「人魚の眠る家」レビュー

 お友達が激しくおすすめしていた…いや、「おすすめ」というより、「ものすごい混乱していた」といったほうがより近いか、東野圭吾の「人魚の眠る家」読了。

 いったい、人をあんな混乱に叩き落す小説ってどんな??って思って、レビューを読んだのが昨日で、昨日の夜には買いに行き、さっき読み終わった。
 東野圭吾は…もう…巧すぎるんだよ!巧すぎ!!
 ひょいと襟首をつかまれたまま、ぐいんぐいん振り回されて急降下させられて、何度も「ひゅんっ」って感じになった。
 一気に読ませすぎる。何なの。もっとゆっくり読ませろ…!

 内容は重く、専門用語も多く、医療知識ゼロの人間にここまでわかりやすく読ませる技量は並大抵のものではない。
 半面、人物の心理描写の掘り下げは弱かった。
 内面を掘り下げてたら話が違うものになってしまうから、という割り切りだと思う。今回のテーマはそこではないから。
 そういう意味では、母親の薫子の、葛藤やある種の狂気はもっと読ませてもらいたかったと思い、父親の和昌はだいぶうんこだな!という感想しかなく、残された子である幼いイクトや従妹の若葉は、大丈夫なのか、ものすごいトラウマを抱えたまま成長してある日爆発しないのか…と勝手に心配になった。
 だけど、進藤医師の造形は見事だったなあ…、何度も「うっ」って息が詰まった。

 いやでも、戻るけど、和昌うんこすぎるでしょ…!
 薫子、超絶ワンオペ…!
 金だけ出すけど、問題の本質からは何年も逃げ続ける男、妻や子を最終的にそこまで追い詰めたのはオマエじゃないのか!って気持ちでいっぱい。そもそも仮面夫婦になった経緯よ…!

 東野圭吾作品で、読みながら「うおおおお!もうやめて!いやああ!そう来たか!ギョエエエ」ってなるものは、他には「赤い指」がおすすめです(装丁とタイトルが怖すぎるけど、ホラーでも何でもないのに…)。あれはもう…。
 あと、「夜明けの街で」は、完全に魂が死んだ。あれ魂の殺人じゃない…?あれを読まされて以来、東野圭吾のことは本当は許してないんだからな…!


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