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シュヴェーリンへの旅


1. 旅の途中の旅

1.1. 旅の動機


ハンブルクに滞在中、そこから日帰りできる場所で見応えのある街はどこか?
まず僕が考え出した候補はリューベック、シュヴェーリン、ハノーファー、そしてブレーメン。そしてこの中から日程を考慮して2つの街を選ぶことにした。当初ブレーメンは補欠候補だったが、旅の初日にキレイな RPアクセントで英語を話す老婦人の勧めによりブレーメンに行くことが決まった。そして残った3都市の中から一ヶ所を選ぶ。都市らしい都市を見たいのであればハノーファーかリューベック。特にリューベックはハンブルクに来る前は最有力候補だった。なぜなら、こちらも旧ハンザ同盟都市でその美しさがよく評判に挙がる。だが、僕は都市よりも城が観たかったのでユネスコ世界文化遺産にも選ばれている名城のあるシュヴェーリンに行くこと決めた。

1.2. シュヴェーリンについて


シュヴェーリンはハンブルクから東に約100km、ICEに乗って約2時間かかる場所に位置し、ドイツに16ある州(そのうちベルリン、ハンブルクとブレーメンの3つは都市州)の一つであるメクレンブルク=フォアポンメルン州(何だか舌を噛みそうな名前だ)の州都である。ここはかつて旧東ドイツ側にあったためか、州都と言っても昔の街並みはよく保存されている。そして地理的には、複数の湖に囲まれた風光明媚な街で「7つの湖の街」と称されている。しかし、その数は大小ある湖の数え方、どこまでを近隣とみなすかによって数が変化する。いずれにせよ、その中で最も大きな湖は街の名前にも冠されているシュヴェーリン湖で、その広さは61.54k平方mある。この広さは青森県の十和田湖(61.06キロ平方メートル)よりは若干大きく、浜名湖(65.00k平方m)よりは小さい。そして今回の目的地シュヴェーリン城は、そのシュヴェーリン湖上に浮かぶ小島 (橋でつながっている)に置かれている。そこへは、シュヴェーリン中央駅からアルトシュタット(旧市街)を通り抜けて1.4km、しかしこの時は入城時間まで少し間があったため、アルトシュタットで軽く時間をつぶす事にする。
アルトシュタットは東西おおよそ600mくらいとこじんまりとしていてほぼ城に隣接しているので、入城前に観て回るのに丁度良い。

シュヴィーリンの地図


2. アルトシュタット


シュヴェーリン中央駅から徒歩で約10分、小さな湖(池といっても良いくらいのサイズ)を迂回すると、アルトシュタット入る。ここを通って、シュヴェーリン城へ向かう。

シュヴェーリン中央駅の前面
駅前

ドイツを歩いていると、あちこちでアルトシュタットという地域をよく観る。これはアルト(Old)+ シュタット (Town)という意味 (上記の地図では "Old City" と書かれている) で、いわば古街である。場合によってはノイシュタット(New Town)という地域がある街もある (今回ホテルを取っていたハンブルクにもノイシュタットがあった)。いずれにせよ、アルトシュタットは古い街並みが残っていて興味深い。このシュヴェーリンのアルトシュタットにも、「何十、いや何百年前の建物だ?」と思うようなビルが多々ある。
この街に到着し時刻は9時過ぎで、シュヴェーリン城の開館時間10時までは1時間弱あった。そのため、軽くアルトシュタットを散策しながらゆっくりと白まで向かった。

アルトシュタットの街並み

ハンブルクのノイシュタット、"Neu (新)" と言っても、日本の多くの都市に比べれば十二分に古い。イングランド北東部にある Newcastle upon Tyne (タイン川上の新しい城) も、その城の建造は1080年のローマ時代にまで遡ることができる。これらのNew だか Neu だかは『周りに比べれば新しめ』であって、過疎の村の青年団くらいの古いのである。

ハンブルクのノイシュタット


3. シュヴェーリン城

3.1. さぁシュヴェーリン城へ


アルトシュタットを抜け、歩いて橋を渉ると、そこにはこの旅の目的地シュヴェーリン城がある。この城は973年に要塞として建造され、その後度重なる増築を経て、1857年に現在の形状が完成している。そして現在この城はメクレンブルク=フォアポンメルン州の議事堂としても使用されているとともに、一般人は『シュヴェーリン城博物館 (以下博物館)』という名目で場内を観覧することができる。

シュヴェーリン城前
シュヴェーリン城正門 (一般人立入禁止)

博物館の入り口はこの正門の位置を12時方向として、7時の方角に入口がある。
そこから博物館に入るとまずはチケットカウンター、ロッカーとお土産コーナーを揃えたエントランスに入る。そこからまずは3回まで一気に登る。展示はそこから下る形で各室内をめぐって、最後に州議会の議事場の横を通るコースとなっている。

3.2. シュヴェーリン城の展示


この博物館の展示内容は主に城の調度品、ソード、そして肖像画などである。それらは絢爛豪華で、この旅で行ったデンマークのクロンボー城とはまた違った趣がある。それらはどちらも時代を遡れば砦として建造されたものの、こちらの方がずっと煌びやかである。

博物館展示室

ヨーロピアン・ソードのコレクション。
改めてこの写真を見ていると、ロンドンの大英博物館で観たアフリカの伝統的ナイフ・コレクションを思い出した。国立博物館あたりで『世界のソード』展のような企画展を開催してくれないだろうか?
いつか、そんな世界中のソードを集めた展示を観てみたい。

