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コミカライズで適応障害になるまで、そして現在

私は2023年5月〜2024年7月の約1年半の間、いわゆる「なろう小説」のコミカライズの連載準備をしてきました。

結論を先に話しますと、連載開始前に辞退し、1円たりとも金銭は発生しませんでした


伝えたいことが多く、まとまりがなくて読みづらいかと思いますがご了承ください。

⚠︎出版社や作品など特定できる情報は伏せています。
私の絵などから当時の関係者に見られるとすぐにバレるので、そのうち有料記事に切り替える可能性があります。



時系列

・2023年3月:話を持ちかけてもらう(私:大学2回生終わり)
・4月:キャラクターのカラーイラスト・2ページほどのネームラフを提出(候補が数人いるため、コンペ式)
・5月末:連載確定
・6月〜:ネーム制作
・2024年7月:辞退(私:大学4回生夏)


ことの発端はメールにてお声がけ頂いたのが始まり。
Twitterにて何作か短編漫画を載せ、ある程度伸びたりしていたので、目についてプロフに貼っていたメールアドレスに連絡をしたのだと思います。

正直、今見返してもお世辞にもプロレベルとは言えません。
絵は荒いし人体デッサンはおかしいし、背景も微妙。

2022年12月制作
2023年2月制作

しかし色々と参考になろうのコミカライズを見ていて気づいたのですが、どうやらかなりの人手不足で新人の人が描いている作品がかなり多いみたいです。
(そもそも、なろうのコミカライズを避けている作家さんが多い様子も見受けられました)

現在はWEB上での電子媒体連載が流行っていて、なろう系コミカライズ作品がバンバン連載されています。


当初の予定

・5話分完成したら連載開始
・2023年冬ごろには開始したい

しかし、私の実力が全く足りておらずこの予定は崩壊しまくります。


実力不足

今まで同人誌を3冊ほど作ったり、4ページ漫画を5話ほど書いたり、webtoon作品などいくつか制作してきており、ある程度漫画を描いた経験はありました。

しかし、コミカライズというものが初めてで全くやり方がわかりませんでした。
特に初稿はひどいもので、地の文やモノローグをそのまま貼り付けたり、台詞の改竄はしてはいけない…と考え、そのまま漫画に移していました。

これではまずい、ということで担当さんがさまざまなアドバイスをして頂き、成長していきました。

「情報の羅列になっている」
「とにかく絵で表現する」
「文章で説明はなるべく避ける」
「もっと自分の作りたいように自由にしてほしい」
「修正というより書き直して思い切り変えたほうがいいものになる」

こうして50ページ近くになる1話のネームをひたすら作り続けました。

「絵が雑すぎるのでもう少し綺麗に描いてほしい」
「コマなども間隔をしっかりと取ってわかりやすいように」
「雰囲気がわかるように背景も丁寧に描いてほしい」

ネームの作り方も丁寧に、綺麗に…と、改善していきました。

「画角が180度回転するのはなるべく避けて」
「もっと状況がわかるようなロングコマを入れる」
「コマとコマの繋ぎを丁寧に」
「セリフも自然と繋がるように」

段々と作品の質も成長していきました。
現在の糧にもなっており、とても感謝しています。


1話ネーム完成

6月に始めたネーム制作。完成は10月でした。
約4か月かかってしまいました。

この期間中に大学の学年全体で行われる展示会のグループ制作で70体以上のモブ立ち絵など作品制作を行い、バイトも続け、運転免許も詰め込み通い2ヶ月で取りました。

なんで両立できたのかよく分かりませんが、本当に色々こなしたなぁという気持ち。
もっとコミカライズだけに時間を費やした方が良かったのではないかと、後々考えていたのですが、他のこともやっていたおかげでまだ精神的に安定していたのかもしれません。


当初の連載予定だった年内の冬は難しいと判断。
来年の春(2024年春)には連載開始しよう、となりました。


2、3話ネーム制作

展示や教習所通いを終え、2話からはコミカライズ制作とバイト、学校だけになりました。

2話は11月〜2月末(4月まで他話の隙間で細かい部分を継続)の約4ヶ月取り組みました。
3話は3〜4月の約2ヶ月間


2話のネーム制作中に、バイトがどうしても体力的にも時間的にも邪魔に感じたので辞めることにしました。
(しかし、店長がとても可愛がってくれていたので「辞めちゃうのは寂しい!また暇な時に入ってくれたらいいから籍は置いたままにしよう!」と提案してもらい、現在もちょこちょこ顔を出していたり、有給を使わせてもらったりしてとても助かりました。)

