62円の値打ちな『my life』
僕がミスチルを語る上で、どうしても『my life』をはずせないのは、やっぱりその人間臭さというか、誰の心にも潜んでいる内気さ・なよなよしさとかが、ギュッと詰まっているからだ。
のっけから、
62円の値打ちしかないの?
僕のラブレター読んだのなら
返事くらいくれてもいいのに
-『my life』より
という、僻み根性丸出しなフレーズ。
でも、すごくあるあるなことで、わかってしまう自分もいる。
僕の世代で言えば携帯メールだから、もはや0.2円のパケット代とかの世界。
0.2円とせいぜい2・3分の時間の消費なのに、どうして返信をくれないんだろう、と昔の僕も悩んでいた。
普段どんなにヤンチャしている友人でも、「たった少しのことなのに」とやっぱりボヤく。誰だって寂しいもんだ。
何度も何度も、センター問い合わせを押しては、「新着メッセージはありません」という無機質な返答にOKと返すばかり。
つよがっていても、気にかけられていないのかも、という幻想はやはり心に堪えるのだ。
暮れゆく街に切なさが募れば
-『my life』より
そうして夕暮れ時にため息なんかついて、友人とボヤキ合う。人付き合いは大変だよな、なんつって。
公園のベンチに腰掛けて、足元に意味のない記号を書いては消して、あからさまなぐらいのため息をつく。
友人は言う。
テレビゲームに胸の内を明かせば
-『my life』より
「これって、主人公とヒロインの名前を、自分と好きな子の名前にするってことなのかな」
本当のところは、桜井さんしかわからない。
でも僕もそんな気がして、「みんな一緒なんだね」とやっぱりため息をつきながら、考える人のポーズをとる。
少し経って、徐ろにどちらかが立ち上がる。
サッカー禁止の公園にも関わらず、僕らはサッカーボールを蹴飛ばしはじめるのだ。
「まあ、なんとかなるか」
そうやって、大人になっていく。
いいことばっかあるわけないよ
それでこそmy life
-『my life』より
そうして僕らは、肩をたたきあう。
諦めにも似た、前向きさを学びながら。
ため息をつきながらも、前に進んでいくという大人びた感情がふわり。そんな日々があったなあと、いつ聞いても思い出させてくれるこの歌は、形は違うけど応援歌かなあと思うのです。