スルーは、ダメ。ゼッタイ。 〜カルべ・ディエムな生き方〜
あした、社長に退職届をだす。
秋だ。別れの季節が今年もやってきた。
「三十代前半までは、自分が面倒だと思う人ととにかく一緒に仕事をしろ。それが十年後の自分の幅を広げるぞ」
と、前職の上司に言われた。
たしか、日本橋近くの長崎ちゃんぽんのカウンターでのことだった。
ただでさえ夏の暑い日に熱々のちゃんぽん。
加えて、心臓が変な声をあげそうなこの暑苦しい言葉に、僕は素直にうなずくことができなかった。
何を隠そう、僕が一番面倒だと思っていたのは、隣でちゃんぽんを啜っているその上司