昔とは変わってしまった親友に創作を叩かれた話

タイトル通りの話をします。思い出す度にバッド入ってしまう勝手にシンドバッド症候群の治療を目的とした吐き出しにすぎない。ただ、共感してくれるかどうかはともかくとして「これはモノを書く・描く人間に対して言ってはいけないことのオンパレード」を羅列されたものであるため、字書きないしは絵描き諸君はこの事例を知ることで今後のハートの備えとしてほしいと、どんな身分かはさておき思った。


ところでこの話に身に覚えがあると思った君はその時点で読むのをやめてくれ。私は君と縁を切る覚悟でこれをしたためた。


タイトルにある友人とは小学校二年生からというなかなかに長い付き合いがある。仮にYと呼ぶこととする。
中学のあるとき、私とYと、もう二人の友人NとSとでキャラ創作をした。かなり盛り上がったため、また当時からSは絵描き、私は見ての通り字書きであったので、我々の中では印象深いキャラクターたちである(NはYと揃って良い設定案を出してくれていた)。
高校で全員バラけた後各々に自由時間の増える高校卒業後くらいまでやや疎遠ではあったものの、連絡を取り合えば地元のファミレスに集合くらいはする仲で、私はこの小さなコミュニティの中でも特に頻繁にYと会っていた。
いま思えばその頃からYには若干のマウント癖があったように思えるが、露骨なものではなかったので微妙にスルーしていた節がある。
さて、事の発端はYが涙ながらに告白した「中学の頃のあの創作っ子たちをずっと引きずっていて、当然供給がないからつらい」との話であった。そんなことは初耳だったが、実は私もSも思い出したように書いたり消したりなどをしていたくらいで、Nも忘れたりなんてしていなかった。なんならその創作キャラの名前をもじってHNにしていた。
ということで私たちのジャンルの中に再び舞い戻って来た「中学の頃の創作」は、私に7万字程度の小説を書かせるにまで至った。同人活動を長くする中でついた自分のスタイルに改めて彼らを当てはめて書くことが自分でも楽しかった。それで、せっかくだからとそれを同人誌として、自分とYのためにだけ刷った。まだ本作りに慣れていなかったりと拙い点はあったが、満足ゆく本を作った。丁度、Yの誕生日頃だったので、サプライズで渡した。Yはあまり感情を剝き出しにするタイプではないが懇切丁寧にお礼を言ってくれたのをよく覚えている。「誰も理解できない自ジャンルに供給があったら嬉しい」と言っていて、そりゃそうだと納得した。
それが一年前の話になる。今年も彼女の誕生日がくる。言葉少なに感想をくれたり、NとSにも報告したところ「そんな面白いことやってたんか!」と言われるなどして完全に舞い上がっていた私は今年もYに創作本をあげようと決めていた。一年間いろいろなジャンルで本出したし、本の作り方にはある程度慣れてきた。書きたい内容も溜まっているし、何より去年あれだけ喜んでくれたのだから今年も喜んでくれるに違いない。
これが私の思い込みであったと割と早い段階で気づいていれば良かったのか、何なのか、やっぱりよくわからない。
Yの誕生日は12月で、私は8月より前から新作の構想を練っていた。Sに頼み込んで有償で表紙を描いてもらえないかと打診もした。Sは快く引き受けてくれたし、ラフをくれたりして、私は大層盛り上がった。一人で(結局Sは多忙を極めてしまったので表紙の件は流れてしまったのだがSは最後まで協力的であったのでここでは問題は起きていない)。
さてそろそろ本格的に執筆の段階に入らねばなるまいとなった10月後半、Yが毎年恒例サプライズプレゼントを私にくれるということで連絡があった。10月に私の誕生日があり、Yはそれを覚えていてくれて、私の喜びそうな品をしつらえてくれる。親友と呼べるだろう。私が調子に乗っていたのか何なのか。
今年は私が忙しくしていたため、Yとはほとんど連絡を取っていなかったのだが、Yから時折連絡が入るなどはあり、まったく交流がなかったわけではないが、去年ほどの交流はなかった。久しぶりに会うので、髪を大幅に切ったりして去年とは少しばかり違った私をどう見てくれるのかとかもあったし、楽しいオタ活が送れているかどうかとか、くだらない日常の話がしたかった。

