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君は岡本太郎式特撮活劇『TAROMAN』を知っているか
岡本太郎が世に送った唯一無二の〈作品〉群、そして心を鼓舞する〈ことば〉たち。
両者ががっぷりと組み合い、超感覚的に岡本太郎の世界へと誘います。
10話それぞれのタイトルは「芸術は、爆発だ!」「真剣に、命がけで遊べ」など太郎のことば。それをテーマに「なんだ、これは!」という特撮映像が展開します。
主役は〈TAROMAN〉(タローマン)。正義の味方ではなく、シュールででたらめなやりとりで奇獣と戦います。対峙する奇獣たちは、〈疾走する眼〉〈駄々っ子〉など太郎の作品を造形化。
番組後半は、山口一郎さん(サカナクション)が登場。各回の〈作品〉と〈ことば〉について、太郎への愛を込めて語ります。
タローマンとは
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岡本太郎式特撮活劇『TAROMAN(タローマン)』とは、強烈なインパクトを残したものの、そのあまりにアバンギャルドな作風のためか後続作品が作られることなく、半世紀が経過した現在においても芸術家岡本太郎氏の独創的な作品群と鮮烈なメッセージとともに語り継がれる、70年代に一世を風靡した特撮番組……という体で制作されたバリッバリの令和4年コンテンツです。「展覧会 岡本太郎」にかこつけたTL上の集団幻覚ではなく、正真正銘の特撮番組としてNHKで放送されています。何それ?
番組後半ではサカナクションのボーカル山口一郎氏が自身を再放送世代と称してタローマンの存在しない思い出を語るパートが始まり、「タローマンの主題歌レコード」「タローマンのソフビ人形」「タローマンかるた」など存在しないグッズを自慢げに持ち出す一方で、岡本太郎の遺した言葉から影響を受けた作品論や着想など、割とマジな話を織り交ぜてくるのでタチが悪い。現実と胡乱をごちゃまぜにするな!
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タローマン、そのべらぼうな番組について
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「若い太陽の塔」の顔を模した頭部に「太陽の塔」を思わせる白銀のスーツ、胸と両手の掌には岡本太郎氏のトレードマークである眼が描かれ、細見の体と長い手足をでたらめにくねらせる様はヒーローというよりは怪人のような出で立ち。公式サイトをよく読んでみると「正義の味方ではなく、シュールででたらめなやりとりで奇獣と戦います」とある。正義の味方じゃないんだ……。
街の平和を脅かす奇獣の前に忽然と現れると、でたらめな振る舞いで周囲を困惑させた後、岡本太郎氏ご本人の「ゲイジュツハ、バクハツダ!」という超自然的なシャウトとともに繰り出される必殺技によって奇獣を七色に発光させたのちに爆発四散せしめます。
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作風は70年代特撮番組を徹底的に踏襲しており、4:3の画面比率にアナログ処理した画風、実相寺アングルを思わせる奥行きや影を強調したカメラワーク、往年の温かみが宿る地球防衛軍の戦闘機やジオラマ、昭和特撮特有の癖のある口調を完璧にエミュレートしている女性隊員、意味ありげに登場したと思ったらしれっと地球防衛軍入りしている風来坊や特に何の説明もなく防衛軍の戦闘機に搭乗している子役など、ウルトラシリーズ慣れしていると既視感満載の配役もあってかなりニューロンに悪い。それでいて本家本元の円谷プロも取材協力しているらしい。それで……それなのに、あの内容なの……?
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そもそも特撮ヒーローという大衆娯楽と独創的な芸術作品を組み合わせるなんて、面白おかしく弄ったふざけた番組だと思われても仕方がないところがあるけど「いざでたらめなことをやろうとしても どこかで見たものになってしまう。それはタローマンも同じだからだ!」という言葉通り、作り手側が自覚的にやっているので間違いなく確信犯でしょう。命知らずが過ぎる。
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タローマンは岡本太郎本人ではなく、岡本太郎の思想でもってでたらめな行動をする芸術の巨人でしかないため、作中でタローマンが「怪獣が現れて街を脅かすも、巨大ヒーローが怪獣をやっつける」という特撮ヒーローのお約束と、独創性を何より尊ぶ岡本太郎精神の間で自己矛盾を感じ、苦悩するシーンもあったりする。
そのことが描かれた4話は特に凄まじい出来で、奇獣を倒したくないがために自傷行為に走ったり、唐突に現れ助けに来たタローマン2号という自己模倣存在の手を払いのけゲイジュツハ、バクハツダ!する様はあまりにも挑戦的で本当にすごい。やりたい放題かよ。
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未来へ
この記事の執筆時点で5話まで公開されているタローマン。全10話構成ということで、後半も岡本太郎作品を元にした怪獣、もとい奇獣が現れるに違いないだろう。果たしてタローマンはどうやって奇獣に立ち向かうのか、そして自己模倣を何より許せない彼が自身のモチーフとなっている太陽の塔と相対する時、いったい何が起きるのか。予測は不可能で想像は尽きることはない。
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インターネット大喜利のような狂気の発想で生み出されたタローマンは、必ずしも岡本太郎の精神を体現した存在とは言い切れないかもしれない。しかしその真面目にふざけている姿勢は、岡本太郎の遺した作品と言葉を現代に伝えるメッセンジャーとしてこの上なく適任であると思う。そのチャレンジングなNHKの試みに敬意を評して、「展覧会 岡本太郎」にも行ってみるつもりだ。
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(終わりです)
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