世一、詩する。『拝啓 大谷さま"本を振るおとこ"より』
頁を捲る。
一枚みつける。
数頁捲る。
もう一枚。
更に頁を捲る。
ここにも一枚。
送られて来た数年前の雑誌に閉じ込められたイチマンエン紙幣は
差乍らアイロンを当てられたようにピン札然と伸びている
また頁を捲る。
四枚目となる一枚。
残り頁は多くは無い。
数頁ごとに存在をあからさまにした紙幣
毎頁ごとに綴じられていたなら何枚になっただろうかと考える
あと一枚。
伝え聞いた枚数は五枚。
幾分乱暴に頁をパラパラとやると
頁の間から飛び出す一枚。
これで五枚。確かに五枚のイチマンエン紙幣。
聞いた通りの五枚のイチマンエン紙幣。
もう一度、最初の頁から捲り直す
目の高さまで掲げ持つと本を振る
本を振る。
なぜ本をフっているのだろう
なぜバサバサと音を立てて本を振っているのだろう
なぜ自暴自棄に本振るのか
…… やっぱりない。あるわけがない。
あるわけないと判っていても本を振る
一枚一枚取り出す気持ちは高揚感をともなった。
出てくるはずはないと判っているのに
本振る我が身を省みて
何故か気持ちが萎えて来る。
世一
あなたは本を振りますか ? 五枚と聞いたらそこで手をおきますか ?