類はストーリーとともに生きてきた。それは数千年前に描かれた洞窟壁画からも見て取れる。
ストーリーで伝えることで、物事が記憶に残りやすくなる。ライフスタイルが提示されていること
ほとんどすべてのカルトブランドは、ライフスタイルを売っている。
例)デス・ウィッシュ・コーヒー。プロダクトの売りの一つが「カフェイン200%」「世界一強いコーヒー」を標榜している。聖地があること
宗教には聖地が存在する。
同様に、カルトブランドにも聖地が存在することが多い。
例)創業の地や創業のきっかけとなった場所。不変であること
カルトブランドは「変えてはいけないもの」をいくつも抱えている。
ポイントは、信者に「それはやってほしくなかった」と思わせないことである。
顧客がなぜ信者になってくれたのか、その理由をよく考えてから行動を起こす必要がある。
不変であることを信者は求めている。
4.カルトブランドを作るためのプロセス
ブランディングにおいては、ターゲット層を定めることが基本である。
架空のターゲットの人物像のことを、ブランディングやマーケティングの世界では「ペルソナ」と言う。
ペルソナは、3つのステップで設定していく。
すなわち「属性」「ライフスタイル」「悩み・思考」である。
属性
名前、年齢、性別、職業、居住地、家族構成、年収、趣味ライフスタイル
どういった生活を送っているのか。
平日と休日それぞれ、朝起きてから寝るまでを描写していく。
どのタイミングで、どのようにしてブランドの情報に触れるのかをイメージしていく。悩み・思考
ペルソナがどういった悩みを抱えているのか、どういった思考なのかを、吹き出しに入れるイメージで列挙していく。
補足であるが、以前まとめた『アイデアのちから』の中に似たような手法が出てきた。
サドルバック教会は、教会に来てほしい人物像を何年もかけて詳細に描きだし、信徒数を5万人に増やすという大成功をおさめた。
宗教にマーケティングを用いたのである。
5.カルトブランドの事例紹介
1.スズキ ジムニー
この本の中で度々紹介されるカルトブランディングの代表例。
3層のペルソナを狙う戦略が見事にヒットしている。
2.デス・ウィッシュ・コーヒー
強烈なイデオロギーが顧客を魅了するコーヒーブランド。
メインとなるプロダクトは、カフェインの含有量が通常のコーヒーの2倍。
一般的なコーヒーは100ミリリットルあたり 60 ミリグラム含むとされ
るので、100ミリリットルあたりの含有量は120ミリグラムと推定さ
れる。
話題になったCMを貼っておく。
商品の魅力がシンプルに伝わってくる。
3.グレイトフル・デッド
グレイトフル・デッドは、何度も業界の常識を壊してきた。
その最たるものが「テーピング」、つまりライブ中の録音の許可である。
※当初、テーピングは許可されていなかったが、黙認されていた。
しかし、テーピングを行なうファンの数が増えるにつれて、問題視されるようになっていった。
バンドメンバーは許可するか禁止するかで議論し、最終的には特別チケットを販売し、チケットを所持している者だけ録音を許可することとした。
録音専用のスペースを設け、トラブルが発生しないようにしたのである。
録音テープの取り扱いについては、商用利用を禁じる一方で、ファン同士で交換することは認めた。
テープ交換という文化がコミュニティを強固にしたのである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?