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【鍼の物語 - 毫鍼 GOSHIN -】熱の履歴と東洋医学 #1/4

こんにちは。東です。

前々回、熱の履歴はわからないという話を書きました。

▼鍼を作る工程での熱の履歴はわからない

金属は面白いですね~。

どのように熱が出入りしたか。それによって、同じ成分の金属でも大きく性質が変わってしまうと言います。

どのように熱を加えるか、そして冷ますかという行為は、熱処理と呼ばれています。熱処理の方法には「焼入れ」「焼戻し」「焼きなまし」「焼ならし」といった4つのパターンがあると言われています。

【熱処理について】

熱処理とは、一定の温度以上に鋼を加熱し、その後適当な方法で冷却することで、もとの鋼の性質を変えることを指し、そのことで理想的な材質にすることを目的としています。
熱処理には、主に「焼入れ」や「焼戻し」など4つの種類がありますが、どの方法も鋼材を構成する組織に加熱と冷却を施して、硬さ、強さ、柔らかさなど、目的の性質を得ることをいいます。

引用:製造タイムズ 焼き入れとは


ドクターS先生より、この神戸製の鍼に関する熱の履歴はわからないというお話を伺いました。その点については残念でしたが、一方で、すごく面白いなと思ったこともあります。

それは、東洋医学では人体への熱の履歴を観察・分析・判断することができる。このことが、パッと想起されたことです。

人体の熱の履歴はどうやってみるのか

熱の履歴の解釈を広げてみましょう。

熱の履歴は、熱の出入です。加熱と冷却といってもいいです。冷却も、空気・水・油で行います。湿度も関係してきそうですね。あとは、トンテンカンテンと刀鍛冶が叩くことも性質を変化させるには十分な力です。圧力も加えましょう。

このように見てみると、自然界における暑さ・寒さと湿度(湿潤・乾燥)、それから気圧と言い換えることができそうです。

熱の履歴という言葉は、熱の出入をした物質に対して使われる言葉です。しかし、人体に負荷をあたえる外的環境という意味にほぼ置き換えてみると、ちょっと面白いものがみえてきそうです。

東洋医学では、人間が病気になる原因の一つとして六淫の外邪:気圧差・温度差、寒暑:暑さ寒さ、湿燥:湿度、:伝染病)があります。見ての通り、人体に負荷をあたえる外的環境ですよね。ほとんど同じです(ですよね)。公式化してみるとこのようになります。


▼公式化
金属 × 熱の履歴 = 金属の性質
人体 × 負荷をあたえる外的環境(六淫の外邪) = 病気の性質(証)


エクセレント。

金属である鍼の熱の履歴はわからないんです。なぜならば、測定方法がないからなんです。

しかし東洋医学独自の診察方法では、病気の原因の一要因として数えられる六淫の外邪すなわち風寒暑湿燥火を察することができます。

具体的には、顔色に始まり脈診・腹診・舌診経穴診などから、病気の原因を察します。

人体における熱の履歴(風寒暑湿燥火)は、東洋医学の診察方法によって、観察し分析し判断することができるのです。

これは非常に面白いなとおもいましたね~。

熱の履歴を、病因病理といってもいいのかもしれない。その人が、人生の中でどのような外的・内的な病因となる負荷(ストレス)を感受してきたのか。そして、その人の心身はどのように感応(反応、対応、順応、適応)して、今の心身の状態となったのか。

東洋医学では、眼に見えないその人の履歴を、東洋医学の診察から察していくものなのだと、改めて思った次第です。

まずは、このシリーズはこれで終わり。



【補注】

今回は、話が通りやすくするために、熱の履歴 = 六淫の外邪(風寒暑湿燥火)としました。
しかし実際には、外的要因の六淫の外邪に加えて、内的要因である七情内傷(精神的負荷:怒喜思憂悲恐驚)や内生五邪(風寒暑湿燥)、食べ物の性質(五味:酸苦甘辛鹹、四性:寒涼温熱)が、どのような時期にどのようなタイミングで負荷となったのかを判断しなければなりません。
また、その時の物事の捉え方・考え方(思想・哲学)や感受性(多感、過敏性)など、受け取りての情報入力の度合いや、忘れる力や忘れるまでの期間といったかなり多くの変数を考慮する必要があります。
人体というブラックボックスを、様々なモノサシで測ったり、色んな角度から眺め続け、最適解を導き出す。文理問わず、古代のリベラルアーツ。さらに手仕事のハンディワーク。尽きない難易度。だから、おもしろい。

今回も読んで頂きありがとうございます。ISSEIDO noteでは、東洋医学に関わる「一齊堂の活動」や「研修の記録」を書いています。どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを共有しています。臨床・教育・研究・開発・開拓をするなかで感じた発見など、個人的な話もあります。


▼熱処理について備忘録


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