ネームを提出するとすぐに修正を返してもらい、次の締め切りは5日後。と常にネームの締め切りがある生活です。
1話の頃よりも締め切りまでのスケジュールがだんだんとタイトになっていきました。
締め切りは修正内容によって「翌日〜1週間程度」とばらつきがあったり、原作者などに回す際には数日の待ち時間が発生したり、スケジュールはバラバラ

友人と遊ぶ約束をしても締め切りと被ってしまったり、何か予定を立てようにも、後々になってその予定が邪魔になってしまうことが多々ありました。
そういったことから友人との付き合いもだんだんと減らすように。

学校の課題などもあり、締め切りやスケジュールが難しいときがあり、伝えると「分かりました。学生さんなのは十分承知の上なのですが、それを理由に難しいとなると連載をお願いすることができないので…」と言われ、できる限りスケジュールをコミカライズ最優先にしました。


この時点で予定の2024年春は難しく、「2024年年内連載開始」が目標になりました。


地獄のネーム修正

主にネームは担当⇨担当の周りの編集者や、原作担当編集者⇨原作者
という3段階がありました。

どうしても多くの人が見るので、他の人にわかりやすいネームを用意してくれとのことで、下書きレベルまで描き込んで提出していました。

しかし、それが大量に没になるのです。
担当が通っても次の別の編集者にチェックを受けたことでこれまで修正してきたものが丸々消えることも多々ありました。

一番しんどかったのはその2段階の壁を抜け、原作者様に見せた結果「もっと後のページまで入れてほしい」と、原作のページ数をかなり増やしたところまで入れることになって30ページほど全部書き直すことが数回。

次の話はこのページまで入れますね、と伝えるも「この辺りまで入れちゃいましょう」と言われそんなに大量のページ入る?と思って描くものの、「つめつめすぎるからやっぱりここまでで、丁寧に描写しましょう」と全部書き直すなど。

30ページほどを全ページ書き直したり構成し直すことが本当に何度もありました。
もう一度改めて言いますが、下書きレベルまで書き込んでいます。

もともと私は絵も漫画もかなり汚い下書きから本書きをするので、かなり精神的に来ました。


見つけた新しいネームの作り方

ネーム修正となるとやページがズレまくり、数十ページのコマを移動させないといけません。
クリスタのキャンバスを跨いだページ移動はかなりしんどいので、なんとかネーム作業を楽にできないかと考えた結果生まれたスタイルがこちらです。

でっっっっっっかいキャンバスに全ページを描きます。
後々清書するキャンバスから基本線をトレスし、素材パターンとして登録。
中に書いた絵をその後清書キャンバスに拡大して貼り付けることでそのまま流用できます。

実際に書き込んでいるオリジナル漫画のネームがこちら。
特に画質などに問題はありません。

このやり方にしてからネーム作業がかなり快適になり、今も活用しています。
数日前学校の先生に見られた時には「何これ?どういうこと?」と驚かれました。


電話

修正事項などは基本的に書き込んだものプラス電話での連絡で、唐突に電話がかかってくるのです。
電話の方が色々と説明しやすく、迅速に連絡が取れるのでできる限り電話で」と言われていたのですが、正直これは私には合っていないことを伝えるべきでした。

文章の方が電話の時間が合わなくともやり取りができる・見返せる、言われた内容を咀嚼して理解することができる。
私は電話で話していても後から疑問点が出てきたり、その場ではパッと意見を出せなかったりしてうまくいきませんでした。

食事中に連絡が来ることも何度かあり、電話を終え戻るとスープが冷め切っていた時はかなり辛さを感じました。
授業中にかかってきた電話には出れず、その度に「学生だから…」と落胆されているのではないかと心苦しくなりました。

電話でかなりの圧を感じることが多く、怖くなり、急にかかって来る着信音に怯えるようになりました。
この頃に電話が、苦手になりました。


4話ネーム制作

5〜7月の2ヶ月間制作

「4話まで来たけれど、このままだと隔週連載のペースで制作できない
「もっと作品のクオリティも上げなくてはいけない」

このままでは、連載できない。
できなかったら、どうなるの?
1年半携わってきたけれど、降ろされる可能性もある?

