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遠距離介護は突然に。シーズン2 一気にハードモードになる。

今回、勢いでちょっと長いです。

呑気に実家に帰って来た私。
父もまあまあ元気そうだけど、食欲がまた落ちているらしく、夕飯に毎日頼んでいた高齢者宅配弁当を数日前に自分でキャンセルしていた。
え?じゃあ、夕飯は?と聞く私に、レトルトお粥をチンして食べているとのこと。更に、昼ごはんもあんまり食べないとのことだった。
うーん、そうか。うーん、そうなのか。…。
肝臓癌が進行してくると食欲はどんどん無くなるらしい。
私が遠方から電話すると、毎朝、今パン食べている所という返事だったから、安心していたが、まさか、その朝のパンと夜のお粥だけが1日の食事だったとは。ムムム。
でも、気を取り直して、「そうそう、無理に食べんでもいるだけ食べればいいよ。水分はもっととった方がいいよ。このゼリーとかね。」と冷蔵庫に置いておいた朝バナナゼリーを渡す。チューチューと飲む父。それは飲みやすいらしい。
この間から床屋に行きたいと言っていたので、早速、タクシーを呼んでクリニックを受診し、その帰りにスーパー横の激安床屋にまたタクシーで行った。ついこの間まで自転車で回っていた所をタクシーで行くのに抵抗があるようだったけど、タクシーを使うことに慣れてもらわないといけない。殆ど髪ももう無いので、床屋もすぐに終わり、父にとっては久しぶりのスーパーによっておにぎりとチンするかき揚げそばを買って帰り、一緒に食べた。
かき揚げそばはだいぶ残したが、父にとっては、ああ、久しぶりに食べれたというか感覚だったらしい。
お風呂もずっと入って無いようだったので、お風呂を沸かして入ってもらった。
そしたら、だいぶ疲れたようで、横になって昼寝というか夕寝した。夕飯も全然起きてこないので、先に適当に済ませた。
程なくして父も起きてきたが、ご飯は要らないという。
今日受診したところ、先生は食事は食べれるものだけ食べたらいいけど、飲みやすく栄養が取れる補助食品もがあるので利用すると良いですよと言われ、メイバランスやカロリーメイトの缶等を何種類か買ってきたので、それを一つ飲んでもらった。そんなに嫌でも無さそうだったので、食事したく無い時のために買い置きしておくことにした。
ケアマネさんから連絡あり、明日の朝、ヘルパーの事業者の方が契約と打ち合わせに来てくれて、早速来週から入ってくれることになった。

次の朝は燃えるゴミの日だったので、父が出せてない生ゴミやら、この間整理して縛っておいたゴミをゴミ捨て場に持って行ったり、玄関前にタクシーを待つ父がちょっと座れるように余ったレンガで細工してみたり、洗濯機を回したりしながら父が起きるのを待ったが、全然起きてこない。
先に朝食を済ませ、まだ父は起きてこないけど、昨日は父にしては出歩いたので疲れているのだろうと思い、まだ寝かせておくことにした。
9時半に、ヘルパー事業者の人が来るから、そろそろ起きれる?と聞くと、起きれるよ。と言いつつ、全然起き上がらない。
約束の時間が来て、しょうがないので、父抜きで話しを進めるが、こんな感じでは週一回の生活援助を頼むだけの割と自立した人には全然見えない。すみません、いつもは大体朝はちゃんと起きているんですけど、と言い訳しながら、事業所長さんはベッドで寝ぼけ眼の父に「来週から来ますので、よろしくお願いします。」と挨拶されて帰った。
「お父さん、大丈夫?」とベッドの父の所に行くと、「大丈夫よ」というけど、全然大丈夫には見えず、なんとオシッコも漏れていた。

全然、大丈夫じゃなかった。

家には紙オムツも紙パンツも何もなかったもで、急いでドラッグストアに買いに行き、どっちにするか迷ったので両方買って帰った。シーツ、マットレス、パジャマ、下着、その他をどかして、なんとか父をベッドに座らせて、紙パンツを履いてもらった。汚れた物は洗濯機へ、幸い暑いくらいの日だったので、直ぐに乾いた。
ベッドに座らせてパンツを履かせたと書いたが、実は、ベッドの端に座らせるのがおおごとだったのだ。
全然力が入らない父は、ベッドから体を起こして足を下におろしてしっかりと座る事が全然出来ないのだった。私は、下手くそとはいえ一応ヘルパーで身体介助もした事があるのだけど、平らなベッドから父は起き上がれず、私も支えられないのだった。こんな時こそ、介護ベッドのリモコンで上半身を起こせば、少しは楽になる。
の筈だったが、なんと、エアコンの風が当たるのが嫌だった父は、勝手に頭側と足側を逆にして寝ていたようで、ベッドガードもそれに合わせて自分で反対に付け替えていたのだった。なので、私が頭側を上げていると思ったら実は足側で、足側は上にはまっすぐ上に上がらず途中で折れる仕組みになっているので、ちゃんと座れるように体を起こしてはくれず、父の体は30度くらいしかどうしても持ち上がらないのだった。しかもガードが邪魔!ガードを付け替えようとしても、ただ差し込んでいるだけの筈のガードが抜けない。お父さん、これどうやったん?いや、よう、分からん。え〜、なんでだ?
体も持ち上がらない。
パニックなのは私だけで、父はグニャグニャのままなのだった。
どうにかこうにか紙パンツを履かせ、乾いた寝具に寝かせてから、ケアマネさんに相談の電話。
ベッドが逆さまで、ベッド屋さんに来てもらえますか?ヘルパーの相談に来てもらったのに、父の具合がこんな風で来週から来てもらう状況じゃ無いかもしれなくて、などと訳の分からない事を一気に捲し立てる私に、ケアマネさんは、「じゃあ、今日は木曜午後休診だと思うので、その前に一旦クリニックの先生に電話して相談してみてください。場合によっては、病院へ入院した方がいいかもしれないし、ベッドの方はすぐ連絡します。」とアドバイスしてくれた。プロは冷静で流石だ。
私は、それもそうだと直ぐクリニックに電話して指示を仰いだ。「受け答えができるようなら少し様子みて大丈夫と思います。明日の午後になるけど、往診します。なんかあったら、時間外でも電話ください。」との事だった。

程なくベッド屋さんが来てくれた。(正しくはベッド屋さんではなく、福祉用具の会社の方です。)
父が反対向きに寝ていて、しかもガードが外れない事を伝えると、直ぐに直してくれた。そして、このガード反対に取り付けるためには、下のネジを回して取り付け部分を引き出さないと出来ないのですが、お父さんご自分でされたんでしょうか。と聞かれた。
ベッド屋さん登場の時は、少し起きてなんとか椅子に座れていた父は、「そうそう、苦労してネジを回して引き出しました。」というではないか。私は、「なんだよ、じーさん、どうやったかわからんって言ったくせに!」と心の中で呟いたが、元々日曜大工は得意だったので思わず出来てしまったらしく、その事は私が聞いた時は覚えていなかったらしい。優しいベッド屋さんは、今一人なので明日朝一番に二人で来て、ベッドの向きを父の好きな方向に替えましょうと提案してくれた。腰が低いが、仕事は素早く丁寧なナイスなベッド屋さんなのだった。

長くなってきたので、続く