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“Be fond of”, and “I love you”  ~『指輪物語』の台詞における愛情表現~

主旨要約:【指輪物語原作台詞の「好き」とか「愛してる」が出てくるここが好き!!!なお、原語だとこの単語だぞ・・・。いいぞ。】


何度目かの転載シリーズです。ちょうど『指輪物語』における愛についてぐだぐだ話していたので思い出して掲載。
もともと別件でキャラの関係性の描写を調べていて、「愛」だの「好き」だの好意の表明が登場するところにひたすら付箋を貼っていたという無駄なストックがあったので、まとめて記事にしてみました。
その中のいくつかをひたすら紹介していく内容です。

(※抽出元が偏ってるので予めご了承ください)
(※引用ページは日本語版は文庫本に、英語はBallantine Books版のペーパーバックに準拠)


■Be fond of ~

・「そりゃよかった……なぜって、わたしは馳夫さんがとても好きになったからです。そうですね、好きって言葉はぴったりしませんね。わたしにとって大事な人ということです。」(フロド、『旅の仲間・下1』,p13)

原文:’I am glad,’ said Frodo. ‘For I have become very fond of Strider. Well, fond is not the right word. I mean he is dear to me; (FotR,p247)


 「数々の出会い」のあたり、裂け谷で目覚めたフロドがガンダルフと話しているシーンの台詞。最初の不信感が解消されて、しっかり頼って信頼してる感じが伺えますね!
 ここで「好き」と訳される“be fond of~”は辞書だと【愛する、好む、愛情を抱く、愛着がある】等のニュアンスなので、「なつく」とかそういう雰囲気もあるかなと思います。


 こちらのリンク(http://eitangotsukaiwake.suntomi.com/index.php?like%2C%20be%20fond%20of%2C%20love)によると「likeが一時的な好みを指すのに対し、be fond of は継続的に好きだという状態」とあるので、度合いはlikeより上だとか。


他にも出てくるbe fond of はこちら↓


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・グローインはフロドに目をやってにっこりしました「あなたはずいぶんビルボがお好きだったんでしょうな?」(グローイン、『旅の仲間・下1』、p35)

Gloin looked at Frodo and smiled. ‘You were very fond of Bilbo were you not ?’(FotR,p257)


・「にきびっ面はお袋さん(注:ロベリア)のこと好きだったでな。ほかにはだれ1人好く者のいなかったあのばあさまをよ。」(長男のトム・コトン、『王の帰還・下』p289)

‘… that Lobelia, and he was fond of her, if no one else was.’ (RotK,p318)

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Kindle版でも単語検索かけましたが、結構ホビット周辺で出てくる語彙のような印象を受けます。口語的で素朴な言い回しなのかな?と、心なしかほっこりしますね。



■Love

・「あの方々は殿から離れたくないばかりについておいでになるのです――殿を愛していらっしゃるからこそです」(エオウィン、『王の帰還・上』105)

原文:They go only because they wold not be parted from thee ――because they love thee.’(RotK,p48)


映画だと”Because they love you(貴方がすきだから)”というエオウィンの台詞になってる部分。主語が省略されてるせいで「私は貴方が好き」と誤解されがちですが、映画の英語でも原作でも主語は「殿についておいでになる方々(=レゴギムとか)」を指してるんですねー。


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「それから彼に対する愛情からもだね。」と、レゴラスがいいました。「彼を知るようになれば誰でもそれぞれのやり方に従って彼を愛するようになるのだから。」(『王の帰還・上』p319)

原文:’And by the love of him also,’ said Legolas. ‘For all those who come to know him come to love him after his own fasion, (RotK, p155)


言いたいことは全部レゴラスが言ってくれた。上記のエオウィンの台詞を踏まえると、こう、「それな・・・・・!!」ってなる部分。このもうちょっと後にも「そして白の木の王への愛のために(p328) ” For the love of the Lord of the White Tree.” (RotK, p159)」ってのがあります。

ていうかやっぱアラゴルンはさ、人たらしだよね。


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・エオメルは答えました。「あなたが丘原の緑の草の中からわたしの前に現れたあの日以来、わたしはあなたが好きでした。そしてこの親愛の念の弱まることはないでしょう」(エオメル「王の帰還・下」p183)

原文:’Since day when you rose before me out of the green grass of the downs I have loved you, and that love shall not fail’ (RotK, p267-268)


エオウィンの台詞を踏まえると、尊いローハン勢ポイント。訳文で「親愛」ってニュアンスが足されてる事例でもあります。なんというかここで素直に「好き!!」って言えるエオメルの真っすぐさと言うか素直さ、大変好ましいです。あと眩しい。


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・「それにあなたはエルフの言葉でさえ、表わすことのできぬほど美しいお方だと思う。そしてわたしはあなたを愛しているのです」(ファラミア『王の帰還・下』p171)

原文: ‘…And you are a lady beautiful, I deem, beyond even the words of the Elven-tougue to tell. And I love you.’ (RotK, p262)


言わずと知れた(?)ファラミアの告白シーンですね。執政夫婦末長く爆発しろ。ちなみにここの台詞もっと長くて、出てくる愛情系語彙は全部loveです。前述したエオメルの台詞では現在完了形なのでちょっと文そのものが長めな印象ですが、ここのファラミアの「I love you」長台詞の中に光る短文が清々しいです。



でも簡潔で素朴なI love you はもうひとつあるんです。最後にこちらを紹介しておきます。


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・「おらは旦那が好きだ。旦那はこうなんだ。それに時々、どういうわけでか光が透けるみたいだ。だがどっちだろうと、おらは旦那が好きだよ。」(「二つの塔・下 p128」)

原文: ‘I love him. He’s like that, and sometimes it shines through, somehow. But I live him, whether or no.’ (TTT, p291)


サムが眠っているフロドを見ながら1人呟くシーン。指輪の重荷と旅の心労で、どこかフロドの存在が遠くなりつつあるあたりですが、決意を新たにするように、自分に言い聞かせるように、「おらは旦那が好きだ」と言うんですね。泣けない・・・・???

ちなみに同じloveでも「好き」と訳されたり「愛する」と訳されたり、状況や相手によってまちまちですが、このシーンにあえてニュアンスを足すなら「大好き」という感じでしょうか。ずっとずっと傍で支えて、旦那そのものを大好きだからこそ、指輪の影響でボロボロになっても、弱っても、冷たくあたられても、「指輪の重荷は背負えなくても、フロド様なら背負えます!」のあそこに繋がるんじゃないかな~としみじみ思います。



さて、(多少抽出が偏っていますが)いかがでしたでしょうか?
今回は「人→人」への好意に注目したのですが、他にも国や故郷に対して、食べ物に対して、キノコやパイプ草に対して、『指輪物語』にはたくさんたくさんlikeやloveやfond of が出てきます。
日本語訳では全部「好き」だったりもするけれど、原文でのちょっとしたニュアンスの違いに注目してみるのも面白いのではないでしょうか?


※この記事は過去に参加したTolkien Writing Dayの際に書いたものを自ブログより転載したものです。
http://bagend.me/writing-day/

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