映画『モアナと伝説の海』
実はあまり期待しないで観たんだけど、これはよかったわあw
僕が元々『ライオンキング』系(といっても劇団四季のね (❀ฺ´艸`))大好きだからというのもあるけど、そうでなくても実によくできてると思う。
話は骨太で単純な骨格しかない――(大昔、人間と神のあいのこみたいなマウイって野郎が生命の神様の「心」を盗んじゃって、世界が力を失くして徐々に闇に染まってきちゃったから海に選ばれたヒロインと心を返しにいく話)――なんだけれど、それじゃ骨格過ぎて伝わらないよねw
マウイは人間に火をあげたり、島を隆起させたて土地を広げたり、色々して、もてはやされて、英雄になったんだけど、根っこは捨てごで寂しいやつだから調子こいちゃって、自分の存在意義のためにも英雄であり続けたくて、命を増やす根源である神様の「心」まで盗んじゃったのね。それは成功するんだけど、そこでいきなり出てきた別の溶岩の神様にそれを狙われて攻撃されて、心と、大事な武器である何にでも変身する能力をくれる神の釣り針と一緒に海の底に落としちゃうのね。
で、それからというもの、あらゆる世界の生命がどんどん翳ってきちゃって、島々に魚とかもいなくなって、ついにヒロインがいる島にも生命が翳ってくる息吹が忍び寄ってきて、海を愛してやまないヒロインが立ち上がるわけ。
海に選ばれてるからすごく海が生き物みたいに味方してくれるんだけど、それも楽しい(ご都合主義をぎりぎり感じさせない程度にね)。で、ひとりで(実際はニワトリと一緒に)旅に出て、やがて島に閉じ込められていたマウイと出会って、ともに「心」を生命の神様に返しにいって平和を取り戻す、っていう物語ねw
盗んだものを返しにいくっていうシンプルで骨太な物語を最後まで飽きさせずに魅せれるってすごいなあ。まあ、とにかく表情豊かに人間も景色も魅せてくれるし、歌もいいし、こういう自然に根差した物語って、歌とともに人間の本源的な根源的な、原始的な命の力を立ち上らせてくれるから元気になるんだよね。
まあ、映像の「遊び心」がやっぱりはんぱなくて予想以上のクオリティ。演出、カメラも最高峰だねえ。おばあちゃんマンタ?エイ?ふつくしいなあ。あと、にわとりとか子ブタとか、小動物の演出がまた小気味よくて、こういうのホントうまいようなあ。ヤシの実の海賊とか?w
でも、実は個人的には最初の30分くらいはちょっとだけ退屈したかな(笑)のびのびしたヒロインがなぜか物心ついたときから海に出たくて出たくて仕方ないんだけど、村おさの娘という宿命で出してもらえない、自由がない、でも出たい、ってところを繰り返し繰り返し描くからねw そこから旅立ってからは展開があるからぐいぐい魅せられちゃうんだくどもw
でも、その旅立つまでの葛藤を丁寧に描いておくことで現実を生きる我々と地続きにしてるわけで、必要な手続きではあるんだよね(祖先の血が色濃く受け継がれてるっていう伏線でもあるんだけれど)
前から何度も言ってると思うんだけど、お話って、どこでもいい国の、どこでもいい誰かが、どうでもいいことで苦しんでる、ってなったら駄目なのよ。どこでもよくない国の、どこの誰でもない人が、どうでもよくないことで苦しんでる、ってならないと駄目なの。そうなったら、これはもう、ヒロインの出来事が自分ごとになってるから、お話として成功しやすいのよね。
それが本当の意味で物語としての「リアリティ」といえるものになり、「本当らしさ」をまとえる物語になって人々を没入させることが可能なわけね。
これ簡単にいってるけど、架空の物語を描く時にはどうしても飛び越えなきゃいけない壁で、けっこうやっかいな壁だと思う。地続きにする方法はひとつじゃないけれど、わかってるお話のプロはそこをちゃんとおさえてると思う。
これが地続きにならない限り、多くの人間にとっては、単なるどうでもいい子のどうでもいい冒険物語で、絵空事になってしまって、没入して感情移入して味わってことにはならないのよね。
モアナではそこをしっかり描くことが必要な手続きだったってことねw だってみんな似たような経験のひとつやふたつあるでしょう。親に縛られて自由にできないうっ屈みたいなものね。たとえば、田舎から東京にでるのを反対された人とかドンピシャだろうしw
そこをきっちりやることで自然に「この子はもうひとりのあたしだ」的なヒロイン視点、もしくは味方視点に没入させることができたと思うのよ。
ここでうまく客の心を捉まえられたらもうこっちのもんでw あとは残りのコンテンツを自分ごとのようにワクワク楽しんでもらって、感動のクライマックスまで時を忘れてもらえるw (まあ、そこからが豊かじゃなかったらせっかく捉まえても逆効果になりかねないがw)
いやあ、それにしても映像よかったなあ。豊かで美しかった。これは大人も子供も楽しめると思う。一見の価値ありでした。ディズニーさん、いい物語をありがとう。あ、蛇足でいうと、溶岩の神様の正体がすごく腑に落ちていいですw メインの歌も自然の海のエネルギーを孕んでいてのびのびしてていい。たしか沖縄の子だったかなあ。新人さんだけど、みずみずしくてはまってたなあ。他の楽曲も豊かで楽しく聞いてられるものでした。まだ観てないかた、お奨めです♪