ソードコレクション
大英博物館に展示されているアフリカのナイフコレクション(著者撮影)

博物館、というよりは城の天井絵。
このような豪華な天井絵は、このシュヴェーリン城が "Castle" というよりはむしろ "Palace" という印象を与える。

天井絵1
天井絵2

城内から見えるシュヴェーリン湖は、8月の強い陽射しを受け、白く光り輝いていた。元は要塞として建造されたこの城も、城自体の美しさとこの景観を考えると世界遺産として登録される理由も頷ける。

シュヴェーリン城内から観る庭園とシュヴェーリン湖の風景

そして、城と言えば玉座も忘れてはならない。
この部屋は約30平方mくらいのこじんまりとした部屋だが、その装飾、天井画などはとても豪華なものだった。

シュヴェーリン城の玉座

博物館を見学したのち、外に出て庭園を散策する。
まずは城の裏庭、そして広大な庭園。シュヴェーリン城は、庭園を含め、非常に管理が行き届いていてとても綺麗な城だった。

シュヴェーリン城背面からの眺め
シュヴェーリン城の裏庭
庭園公園


4. 再びアルトシュタットへ

4.1. 街の風景


シュヴェーリン城を堪能し終わると、再びアルトシュタットに戻る。
ここはそれほど広くはなく、かと言って、数時間かけてじっくり観るに堪える程度には十分広い場所だ。城へ向かう際も見たが、古い建物が散見されていることに興味を惹かれた。その中でも、特に気に入った建物が元パブらしき古い小屋とこじんまりとした本屋。
この本屋の建屋はそれほど大きくなく、古くもなさそうに見える(他の建造物に比べれば)。そしてとても景気が良いとは思い難い。シュヴェーリンに来る前、ブレーメンでもドイツ語の教材を見たくて、少し大きめ(と言っても大きめのコンビニエンスストアくらいのサイズ)の本屋にも寄ったが、そこは時の流れがのんびりしていた。日本同様、Amazon はドイツでもサービスを提供している。そのため、買いたい本が決まっているのであれば、Amazon で購入した方が効率が良い。
しかし、僕もふくめ、中年以上の本読みは手に取って読めるリアルな書籍に強く惹かれる。とは言うものの、近年は僕も Kindle 経由で書籍を購入することが多い。ただ、Kindle で買ったものの、電子媒体ではとても読む事が出来ず、リアルな書籍を買いなおした本もたくさんある。そういった本は、主にちょっと難しい新書や専門書の類だ。それらは前後のページを参照することが多く(『前章でも述べた通り』などの表現が多い)、リアルな書籍で読んだ方が楽なのである。

元パブらしき古い建物
比較的新しそうだがきっと古い本屋の建物
本屋の入り口
おしり探偵?!

このアルトシュタットの街並みは、外国人 (日本人も含む) ステレオタイプのドイツとと言っても良いのではないだろうか。

アルトシュタットの街並み
ペーパーショップのウィンドウ


4.2. シュヴェーリン大聖堂


ヨーロッパの古い街には必ず大聖堂(Cathedral)という施設がある。
当然シュヴェーリンも例外ではなく、マルクト・プラッツのシティ・ホール裏に立派な大聖堂が鎮座している。建築様式は、建造期間が12〜13世紀で、またここがドイツということもあり、ゴシックである。それは尖塔のとがり具合からもよく伺える。また内部を見ても、天井が高く、それがリヴ・ヴォールト方式(屋根のクロスしたリヴ)をしており、豪華なステンドグラスによって装飾されていることから、この聖堂が典型的なゴシック建築であることが伺える。

マルクト・プラッツ
マルクト・プラッツ裏の大聖堂
聖堂内の風景
聖堂の祭壇
ステンドグラス

4.3. カリナリー


そしてランチタイム。
可能なかぎり現地の食事が食べたくて、古そうなダイナーに目を付ける。
そこはプレートの組み合わせを自分で選んで、取ったぶんを支払って食べるというカフェテリア方式のダイナーだった。ちょっと塩辛いがまぁまぁの味だった。

目をつけた古そうなダイナー
ハムステーキ、マッシュ・ポテトとベジタブル

ここで見つけた珍しい飲み物として、大型ドラッグストアで購入したチュッパチャップスのドリンク・ヴァージョン。味は(うまく伝わるか分からないが)サンガリアの “ふわっとメロンクリームソーダ” とあまり変わらなかった。正直「ふーん」という感想しかなかった。しかし、僕は試してみたことに価値があると考えている。もし美味しければそれで良いし、美味しくなくても旅の話題としては面白かったからだ。そういうわけで、「ふーん」クラスの味は少々肩透かしだった。

チュッパチャップスのドリンク


5. アウター・アルトシュタット

アルトシュタットを一通り散策したが、チケットを予約していたICEまではまだ1時間以上の時間が有ったので、アルトシュタット外も散策することにした。
古い街だけあり、アルトシュタットを少し出た地域でも経年の変化により、梁が曲がっているような古い建物も散見された。このように古い建物、日本では1円の価値も無いのであろうが、ヨーロッパではメインテナンスがしっかり行き届いていれば、資産価値は増大していくのであろう。もし日本でもこういう状況だったら、僕も持ち家を買っているかもしれない。でも地震大国の日本なら、この写真のような古い家がいつまでも建ち続けるのは無理な話なのかもしれない。

アウター・アルトシュタットの街並み
アウター・アルトシュタットの建物1
アウター・アルトシュタットの建物2
アウター・アルトシュタットの建物3

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