『吉田』
全裸のままベランダに突きだし、素早く鍵を閉めた。さっきまで“吉田”だったそいつはガラス戸を叩きながら、なおも吉田そっくりな声で「信じてくれ! 俺は吉田だ!」と叫んでいる。迂闊だった。だが、もう騙されない。
――と、ベランダがにわかに静かになる。背筋に冷たいものが走った。

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。