学校によっては、高校受験科目に小論文が含まれます。(出題例には、このようなものがあります。)ただ、普段の学習の中で、小論文を作成する機会はそれほどないでしょうし、どのように作文すればよいか、戸惑っている方は多いでしょう。小論文はどのように書けばよいのでしょうか?今日はいくつかの出題例を参考に、実際どのように小論文を作成していけばよいか一緒に考えてみましょう。
読み手を意識する
小論文は、読み手に伝わらなければ書いた意味がありません。小論文を書く上で、最も重要なポイントとして、書き手のことを知らない読み手が初めて読んだ場合でも理解できる言葉・表現を選ぶ必要があります。また、一般的な言葉のみで説明できない場合は、用語の定義をする必要があります。
(出題例1)中学校生活において最も大切にしてきたこと【800字 2016 青山学院】
解答例1では、”テノール”、”ファルセット”などの音楽用語が、音楽になじみのない読み手にとってはわかりづらい可能性があります。このような業界用語については、一般的な表現に置き換えるか、わかりやすい説明を加えた方が、読み手に伝わりやすいです。これが用語の定義です。
また、これらの解答例では、コーラス部に所属し、合唱コンクールに向けた練習活動が非常に淡々としたものに感じられるかもしれません。男性のシンガーにとってはショッキングな声変わりの経験についても、文章の中ではさらりと簡単に説明されています。用語の定義は、次のように、単なる言葉の説明だけではなく、言葉の背景に含まれる、書き手側の経験や心情、思いを表すこともできます。
いかがでしょう。読み手には、中学時代に書き手が経験したこと、つらかった中で必死に努力したこと、コンクールでうまくいって嬉しかったこと、など、言葉の背景にある経験や心情が、うまく伝わってきますよね。小論文は小説ではありませんが、読み手を書き手の思い描いている世界へ引き込むことが、まず重要です。
解答例3の場合、自身の経験談がかなり充実している一方、本論の” 中学校生活において最も大切にしてきたこと”が薄まりつつあるので、心配な場合は、解答例4のように、結論、言いたいことを冒頭に置く方がよいかもしれません。
【重要ポイント】
① 読み手にわかる表現
② 書き手の感情が伝わる説明
③ 読み手に伝わりやすい結論の表現
異なる小論文課題に同じ経験談を使う
上の解答例では、自分自身の具体的な経験談をもとにした小論文の例を示しましたが、きちんと読み手にわかる表現をしていれば、読み手に伝わりやすいですし、説得力のある文章を書くことができます。あなた自身の実際の経験談はとても貴重なので、出題例1や他の出題例を参考に、経験談をまとめておくとよいかもしれません。
また経験談をまとめておくと、異なる小論文課題に対しても応用させることができます。例えば、
(出題例2) 中学校で得たことを、高校生活でどういかすか 【600字 2014 工学院大附属】
このように、全く異なる課題でも、十分同じ経験談を使うことが可能です。経験談は、
【起】背景、自分の置かれていた状況
【承】その状況の中で行っていた活動
【転】ショッキングな出来事、その活動に悪影響が出てしまいそうな事件
【結】それを乗り越えた方法、得られたこと
に分けて頭の整理をしておくと、上のようにいろんなケースで応用できます。
【重要ポイント】
【起】【承】【転】【結】でエピソードを整理
時事問題に関係する小論文
小論文課題の中には、世の中の出来事や、ニュースに関係して出題されるものもあります。この場合は、自身の経験談をフルで使い切ることは難しいかと思います。例えば、次のような例があります。
(出題例3) 昨年 11 月、アメリカの次期大統領選挙で大接戦を演じたヒラリー・クリントン候補は、開票が行われた翌日のスピーチで事実上敗北を認めた。次に挙げるのは、そのスピーチの中でヒラリー候補が述べた言葉の日本語訳である。これを読んで、あなたの考えをまとめなさい。【600字、2017 慶應女子】
(出題例4) グローバル化の中であなたが今取り組んでいることや今後力を入れたいことは?【600字、2014 実践学園】
(出題例5) 選挙権が与えられることによって、あなたは何を期待されているのでしょうか。【600字、2016 東京純心女子】
いずれの例も、出題時に背景知識を少しでも持っていると、論説の展開を深めやすくなります。以下のような点について知識があり、さらにあなた自身の考えをもっていると、話の展開が楽になります。
(出題例3の場合):ヒラリーとトランプ対立候補の主張の違い、2016米国大統領選挙が着目された理由
(出題例4の場合):グローバル化とインターナショナルの違い、グローバル化で日本が置かれている状況
(出題例5の場合):選挙権はこれまでの20歳以上から、2015年より18歳以上に変更
普段から、新聞などニュースに目を通す癖をつけましょう。最近は、読売中高生新聞のような中学生向けの新聞もわかりやすくまとまっており、普通の新聞(約4000円/月)よりも安いので、知識を入れるために購入するのもよいかもしれません。
小論文は、出題テーマの種類も多く、練習が必要なので、また別の機会にも対策方法について記事に取り上げていきたいと思います。