開口一番、「太った?」と言われた。
先に述べるが、Yは別に、思ったことすぐ口に出ちゃうの!みたいなキャラではないし、むしろ言葉選びは慎重だった。
唖然としている私はしどろもどろになりながら「ハハ~最近ランニングちょっとサボりがちでェ~ヘヘヘ」とか適当ほざいてやり過ごそうとしたが、次にYは私のネイルを見て「汚ッ」と言った。Yのネイルはサロンでやったジェルネイルで、私は自宅でふぅふぅ乾かしてせかせかラメを貼ったセルフネイルだった。プロの仕事には遠く及ばないが、友人と会うための最低限のお洒落と思って、ちょっと夜なべしたものだ。そりゃプロの仕事と比べりゃお世辞にもきれいとは言えない代物かもしれないが、私は発色の良いものを厳選し、新品のポリッシュを買ってきてルンルンで塗った。
もちろんこんな裏話をYが知るはずもないのでそこも「やァ~まあ塗ってからもう一週間は経つしアハハ」などと空気を悪くしたくない一心で嘘を吐いた。いま思えば馬鹿馬鹿しいね。
自信満々に突き渡されたプレゼントはロシアのヤバイ粉で、ずっとそれに軽い憧れを抱いていた私はどんな運の巡りあわせかと心を弾ませたし、この子は毎年私に本当に似合うと判断したものをくれるなァ、プレゼント選びは才能だよ!と心の底から褒めたあとでの暗雲であった。
ここまで聞けばこれが創作に何の関係があるんだよとお叱りを受けそうだが、Yの変貌ぶりを示すためにここまで使った。許してほしい。長文書きなんだ私は。


遅めのランチで会話するうちに、Yが去年までとはすっかり様子の変わっていることに気が付いた。私がこの目で見て知る去年までのYは転職する前だったので生活に余裕がなく、精神的にも充実していたわけではないのでソシャゲにン万溶かしたり(それは私もひとのこと言えないけども)急に「わけもなくしんどいからとにかく褒めてほしい」とラインしてきたりとかしていた。転職してしばらく経って、余裕ができてきたんだろう。お洒落に気を遣い、週末は友人を誘い合わせて飲みに繰り出し、土日はコラボカフェに行ったり、なんて、安定した生活をしていた。そんな様子を楽しげに本人の口から聞かされて、私はまだ能天気でいた。楽しい生活を送っているようで何よりだと本気で思ったし、人間しんどくないのがいちばんだと思ってるから。
ぺらぺらと楽しい生活のことを話してくれたあと、Yは私の現在について訊ねてきた。年齢がバレるが私は今年就活をして無事に内定をいただき、研修などで内定先に関わらせていただいている状況だった。業務内容的に転勤が多く、最初の配属先も日本全国どの場所になるかはまだ不明。私は別に、実家を出ることや地元を離れることに何の不安も抱いていなかったので、入社が楽しみだよと話した。
「三か月は辞めちゃダメだよ。本質が見えないからさ。ていうかそんなコロコロバイト変えてきたクセに社会人できんの?」
話の腰を折るというか、なんだか否定的に感じた。これが、私が「新しい生活は楽しみだ」と言った(しかも満面の笑みで!)後に出る言葉で、しかも、能天気・前向き志向・くよくよしないの私の売りをよく知るYの口から真っ先に飛び出すとは思えず、しばらくYの話を聞くだけになっていた。Yは口々にやれそんなんで自炊はできるのか独り暮らしができるのかと母親でも言わなかったあれこれをそこそこの圧で言ってきた。これも、特別伝えたわけじゃあないから、知らない上での発言だとは思うのだが、家を出るにあたって、一人っ子の私なりに考えていることはあった。目先のことに臨機応変に対応することも得意だけど、先のことに幻想を抱くだけじゃあなくて、あれをしなくちゃあいけないからこれをする、とか、建設的に思考を広げるのだってできないことではないのだ。Yの知らないところで私は努力らしい努力をしている。Yは知らないだけで。
と思ったのでちゃんと考えてるよ、と伝えた。具体例を挙げるとそれにも突っ込んできそうだったので、話題を逸らす方向に進めた。具体的には、席を立った。