もっと頑張らないと、持っている時間の全てを制作と勉強に費やさなくては。と考え、とにかく脳内はずっとコミカライズのことでいっぱいでした。

収入源もなく、貯金残高もだんだん底が見え、どうにかメルカリでフィギュアやグッズを売ったりし、やりくりしてきた。
早く給料をもらいたい。その気持ちが大きくなっていくも、全く先が見えないのです。

この時点で、1円たりとも金銭は発生していません。

正直、かなりしんどい。
段々と精神がすり減っていく。
余裕がなくなっていく。


この頃、なぜだか人と関わるのが難しくなっていく。

家ではひたすらにコミカライズのことに集中するため、学校では卒業制作のことを必死に進める。
卒論も授業中にどれだけ進めるかが勝負。休み時間も必死に進める。

友人と喋る時間はほぼなし。
家では、夕食後だらけてしまわないように料理後キッチンで立ったまま食事、その後流れるようにシンクにて片付け。
私が全ての家事を担っていたので、家事を一切しない姉へのストレスが限界突破。
姉とも喋るのが苦痛になり、話しかけてくるだけでイライラとしてしまう。

そうして制作時間、とにかく完璧なものを作らないといけないと思うとプレッシャーに押しつぶされそうになる。
泣きながら描いていた。構図や表現方法が思い浮かばず詰まると苦しかった。

とにかく完璧なものをと、工夫するも、考えて作った部分にボツをくらう。
もう自分にはできないのかもしれない。


趣味のことをする時間も消えた。
何かする時間があるのならとにかくコミカライズに時間を費やさなくてはいけないと考え、他のことが何もできなくなった。


そしてこの頃に、修正のチェック待ちの時間を使って1〜3話の修正や、より丁寧に下書きをすることになった。
4話を提出しても、以前の話の修正をしなくてはいけない。

1話は50ページ弱、2話は40ページ弱、3話は30ページ弱。
1話を今の実力で見るとほぼ全ページ書き直しのレベルだったので、全ページ書き直し始めた。

2、3話はいくつか細かい修正も指示されていたので、全てを隙間時間に進めてくれと言われた。

4話の修正を提出した直後のメールの返信にて、「ありがとうございます!ところで、そろそろ2、3話の修正はでき上がりましたでしょうか?」と言われたりもした。

相談もしながら4話の修正をさっきまでしていたのに?
この数日ずっと修正をしていたのに、他のこともできていると思うの…❓


本当に休みが無くなった。
とにかく時間が足りないし、コミカライズ以外の時間が全て邪魔に感じ、うまくいかず、苦しんだ。


5話ネーム制作、そして辞退

泣きながら、苦しみながら、先も見えないままなんとか4話を仕上げた。

「このペースでは連載は難しい」と言われたので出来る限り5話は始めから完璧な状態で提出しなくては、とじっくりと構想し、提出した。

ダメだった。
「工夫している部分が微妙だったのでもう少し原作を読んでうまく活用してください」など、言われた。

もう限界でした。

そもそも、刀鍛冶の資料を探してもいいものが見つからずかなり苦戦した。
次の話では建築の話が出てくる。このままだと6話目以降も多分、難しい。
私の力では求められているものは描けない。

精神的にも限界がきて、何もできずベッドに横たわって泣いて過ごしたりした。
もう辞めたい。

だけど、その時私は大学4回生の7月。3回生からずっと連載準備をしていた私は当然就活準備など何もできていない。
これから就活して間に合うのか。
これを辞めたらもう漫画家になるチャンスはないのではないか。
実績もない、賞もない、こんな降って湧いたチャンスは2度と来ない。
1年半費やして、まだお給料をもらっていない。

悩みました。
とても悩みました。

心療内科に行ったところ、適応障害と診断されました。
多分、辞めない限り治らないだろうし本格的にうつ病になる可能性も考えられた。

辞退しようと決断しました。

担当さんに言ったところ、「もう十分連載可能なレベルに達している。大丈夫、できれば辞めないでほしい。一緒にこれからも続けてほしい」「しかし、本当に無理であれば、辞退を受け入れます」と。

