筋の緊張状態を表す用語たち
おはようございます。
突然ですが『筋肉が緊張してるね!』と患者さんに伝えたりすることがあると思います。
緊張と聞くとネガティブなイメージがついてしまうかと思いますが、本当にそうなのでしょうか?
今日は、筋肉の緊張状態や、硬さの状態についての用語について
解説と考えをまとめていきたいと思います。
・緊張とは?
辞書を調べてみると以下のように記載されています。
ひきしまってゆるみのないこと。
私たちの整形外科分野で意味するのは3でしょうか。
次に、筋肉に対する緊張状態を指す言葉を見ていきます。
・筋緊張(Muscle Tonus)
筋緊張のことを『筋トーヌス』と表現します。
神経生理学的に、神経支配を受けている筋が持続的に生じている一定の緊張のことをいいます。
異常所見の表現とし、筋緊張の『亢進 もしくは、低下』と表します。
人間の生体の恒常性を保には一定の筋緊張が必要と言われています。
・生体の姿勢保持機構
・体温調節機構など
よって、筋緊張というワードだけでネガティブな状態と決めつけるのは良くないと考えています。
しかし、異常な状態とは具体的にどのような疾患が挙げられるのでしょうか?
・筋緊張が亢進している状態
主に『上位運動ニューロン』の障害を考えます。
↓説明は参考までに
一般的に、脳梗塞などの後の状態で、筋の異常な緊張状態が持続的に起こってしますケースが多いです。
・筋緊張が低下している状態
主に『下位運動ニューロン』の障害や、末梢神経系(脊髄神経は含む)に問題があった場合に、筋緊張(筋力)低下が生じます。
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)→下位運動ニューロンの障害
脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニア →脊髄神経や、そこから別れる神経根の問題
こう言った疾患で、筋緊張(筋力)低下が起こります。
・実際によく遭遇する筋の状態について
よく筋肉の状態として、耳にする用語をまとめてみました。
・筋スパズム(筋攣縮)
・筋ショートネス(筋短縮)
・筋タイトネス
・筋スパズムについて
筋スパズム(攣縮)とは、どのような状態なのでしょう。
ざっと、説明するとこんな感じでしょうか。
ちょっと小難しいので、実際に報告のある研究を用いて説明していきたいと思います。
1995に土肥先生らが報告して研究です。
猫の肩関節にブラジキニンという発痛物質を投与した研究で(いわゆる侵害受容性疼痛を引き起こした)、関節内に炎症を起こした際に、その関節周囲にある棘上筋や棘下筋に収縮が生じたという研究です。
つまりは、『痛み』という情報を拾うための受容器(侵害受容器)からの情報から、筋に収縮が起きたという報告です。
痛み→筋が収縮(異常な収縮)が起こる。痛いとずっと筋の収縮が起きそうですよね?
持続的な筋の収縮が続けば、そこに通っている血管などにも負担がかかり、血流が滞ります。(虚血状態)
虚血が継続すれば、さらに発痛物質が放出されて、筋の持続的な痛みにつながります。
この負の循環が続くことで、筋の攣縮状態と持続的な疼痛が完成されます。
ここからさらに痛みよる不動が長期的に続けば、今度は『拘縮』(筋の短縮も)へ進行してしまいます。
・筋ショートネス(短縮)について
まず筋節について解説をすると、Z膜とZ膜の間までを区切る部分を筋節と言います。
その間に、筋フィラメントである、ミオシンフィラメント(太い線維)
アクチンフィラメント(細い線維)が存在します。
筋が収縮する際には、筋フィラメントである太いミオシンフィラメント上を、細いアクチンフィラメントが滑ることによって、筋節が短く(減少する)なります。
筋ショートネスは、この筋節自体が、伸張刺激に対して伸張性が乏しくなっている状態を指します。
・筋タイトネスについて
まずは、タイトネスという言葉についておさらいをしていきます。
辞書やネットで調べてみると、上記のような意味ありがあります。
つまり、筋タイトネス=筋緊張?と捉えていいのでしょうか。
しかしながら、先ほど説明をした通り、筋緊張にも良し悪しがあるので一概にどんな状態を表せしているかがよくわかりませんね。
ここで、日本アスレティックトレーナー学会で定義されている『タイトネス』についてみてみましょう。
筋の長さに対して用いられる用語で、筋の長さが軽度から中等度減少している状態、もしくは、正常な位置にある筋の伸張性が低下している状態を指します1,2。例えば、ハムストリングスのタイトネスをテストする際は、SLR test (Straight-leg-raising test) などを用いて筋の伸張性の低下を評価します。
と記載されています。
この定義から考えると、『筋タイトネス』は
人間の筋肉には至適な長さがあるため、そこから筋短縮(ショートネス)の域まで達していないが、筋の伸張性が低下している状態を示しているイメージでしょうか。
また、別の報告では、タイトネスは『筋や筋群が、特定の身体部位全域の可動域を動かすことができない状態』と記載していたため、確かにSLRなどでの可動域全域での伸張感・抵抗感をタイトネスとして捉えるのが良いかと思います。
・それぞれの評価について
・筋スパズムに対しての評価
筋自体の異常収縮と、筋自体の痛みがあることから、圧痛や、伸張、収縮時痛をしっかりと確認することを心がけています。
また、痛みがあるため、関節を動かすときに痛みに対する防御性の収縮が入っていないかどうかなどもチェックするようにしています。
・筋ショートネス(短縮)に対しての評価
筋節が減少し、筋の伸張性が低下している状態のため、基本的には、関節可動測定と、関節運動の際の、筋の抵抗・伸張感を評価します。
ここで注意しなければいけないのは、筋シュートネスが出現しているということは、他の関節周囲組織の評価(特に関節包性の制限)も忘れずに行うことが重要になります。
その際には、通常の可動域にプラスして、関節のLoose pack positionでの可動域を確認すると、筋性での制限か、関節包性の制限かを鑑別できます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/16/3/16_KJ00001305946/_pdf/-char/ja
・筋タイトネスに対しての評価
先ほど記載した定義『筋や筋群が、特定の身体部位全域の可動域を動かすことができない状態』から評価の方法を考えると、特定の筋群に対して行う関節運動という点が評価のポイントになってくると考えます。
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/medicalinfo/check/tabid/1320/Default.aspx
JISS(ハイパフォーマンスセンター)が行う、メディカルチェック項目から取り上げると、よく教科書にも記載のある評価法が上がってきます。
・SLR→ハムストリングのタイトネス評価
・FFD→脊柱起立筋などのタイトネス評価
・HBD→大腿四頭筋のタイトネス評価
・Thomasテスト→腸腰筋のタイトネス評価
・Ober test→腸脛靱帯のタイトネス評価
一般的ではありますが、こういった項目を押さえておくことが大切ですね。
最後に、簡単ではありますが、筋の硬さや、緊張についての項目をまとめてみました。
ぜひ、ご意見などもあればコメントをいただけると嬉しいです。
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