『押入れ』
締切から逃れるようにして訪れた旅館だった。他は満室だからと通されたのは純和風の品のいい部屋。一通りの説明を受け、ここなら落ち着いて執筆できそうだと気を良くしていると、最後に仲居が「あの、そちらの押入れだけは絶対に使わないでくださいね」と告げ、そそくさと退散していった。
締切から逃れるようにして訪れた旅館だった。他は満室だからと通されたのは純和風の品のいい部屋。一通りの説明を受け、ここなら落ち着いて執筆できそうだと気を良くしていると、最後に仲居が「あの、そちらの押入れだけは絶対に使わないでくださいね」と告げ、そそくさと退散していった。
水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。