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書き下ろし一服ショート「小説 刹那にかわる愛を探して」1229字

ショートショート「小説 刹那にかわる・・・愛を探して」


触媒とした画・フラナゴールの手によるブランコ 風俗画 ロココ
※注 本稿と絵画の歴史的な関りはありません。史実と伝承を基にした創作です。

 ここはベルサイユの裏庭。
 さて、その奥には、「朕は国家なり」の迷言で知られるルイ14世太陽王の命により建てられたPetit Trianonプチ・トリアノンが、今は、今宵の宴にそなえ、静かに佇んでいます。
 あの頃は良かったのです。
毎夜毎夜、夜会は繰り広げられてはいたのですが、まだ、目を覆いたくなるような光景は控えめでした。
 ルイ14世太陽王は、興が乘ると幼少期より得意だったバレーを踊りだし、ギリシャ神話の太陽神アポロンに扮するのが十八番でした。後にそれが太陽王と云うあだ名に繋がったようで、わたし達も自慢の王様ではあったのですが…… 。

 ほら…… おいでなさいましたよ。今宵も主役のアントワネット妃が。皆さん、今日もはじまりますよ。刹那なひとときが。
「シーッ ! ! そこのクピドー諸君 ! 今日こそは矢を射るのはやめ給え。頼みましたよ ! ! 姫君は声が大きいのですから。」
 おやっ ? 既に草葉の陰にひかえしは、フェルゼン伯爵が…… 、しかし、伯爵よろしいのですか ? そこで。そこは、先ほどデュ・バリー夫人が「花を摘みに」いらした場所。それもどうやらあの匂いから申し上げるなら、大きなお花を摘んだようでいらっしゃる。ほどほどに肥やしも効いてる頃合いかと。

 ルイ16世の統治にいたってはこのとおり。日ごと夜ごと、このお姫様のご狂乱による哥会、ギャンブル、パーティーが催されるのが常でした。
 ただでございます。
 パーティーと申し上げることすら憚られるパーティーであり、その実は、口にすることも汚らわしき、忌々ゆゆしき酒池肉林の宴が繰り広げられるのが常でした。
 ここのところのマリー・アントワネット妃は、お気に入りのフェルゼン伯爵一本ではあったのですが、その振る舞いは刹那的であり廃頽的でありすぎると民にもうわさが広がる始末。事が大きくなる前に自重してくれれば良いのですが。嫌な予感がしてました。
 どこぞのお国の政治家のように、グリーン馬車不倫などがすっぱ抜かれでもしたら取り返しがつきません。クワバラクワバラでございます。

 それにしても世は刹那ばやり。愛も刹那、恋も刹那、一夜も刹那。
詩人はみんな刹那を口ずさみます。刹那に替わる愛を探してみては如何でしょう。長しえに~ 長き夜の~ 無窮~、長久なんていかがでしょう。
 なんて ? 今なんとおしゃいました ? クピドー君。
「仕事の邪魔をするなと ? 刹那があるから忙しいと ?」
そうかもしれませんねぇ。
わたしも随分あなた達からの矢を頂戴しましたから。

うわっ ! ! とぅ ! ! 姫様に聞こえたのかしら。スリッパが飛んできましたよ !
またあんなに足を開かれて~
フェルゼン伯爵~そこはドュ・バリー夫人のう○こが ! !

Petit Trianonの幕が開くようでございます。

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