「水槽に浮かんだ脳」仮説
世界の実在や人間の認識に関する議論で必ず出て来る「水槽に浮かんだ脳」仮説
日常とか常識を余り疑わないで生きている方々には奇妙な説に見えるのかもしれませんが、哲学好きには魅力的な仮説です
私も哲学好きなので、この仮説には余り違和感がありません
いやむしろ、かなり実感をともなった感覚(世界観)かもしれない
いま私の周囲に広がっている世界(宇宙)や、私の周囲にいる人たち、ビッグバンに始まると言われているすべての宇宙や地球や人類の歴史は、すべて私の脳が創り出した夢(幻想)なのではないか?
もし私が死んだら、世界(宇宙)も時間も実在性を失って消滅し、すべては無に帰する
このような仮説は、過去においても唯心論的な哲学や宗教で唱えられたりしていた訳ですが、いま科学の最先端の理論物理学者などでも、この仮説に魅力を感じる人が増えていて、一般の人たちの間にも共感が広がっているようです
これとは少し違うけど、心理学者・岸田秀の「唯幻論」(ゆいげんろん)というのがあって、彼は世界はすべて幻想であると主張しています
岸田秀は高校生の頃から原書(ドイツ語)でフロイトに親しんで(のめりこんで)いたという、かなりの変人(天才肌)
彼の主著「ものぐさ精神分析」は、「唯幻論」で脚色されたフロイト哲学(精神分析)の入門書で、非常に読みやすいオススメです
私は若い頃にこの本に出会い、余りの面白さにグイグイ引き込まれ、正続2冊計800頁余りを、一晩徹夜で読み明かしたことがあります
この本は要するに
「この世はすべて幻想である」
「人間は本能の壊れた動物である」
と主張し、その立場から人間行動や世界の歴史を説明する
例えば高校生が必死に勉強していて、
「あの大学に合格できたら、きっと
素晴らしい人生(毎日)になるだろう」
と考える
しかし実際に合格して憧れの大学に入学すると、うれしくて舞い上がるのは、せいぜい1か月くらい
やがて現実の人生(毎日)が期待したほどのものでなかったことに気付き、中には幻滅して五月病に陥る人も出てくる
そして大学卒業が近づくと、
「あの会社に採用されたら、きっと
素晴らしい人生(毎日)になるだろう」
と考え、さらに
「あの人と結婚できたら・・・」
「課長になれたら・・・」
「役員になれたら・・・」
「自分の家が持てたら・・・」
でもそれはみんな夢(幻想)に過ぎず、夢が実現すれば、やがて必ず幻滅する
なんだか夢も希望も打ち砕くような悲観的な哲学ですが、これを完全に否定し切るのは難しい
俗に「悲観哲学」と言われているショウペンハウエルの考え方も、これに近いと言えそうです
もしかすると遺伝子(DNA)が、人間(個体)の行動力(繁殖力)を高めるために、人間の脳に「夢を持つ」という特殊な機能を持たせたのかもしれません
岸田秀さんは現在、1933年12月25日生まれの89歳
余り将来に夢を持たない方が、長生きできるのかもしれませんね
(^_^;)
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