胡乱SF小説「三体Ⅲ」を読み終えた 他、スーパーメトロイドの話(雑記)
三体Ⅲ 死神永生 上下巻を読み終わった。一巻目の三体を読んだのが2020年5月、三体Ⅱが2021年7月だったので、読了に足掛け3年弱かかったことになる。とても面白く興味深い作品だった。以下、特にネタバレを気にせずに書いていく。
三体と対象的なSF作品としては、やはりプロジェクトヘイルメアリーが真っ先に浮かぶ。あちらはザ・ハリウッド映画的で、E.Tに匹敵するエンタメ超特化な異星文化コニュニケーションなのに対して、三体は最後の最後まで「黒暗森林」が根底にあったところが非常に印象深い。文化と距離によって大きく隔てられた2つの宇宙文明はお互いに理解することも信用することもできないという、徹底的にリアリストな思想には痺れた。「何だかんだ言って最終的には三体星人が爆発四散してハッピーエンドなんでしょ?」という結末は途中何度も裏切られ、絶望の縁に立たされながら持ち前の生き汚さと悪運で生き延びる人類に本当にどうしようもねえなと思わずにはいられない。
大衆だけではない。たまたまアンラッキーくじを引いたばかりにワンオペで人類の救世主を強いられる主人公たち、憧れの彼女に惑星をプレゼントするという人類史上最強のイキ告をしたせいで脳みそひとつで宇宙に打ち上げられる羽目になった陰キャ男子など、奇妙を通り越して胡乱な運命によってその人生を狂わされた作中人物には思わず同情してしまう。そして何より三体星人だ。人類の前には一切姿を見せず、全権大使兼殺人ドロイドであるマシーナリー智子(何なんだよこいつ……)を遣わした彼らは、登場から数えきれないほど人類を振り回してきたが、どこか憎めないところがある。
三体は傑作であるが、二重三重にメタファーが仕組まれた創作おとぎ話が示唆するように、「一体何を読者に伝えたかったのか」というメッセージ性を汲み取ろうとするとたちまちインターネット・答え合わせの糸に絡み取られてしまうだろう。なので優れたSF小説というより極めて胡乱なトンチキSFとして読んだほうがいい。でなければVR三体オンラインにスライスチーズ大型船切断、水星バカデカ穴切削、地球防衛軍20分全滅、オーストラリア人類蟲毒化計画、太陽系二次元化カードなどをシラフで受け止める羽目になる。これはかなりヤバい。オバマ元大統領も終盤の方はゲラゲラ笑っていたかドン引きしていたことだろう。惜しむべきはあまりの「重さ」故に再読するのに気が進まないところか。
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ニンテンドーSwitchオンラインで配信されていたスーパーメトロイドをクリアした。初見でプレイしたのでクリアタイムは5時間30分、アイテム収集率は66%。30年近く前(1994年発売!?)に世に出たゲームとは思えないくらい完成度が高かった。
メトロイドシリーズはゼロミッション、フュージョン、そしてドレッドを今まで遊んできたのだが、既にスーパーメトロイドの時点で全ての基礎が完成されており、続編をやろうにも「これ以上何をやるのか」問題に開発サイドが苦しめられていたのは想像に難くない。そりゃドレッドの開発が難航するわけだ。よくよく考えると元からタイムアタック用のショートカットが考慮されたマップであることも割と正気ではない。そこまでやって見れるのが脱衣サムスだけなのでオタク・スピリットが凄まじいわこれ。「メトロイドヴァニアもの」のゴッドファーザーの片鱗を見た。
(終わりです)