アバターは性自認・性的指向を超越しうるか
俺は「今のところノー」であると思っています。
異性アバターを被ったからといって即座に当人の性自認や性的指向/嗜好が変化するわけではないでしょうし、例えば「女性アバターを被っている異性愛者男性」が「異性愛者男性としての欲求を以て」「他の女性アバターを被っている人の外見や言動を好いている」ようなケースを一概に「ヘテロ的な恋愛感情/性欲ではない」とするのは早計ではないかと思えるのです。
人によりますが異性アバターの選択(自作アバターの場合は制作)の過程そのものに「理想的な異性像になりたい」という当人の性的指向/嗜好が強く打ち出されているであろうことも否定できません(俺を見ろ!)。
アバターチャットによる疑似恋愛という現象それ自体を見るならMMORPG内でのそれやなりきりチャットなどといった古き良きインターネット文化を受け継ぐものとして捉えることも可能であり、すべてにおいて革新的であるかというと疑問符が浮かぶ点もなくはないです。
それでも、「性の超越」ほど大それたものではなくとも異性アバターを好んで身につけている他者を時に内面・人格まで踏み込んで否定するような流れに終止符が打たれる時はいつか来てほしいと願っています。
「別に全人類アバター化しなくてもよくね?」
「自分がなりたい姿のアバターを選んで身につける」こと自体はひとつの文化であったり、あるいは顔出しでは行いにくい自己表現の手段としてより広まっていってほしい・その可能性があると俺は思っていますが、VTuber・VR関係の話題においてしばしば理想として語られる「すべての人々がアバターを身につけてバーチャル世界に進出する社会の到来」まではまだ早すぎるようにも感じています。
それはVR機器などの導入コストであったり、あるいは将来的なコミュニティの拡大に伴う倫理・道徳面の整備や文化的衝突の解決といった部分のコストもあるでしょうが、俺の率直な感情としては「まずそもそも『全人類がアバターを身につけて生活する』ことが本当に理想的なの?別にそうならなくてもよくね?」という部分が大きいです。
実際には「アバターを身につけなくても問題のない外見・経歴などのある人々は今まで通り現実の自分自身の姿で生活していくだろうけど、そうでない人もアバターを身につけた状態で何かしらの社会参加ができるようになるのが理想的だよね」というのをTwitterウケするよう、やや誇張気味に表現しているだけなのかもしれません(俺はエスパーではないので「全人類アバター化」に近い主張をされている方々自身による言及がなされるまで正解はわかりませんが)。俺個人としてもそうした「生きづらい人々が生きやすくなる手段」としてのアバター社会の到来には期待しています。
ですが顔出しで行いにくい自己表現の手段としてのバーチャル化を選択した俺としては、「仮に全人類アバター化なるものが達成された社会ではアバターが第二の『顔』のようなものになってしまい、俺のような存在はかえって今よりも生きづらくなってしまうのではないか?」という危惧も抱かざるを得ないのです。
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