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Transfer

2012年にリリースされたlivetuneの『Transfer』のMVが大好きだ。ピンク色の髪の女の子が走り、飛び上がり、そして着地するアニメーションが延々とループする構成で、各ループごとに背景美術ががらりと変わる斬新なデザインだ。なんてことのない登校路から罠だらけの城、コミックのフキダシにサイバー空間など、MVは水彩画やCG、Flashっぽいのまで持ち出しカオスの極みであり、楽曲の方はというとlivetune特有のド直球のハウスポップに中島愛の癖のない素晴らしい歌声がベストマッチで何回リピートしても飽きない。この曲が収録されているlivetuneのアルバム『と』は他にもセカオワやゴールデンボンバーのボーカルが参加し、バンプの曲のミクカバーまで収録されたクラブサウンドとポップの闇鍋のような仕上がりなので本当にオススメ。ジャケットアートワークも最高にキマッてる。

この『と』っていうのが楽曲をボーカリストと作り上げたという「with」という意味と、メジャーへ行っても貪欲に切り込んでいくぜっていう、「歩」がひっくり返って「と金」になる意味とダブルミーニングになってるのスゲーカッコいいって発売してからずっと言ってるわけですけど、このアルバムがリリースされたころのボカロ音楽シーンはマイナーとかメジャーとかインディーズとか商業とか同人とかネットレーベルとかライブとかメディアミックスとかあらゆる分野の境界があやふやで爆発する寸前の火薬庫みたいな予測不能さ、緊張感があったことが印象的で、そんな中で米津玄師がメジャーデビューしたり、wowakaがヒトリエを結成したり、冨田勲が「イーハトーヴ交響曲」を発表したり、このアルバムがリリースされたりしたりしてボーカロイドがコンテンツの枠を超えて何だかよく分からない現象と化したことが記憶に残っている。

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