その後Yとモールをうろつきながら時に楽しく時に不穏に会話のキャッチボールをした。たまに投げてくるボールが、狙っているかのようなデッドボールで私が選手生命を持ってたら、しばらく一軍復帰は無理だっただろう。時折Yから逃げるように喫煙所に駆けこんだ。とっとと言い訳つけて帰れば良かったものを、煙草で誤魔化して留まった。
カフェに入った。同人活動はどうだという話から、去年の私の本の話になった。自分でもいつでも読みたいから、ピクシブにもアップしてある。私はどのシーンの話をしてくれるのかなと思って作品ページを開いた。
「一年経ってるからいいよね」
どういう前置きかは(いまでも)理解できないが、Yは私の本の話を始めた。

結果だけお伝えするなら完全なる批判だった。そもそもストーリー自体から入り、次にキャラクター、展開、口調など、とことん批判された。

このくらいでショゲてるようじゃあ同人やってけないよ!と思ったら閉じてくれ。

ここから言い訳をする。

まず、この創作キャラたちには明確な世界線が存在しない。キャラクターだけの設定が使いこまれた練り消しみたいに存在して、あとはSがざかざか描いてくれた立ち絵くらいだ。だからこそ、キャラの個性はそれこそ「書き手による」というわけ。私はお話を一本書くにあたって、また、舞台がないものに舞台を作るため、ある程度辻褄が合うようにキャラを考えた。職業とか、あとアクションが書きたかったからアクション要素を強めるために得物を与えてみたりとか、やった。SもNも流し読みしてくれて、「よくあの設定だけでこんな書いたよ」と笑ってくれた。「ちゃんと形になると面白いもんだねえ」とか。Yも同じような感じだったし、一人で燻らせていたものが急に形になったりしたからいちばん感動してくれてた。
この、「一人で燻らせていた」というのが良くなかったというか、猛烈なダメ出しへと繋がったのかもしれない。私の憶測でしかないけれど。もうYの中ではいくつもお話が書けるくらい創作キャラたちの世界が整っていて、個性も出来上がっていたんだろう。だれそれはこんなに話さない、だとか、ここでこの子はこういう動き方しない、とか、全体的にこのキャラが違う、とか、そういうお言葉をたくさんいただいた。
「ストーリーが自分に合わないんだよね」
これ言われたらどうしようもなくないか。じゃあいまさら私に何ができるって言うんだろう。何でもいいからこの子たちで書けないかと涙ながらに訴えていた面影はどこにもなかった。ご長寿連載作品を連載当初から読んでるファンが「最近ダレてきたよな~」と言うのと何ら変わらないと思うのですが。


いまはこうして時間も経って落ち着いて書き出しているからいろいろ怪しい点をじっくり振り返ることができるけれど、当時はなんかすれ違ってんねー!くらいの感覚だったのだ。能天気にも程がある。この能天気のおかげでつらい思いをせずに済んだ(いや、気づかずにスルーしていて後から気づいて笑える頃合いになっていた)経験が多すぎるため、いまになってこんなにじわじわと浸蝕してくることがあるなんて思ってもみなかった。


夕食もそのままモールで食べて帰ろうという運びになって(繰り返すが当時はな~んとも思っていなかったのである)また別の店に移動した。Yはやたらにマウントを取る発言が多かったように思える。私の次の職場がオフィスカジュアルだと話すとそんなギャルギャルしい恰好ばっかしてるくせに着こなせるのか?とか(これでも私はアパレル店員のバイトを二年は続けているのだがなあ)、同人とか私はもう面倒だからイベントとか行かないしそんな金あったらサロン行くわとか(別に私だって本を出してるから偉いとか思ってないし金の使い方は個人の自由なんだがなあ)、私が苦し紛れに逸らす話題のことごとくにマウントを取ってきた。まるで高二病だった。
しかしその認識はちょっと違った。あれだ。サークルの飲み会でやたら自分は充実してるアピをしてくる先輩みたいだった。Yは大学を経験していないのでわかりづらいかもしれないが、私は狭いコミュニティの中で何度かこれに遭遇している。ジャンル被りがなかったからマジにど~~~でも良くてほとんど話を聞いてあげてこなかった先輩たちの姿がYに重なった。いやあんま先輩の顔覚えてないけど。必死に「自分はマジにエンジョイしてっけど、陰キャのおまえどうなん?」的な、元陰キャの外面陽キャに成り果てた先輩が意味もなく取ってくるマウントに相違なかった。毎週末はダチと飲み行って土日はウェ~イでまた飲み~的な?で?オマエそんなんできてる?ワケないっしょwwwウケるwwwマジ陰キャwwwと大して強くもない酒を煽りながら言ってくる先輩。いるよね、サークルに一人以上は。いま思えばYは完全にそれだった。オタクくんマジ陰キャだねwwwをやる、陽に目覚めた(と自分は思い込んでいる)イタい先輩。みんなは遭遇したことない?それは幸運ですね。


