『ひなたのしずくという音楽ユニット』
一年前の金曜の夜、お茶の水で「ひなたのしずく」――(当時は「ほたるのしずく」だったが名称変更の経緯は大人の事情で省略する)――が出演するライブへ行った。
歌ってる方って本当にたくさんいらっしゃって、まあ、アイドルやらジャズやら全部含めちゃうと、一億総活躍じゃないけど、かなりわんさといるわけですよね。
で、いっちゃなんだけど、私は客なんで、同業者でもないんで、言えちゃうんだけど(笑)「歌」が歌えてる「本物」はかなり少ない印象ですね。最近見て回ったところだけでも、正直見てて痛くなってくる人たちがけっこう多かった。
シンガーを見にいってるのに「歌がうまい!」って心から思える人が本当に少なくて、更にいえば、うまいだけならカラオケでいいわけで、「うまさの向こう側」を持ってる「本物」は本当に少ないなあっと実感した今日この頃という案配。
その空間の空気を豊かでオンリーワンな自分だけの空気に変えれるって、お金を頂くアーティストの必須条件だと思っていて、それは舞台や小説など、その他のあらゆる表現ジャンルにも言えることだけど。
けして世界を押し付けるわけでもなく自然に、別世界・別次元にひたらせ、純粋な歌のうまみ、音のうまみ、声のうまみで一音一音おいしくいただける、それが心に沁みてしっかり感動できる――そんなステージをやれている、いわく「なんか持ってる」表現者って、やっぱり一握りなんだなってつくづく思った。
全体的に質が落ちているような印象を持ったわけだけど、まあでも、逆にそうでなければ、みんながみんな売れちゃって一億総アーティストで、音楽シーンも成立せず、収拾つかなくなっちゃうだろうけども。
「ひなたのしずく」のボーカル担当のひなたちゃんの歌はピュアで正直で嫌味がなくて、歌に「嘘」がないから、清廉で芳醇な歌のうまみがすーっと入ってくる。
これは彼女の人柄のなせる技なんだろうけど、聞いててやっぱり、引き込まれるし、現場の空気をかえて、その空間を支える力があるんだよね。
関係者だから身内びいきしてんじゃないの?って思われそうだけど(笑)、それは聴けばわかるから無問題。うまいものはうまいし、何かあるものはどうしようもなくあるから、あとは好みの問題かな。
彼女たちは、オリジナルの切なかったり、元気でたりする楽曲のほかに、昭和の名曲もカバーしていくスタイルだから、私なんかはドストライクなんですよね。
むかし椎名誠の世界観を「おもしろカナシズム」とかいって、面白いんだけどなんかちょっとどこかしんみり切ない、みたいに一言で評した言葉があったけど、「ひなたのしずく」というアーティストが持っているものを一言で表すとしたらなんだろう。
「ディープピュアリズム」
違うか(笑)ただ単にピュアなだけじゃなくて、胸の奥の根っこのほうからくるディープに沁み通る声を持ってるから、まあ、なんとなく言い当てているとは思う。
豆つぶみたいに小さい体から内圧の高い、ちょっぴり切なくも愛しい、笑いながら泣いてるようななんとも言えない「せつな清らかエネルギー」が立ち上るそんなステージでございます。
あの人柄と歌に嘘がないから愛されていくんだろうな。そして、あの「心」に会いたくなって、人はまた「ひなたのしずく」のライブに行くのだろう。
「ひなたのしずく」はポテンシャルも半端ない感があるので今の「ディープピュアリズム」からの「進化」が楽しみだ。いろいろ歌っていくだろうし、作っていくだろうし、広がっていくだろうし、深まっていくだろうだし、その「深化」をじっと見守りながら、今後とも育てていこうとぞ思う。