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【振り返り】2024年9月

こんにちは。東です。

さて、2024年9月を振り返っていきます!




【臨床】 今月の臨床

テーマ|右手首の腱鞘炎

今月は腱鞘炎です。


今回の患者さんは、整形外科疾患ではよく診られる腱鞘炎でご来院されました。

原因はなんと強いストレス。

それをどのように治療するのか、一例としてみてみましょう。


1.現病歴

40代男性で、実家に帰省後、急に左手首が痛くなった。

平素から肉体労働をしているが、今まで手首が痛くなるようなこともなかったので、ご本人も困惑している様子。

昨今の行動を思い返してみても、転んで手をついたり、重いものを無理に持ち上げて、手首に強い負荷をかけた記憶がない。

さてなぜ私の手首は痛んでいるのでしょうか、と疑問が湧いています。

この患者さんの症状は、脈診所見とツボの現れ方、会話の内容を判断材料として、実はご本人にも無自覚の精神的なストレスによる、手厥陰心包経における強烈な気血の停滞を主とした証と診定めました。


2.精神的なストレスは、「心」に入る

東洋医学では、「憂愁思慮すれば心を病む」という言葉があり、要は心配したり思い悩んだりすると心臓に負担がかかると考えられています。

心臓は君主すなわち王様の臓です。

そのため、家臣が王様を守るために代わりに負担を被ります。

東洋医学ではその働きに「心臓を包む」と書いて「心包(しんぽう)」と名付けました。

今回のような強い精神的なストレスは、この心包が負担を受け、関連する手厥陰心包経に波及した気血の停滞によって、手首を痛めることとなりました。


3.五行の火と心

心包は、木火土金水という五行の内、に分類されています。

火は熱であり、炎症です。

心包が負担を受けて波及した手厥陰心包経の気血の停滞は、火(熱)の性質を持って身体に影響していきます。

心包経以外にも、火(熱)の影響を受けやすい経絡があり、その代表に手陽明大腸経があります。

細かい説明は省略しますが、熱の影響を受けた手陽明大腸経の、さらに火と関わるツボである「経火穴である陽谿穴」に強く炎症を起こしていきました。


4.強い痛みは、遠いツボ

完全な経験則ですが、激烈な症状がある場合には、症状のある部位から関係性の一番遠いツボを選ぶことにしています。

激烈な症状はリアクションが大きく、直接患部に接触していくような治療を行うと、反って痛みが増悪したり、動かなくなってしまう事があります。

(経験の浅い時には良くやりました。とても焦ります。)

激烈な症状は生体反応が過敏です。熱した油に水滴が一滴でも落ちると激しく反応することに似ているかもしれません。

逆に言うと、生体反応が過敏なので、関係性の一番遠いツボに鍼をすることでも十分に影響を与える事ができます。

また東洋医学的な表現をするならば、激烈な症状があるということは、大きく気のバランスが傾いていると考えることができます。

イメージでいうと、シーソーの末端に重りが乗っていて、テコの原理でギッコンバッタンが激しい印象です。

ギッコンバッタンを落ち着かせるためには、反対側のシーソーの末端にそっと重りを乗せると良いように思いませんか。

そのようなイメージで、症状のある部位から一番遠いところを選びます。


5.治療の流れ

今回の治療構築は、とにかく遠いツボを選ぶということを念頭にしました。

例えば東洋医学の治療原則の一つとして、上の病には下を取るとか、右の病には左を取るといった、反対側を取ることにより物理的な距離の遠いところを取るという方法があります。

この場合には、左手首の腱鞘炎でしたので、右足首を選ぶということが考えられます。

次に、経絡臓腑には陰と陽の二つに分けることができます。

この場合には、左手首の手陽明大腸経の痛みという陽の経絡でしたので、右足首の陰の経絡を選択すると面白いとおもいます。

あとは子午流注という考え方があり、十二経絡はそれぞれ対面する経絡があります。

この場合には、手陽明大腸経のトラブルでしたので、対面にあたる経絡は足少陰腎経にあたります。


▼参考|子午流注のわかりやすい説明


左手首でしたが右足首に鍼をし始めたので、初めは驚かれていましたが、ゆっくり手首を動かしながら気の動きを確認しましたら、徐々に痛みが緩和してきて、可動域が広がっていくのを感じてもらえました。

4回の治療で6割ほど改善したところで、治療の中の会話の中からご実家であったストレスイベントをぽそっとお話しして下さりました。

心と体はひとつである。

改めて「心身一如(しんしんいちにょ)」を感じる症例でした。

めでたしめでたし。


【教育】 東塾

今月は看護師さんに第四回目の講義を行いました。


【研究 その1】 医学史の講座⑧

テーマ|「中国医学」の背景ー中国史(2) 


1.本講座の感想

今回も盛りだくさんで、2時間で中国2000年の東洋医学史を通覧したものでした。

私は、かつて鍼灸の専門学校で東洋医学史の歴史の講師をしていたので、おおよその通史というものは理解しております。

今回改めて通覧してみると、歴史の動態には時勢の影響が多いように思います。

誰の意思でもない、時代の要請に応じた結果なのでしょうね。

伝統技術を失いもしたし、波にもまれて新しい知見を得ることもできて、そうやって少しづつ忘れながら、次の時代に進んでいくのでしょうね。


2.日程

次回は、10/20(日)21:00~!


▼申し込み|歴史の講座

講座の詳細はこちらからも見られます。

❋満席の表示ですが、参加可能ですので遠慮なくお問い合わせください!


【研究 その2】 鍼と脳波

テーマ|鍼と脳波に関する研究

今回ご紹介する機器はこちら。

脳波を簡易に計測できるニューロスカイというものです!


▼ニューロスカイ|脳波計測器


財団の代表は白岩さん。白岩、しろいわ、、しろはホワイト、いわは
ロック、、、ホワイトロック財団。


▼ホワイトロック財団


非常に興味がありますね~!

私は、患者さんの感覚のみに存在する「経絡現象」にとても興味があります。

(ときどき経絡現象がラインとして体表面に現れることがありますが、基本的には患者さんだけが「経絡のライン」「気のめぐり」を感じることができます。)

「経絡現象」とは、身体に感じる「脳がみせる実在する幻影」

仮に「身体言語」なるものが存在するならば、身体が感じた実在する幻影とはすなわち、身体言語が語る「存在論」と「認識論」。

「存在論」と「認識論」とは、つまり哲学。

むむむ。

脳の認知機能と唯識、経絡現象のつながりが気になる年頃です。

❋今読んでいる『山田光胤先生からの口伝』の中で、脳波の安定が治療効果の判定に重要な所見であることが書かれてました(p68‐69)。

特に、癲癇治療で重要な所見のようですね。



今回も読んで頂きありがとうございます。ISSEIDO noteでは、東洋医学に関わる「一齊堂の活動」や「研修の記録」を書いています。どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを共有しています。臨床・教育・研究・開発・連携をするなかで感じた発見など、個人的な話もあります。


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