Yは人付き合いの話にも陽キャムーヴメントを用いてきた。リアルの友達少ないの?ダッサ~wwwは?ツイッターのフォロワー?それ頼れるわけ?いや別に否定してるわけじゃないけどさぁ。私はこれにどう返すべきかわからなかった。Yの価値観がそうなだけだし、私はフォロワーとはオフ会もするしオフ会しなくても作業通話もリプもタグ反応もするし、満足いく人付き合いをしている。つもり。Yの意見を間違ってるとも思わないし、否定はしない。私はこういう価値観のもとで人付き合いをしていますよと話すと、「まあ、気に入らなかったら切りゃいいだけの話だよね。私はすぐ切っちゃうからね。面倒になったら別に、誰だって」と言われた。それって暗に私のことも対象に入れてるからね~と脅してるんだろうか。何のためにそれをする必要があったのか私には理解が及ばない。わかるひとに解説してほしいくらいね。
Yの最寄で別れるまで、延々とそのマウントは続いた。口約束に過ぎないが「まあ今年も書いてくれんだよね?」「ああまあ、はい」とは言った。が、なんだい君はスポンサーかい?とでも言いたくなるような「ロシ粉に釣り合わないの出してきたらマジ絶縁」との文言を言われていよいよ私は何も手がつかなくなった。本格的なスランプに陥る前にいろいろ書き溜めてあったものをと思ってその日は必死に書いたけど、いま何も手につかなくなった。勝手にシンドバッド症候群のせいである。
創作キャラたちは割と気に入っていて、これまで二次創作のゲストキャラとして何度か登場させたりもしている。思い入れがある。大事なキャラたちであり、この子たちの話を考えたり書いたりするのは私にとっても楽しいことだった。いまは、「ロシ粉に釣り合ったもの」を考えようとすると思考が止まる。何度も言うが勝手にシンドバッド症候群である。この子たちの話を書こうと思う度にYがロシ粉を押し付けてくる。そこで思考が止まる。Yよ、きみは一人の字書きを意図せず殺した。

このぐうたら長い体験談で何が言いたかったのかと言うとちょっとまとまらないのだが、いちばん言いたいのは「面と向かって言って良いことと悪いことがこの世には存在する」ということである。もちろんジョークとして「ちょっと太った~?」とか言い合えるくらいくだけた仲ならまあ、百歩譲って良いとしようか。いやでも見た目のパッシングは良くないと思う。常識的に。
まあそれは一旦置いておいて、だ。これを最後まで読んだ貴方方は創作者を簡単に殺すことができるようになったのである。どれほどメンタルが鋼の作者だったとして、作品にケチをつけ続ければ筆を折るよ。筆を折るまでいかなくても、しばらく作品を見ずに済むよ。いまに知れた話ではないけれども。
今回の件は私に非がある箇所がないとは言い切れない。何せ自分のしたことだから判断しきれない。だって全部良かれと思ってやったんだもの。でも良かれと思ってやったんだもの。なので私には私の非がわからない。何か気に障っていたのか、それとも気まぐれだったのか、どっちにしろ私はしばらくYとは連絡を取らない。少なくとも私から取ることはない。ロシ粉の貰い逃げは避けたいとか思っていたこともあったが、いまとなってはどうでも良い。だって、気に入らなかったら切りゃいいだけの話であるから。

もらったロシ粉は紙袋に入ったまま、二度目の光を浴びていない。


需要はともかくとして、当該作品も貼っておこう。

励ましとお題箱を兼ねるマシュマロも置いておこう(露骨)


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