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その瞬間を共有するなら

夕焼けだ。

イヤホン、ケータイ、そしてカメラをポケットにねじ込み、スニーカーを引っ掛けて家を出る。


家から3分、一番空が広い場所へ。
途中背の高い木々の脇を通り抜け、もしかして夕焼けのあのオレンジ色の部分は木が邪魔をして見えないかも、なんて一瞬心配をする。

そうだ、まだ音楽をかけていなかった。
秋と冬の間、昼と夜の間にふさわしい曲を探す。
イヤホンの電源を入れ、時速36kmのハローを再生する。
さすがの選曲だね自分。

一番綺麗な瞬間を、一番綺麗に見える場所で写真に収めたい。走ろう。
今日の空気は生温いな、もうちょっと冷えてくれた方が好みだな、まあいいか。

久々に走っちゃったりして少し乱れた息を整える。ここまでくれば、きっと大丈夫。
そこでやっと振り返ると、深いブルーとオレンジの美しいグラデーションが空一面に広がっていた。

なんで綺麗なんだろう。
夜の側には、もうすでに細い月と星が輝いている。
昼の側はまるで燃えているよう。
圧倒的な空の広さの前では、木々の高さなんてちっぽけだ。

少しの時間空を見上げてその景色を脳裏に焼き付けたら、今度は徐にカメラを取り出す。
本物には劣るけれど、この美しさに共感してくれる人を探すべく、わたしはシャッターを切る。

この写真は誰に見せようか。