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ライディング・ホッパー チャプター2 #2
ライディング・ホッパー 総合目次
さて、それじゃあ何から話そうかしら。ストリートの話から?あっそう。別にいいけど。
東京の、ほら、昔自衛隊と企業がドンパチやり合ってたって話あるじゃない。あの主戦場になった辺りがそう。昔は高層ビルとかが立ってたらしいんだけど、あんまりに激戦だったから今じゃ廃墟のまま放置されてる。で、それが延々と続いてるからストリートってこと。言っとくけどあの辺り一帯の俗称だから、別に一直線の道じゃないわよ。そもそもみーんな不整地だし。
あの周辺は未だに手つかずのままで、使えそうなガラクタも転がってるから、ジャンク屋同士が縄張り争いを繰り広げてる。ギャングみたいな奴らもいるから法も秩序もあったもんじゃない。ぶっちゃけ、あんな長生きできなさそうな場所、みんな出て行きたいのよ。だからみんな機械いじりを覚えて自前のライディングギアを組み上げる。ジャンク屋として独立しようとする。そう、ストリートレースに出場するためよ。
はっきり言って、あんなレースを思いついたやつはバカだと思うしブン殴ってやりたい気分。何百人もの参加者が東京ー横浜間を駆け抜けるサバイバルレース?テレビや飛行船から見てる側からしたら面白いでしょうね。こっちは持てるもの全部出し尽くして挑んでるっていうのに。とにかく、レースの上位者になれば企業からスカウトやオファーが来る。そうすればあんなゴミ山暮らしもおさらばよ。
あー、はいはい。ワタルの話でしょ。分かってるわよ。
あいつはある日ふらりとストリートに現れたの。ストリートに住んでる人間には2種類いる。生まれながらのゴミ山暮らしか、他所にいられなくなって流れ着いてきた人間。ワタルは後者。向こうも身の上話をしたがらないしそれくらいしか知らないわよ。あたしたちにはどうでもいいこと。それより大事なのがあいつがプロ級のメカニックだったってことよ。
パーツの修理やギアの調整はもちろん、ジャンク品から新しい部品を作り出すこともあったし、良くも悪くも目立ってたわ。で、ギャングに絡まれてたところを助けてあげたのがあたしとトウヤ。で、それがきっかけでつるむようになったのよ。一からライディングギアを組み上げるのは一人じゃ限界があるからギブ&テイクでお互いに協力してた。あたしのフェアリーテイルもトウヤの悪趣味なギアもワタルがいなければ完成しなかったわ。
そういえばワタルはなんかアモウにご執心だったみたいね。アライランスを実質的に取り仕切ってるとか噂の。まー、このご時世に人いい性格で、育ちは良さそうなお坊ちゃんだと思うけどねあの子は。あの知識も親や環境の賜物じゃないかしら。もしかしたら高名な科学者か技術者の家系だったりしてね。
……ワタルの苗字?なんだったっけ…ああ、篠嶋よ。篠嶋ワタル。それがどうかしたの?
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