何が嫌いかで自分を語れよ「ガールズバンドクライ」
ロックという言葉が嫌いだ。
正確に言うと「ロックだねえ~」とか「ロックな生き様」とか「ロックすぎる(笑)」みたいな、形容表現としてロックという言葉が使われるのが嫌いだ。
別に何か高尚な理由があるわけではない。しゃらくさいとか気に入らないとかそういうレベルの話だ。だいたい、そういう言葉が聞こえてくるのはテレビのバラエティ番組だとか、あるいはネットで何かを揶揄するときのやっすいコメントで見るのが主で、おれはそんなことを口走るやつらを心底バカにしていた。ロックと言われているやつのこともバカにしていたしおれは絶対に何かを評価するときにロックとかいうワードは絶対使わないと決心していた。
だがついに、おれもそんな低俗な連中の仲間入りをすることになってしまった。「ロックやる以外に生きる望みがない」「ロックしか取り柄がない」「デッドオアロック」「魂の鋳型がロックの形をしている」――本当にカスみたいな語彙だ。書いていて自分で嫌になる。だがおれが今心底ムカついているのはおれ自身に対してではない。おれの生活の大半を占めるようになったアニメ「ガールズバンドクライ」に対してだ。
ガールズバンドクライとは
「17歳、3月、私は東京に来た。負けたくないから。間違ってないから」
少女には夢も希望もなかった。高校を中退し、家族とも決別した。自分は負けてない。間違ってない。そう証明するために、たった一人で川崎の地に降り立った。命の次に大切な音楽を胸に抱えて。
「ガールズバンドクライ」はバンドアニメだ。メンバー全員が中退で、メンバー全員がどうしようもなく、メンバー全員が生きづらさを抱えている。中退しているのでそこに青春学園もののきらびやかさもなく、ドン詰まり一歩手前で踏んじばってロックをやる、感情剥き出しのバンドアニメだ。
「そんなこと言ってアニメは売れてナンボだし、結局やるのは商業・産業ロックなんでしょ?」とか言い出すおれに対して、おれは舌打ちする。ああそうだよ。劇中バンド「トゲアリトゲナシ」が紡ぐ楽曲はどれもボカロみてえに早口で陰気で歌いにくくて仕方がない。青臭くて厨二臭がする。
しかもこのアニメはCGアニメだ。CGでバンドアニメ?そんなの上手く行くわけないだろ。第一報を観た時もぼっちざろっくの後追い企画だと信じて疑わなかった。実際はコロナ前から企画が動いていてオーディションやらスカウトやらでえらい大変な目にあったようだが、楽器を演奏できる人間を声優に仕立て上げたらしいのでそりゃ大変に決まってる。何を考えてんだ。
ここまで書いてきてだんだんと苛ついてきた。そもそもおれはクソゲボ長い感想文もスクショとリンクだらけの記事も嫌いだ。だから動画を一本貼って終わりにする。本当なら一話からアニメ全部観た上で視聴するべきものだが、このたった二分弱のパートだけでこの記事でおれが積み上げてきた「嫌い」を全部吹いて飛ばすくらい、めちゃくちゃ頭をぶん殴られたので本当に腹立たしい。嫌いということは目が離せないということだ。まるでおれが馬鹿みたいだ。むしゃくしゃする。誰かに当たり散らしたいがここにはおれしかいないのでおれ自身に八つ当たりするしかない。
この記事を読んでるやつも動画を観終わったらさっさと帰って寝るか、舌打ちしながらガールズバンドクライを1話から再生しろ。そしておれの目の前に二度と姿を見せるな。
(終わりだ、何もかも)