ここでもかなり悩みましたが、辞めることにしました。

こうしてコミカライズの仕事をやめ、実績も何もないまま全てが終了しました。


現在

コミカライズを辞めてから3ヶ月ちょっとが過ぎました。
まだ3ヶ月しか経っていないことにかなり驚いています

この3ヶ月間、精神状態も回復し、趣味含め色々なことに挑戦できてかなり濃密な生活を送れています。

8月いっぱいは漫画家を目指そうと決めたり、noteを始めたりしました。
9〜10月は一度就活もしておこうと、就活にも挑戦しました。(しかし就活は上手くいきませんできた)

現在は小学館様で担当さんがついており、プロットやネームなどを確認してもらいつつ新人賞に応募する漫画を制作しています。

担当さんがついた経緯としましては、2024年2月ごろにXのDMに「pixivに掲載されていた漫画が良かったので、よければこちらのサイトに応募してください!」とサイトの運営アカウントからメッセージが届いていたことを思い出し、7月末に応募したことがきっかけです。

こちらのサイトでは二次創作なども見てもらうことができるので、漫画制作の経験があればなんでも投稿することができます。

私は特撮オタクの漫画を描いていたので、そちらを投稿したところ同じく特撮オタクの編集さんが目をつけてくださり、担当になってくれました。

現在の担当さんは、趣味の話も楽しく、修正指示など全てにおいて優しさに溢れていて、快適に制作を進めています。
電話をする場合は準備ができているか確認してくださったり、修正の指示は電話と文章どちらがいいかと、こちらの希望を聞いてくださるのがかなり嬉しかったです。
素敵な方に出会えて本当に嬉しいです。


コミカライズでしんどかったこと

・原作そのままだと面白くないので、もっと面白くしてほしいと言われた時
・原作が漫画にすると盛り上がりに欠けるので見せ場を作ってほしいと言われた時
・個性を出してほしいと言われたが、個性を出した部分が没にされた時
・ずっとコミカライズ制作をしていたので個人制作が全くできなかった
・1年半の間制作物がないのでポートフォリオ制作やアピールできるイラストが困難
・大手出版社で活動してきたのに実績はゼロ
・路頭に迷っている
・1円ももらえなかった
・妥協が許されず、高いクオリティを求められた。


原作小説は賞を取ったりしていて、このコミカライズも大きめに売り出したりする予定なので妥協できない。と言われました。
連載未経験のド素人の新人にそれを求めるのってどうなん❓という感じではあるのですが…。

私の解釈と担当さんの解釈が違って制作が難しい場面も多々ありました。(主人公の心情などの描写など)

恐らく私の作風とスキル、担当さん、求められているもの、原作者様、全ての要素が噛み合っていない作品だったのではないかと感じています。

原作者様とは一度もコンタクトをとったことがないのですが、3人のグループ通話で「お前なんかいらない」と言われる夢を見たりしました。(限界❓)


原作関連でかなりショックだったことも一つありました。
原作のWEB連載は完結しており、最終話の後書きに「コミカライズの件はどこかに行ってしまったようです。戻ってきたらいいんですけど…。」(⚠︎表現は少し変えています)と書いており、制作している真っ最中に更新されたものだったのでかなり衝撃を受けました。

読者の方にコミカライズの件を匂わせるつもりだったのかもしれません。
しかし作っている側からすると「こんな必死こいて作っているのに無かったことにしている?」と感じてしまいました。


スキルが鍛えられたのはかなり感謝しています。
しかし実績がないまま就活する上で一番大事な期間が消滅してしまったのが痛すぎる。

何度考えても1年半費やして収入が0円なのが辛い。
精神的ダメージもでかかった分虚無感がある。

しかし自分が辞めたせいだからな〜…などと考えたり。


終わりに

何はともあれ辞めて今は幸せに過ごしています!!!!!!

明らかに心の負担が軽くなり、ネガティブ思考が吹っ飛びました。
皆さんも自分が無理していると感じたら精神が壊れる前にその仕事や物事から離れたほうがいいです。本当に。

仕事の内容や環境が自分に合っているか、というのは本当に重視した方がいいです。


また、この記事は「こういうことがあった」ということを記しているだけなので特定の出版社や元編集担当さんを攻撃する意図はありません。

ただただ私の実力不足と精神的負担で合わなかったというだけのお話です。
本当に多くの迷惑をおかけしてしまいました。

これから仕事探しなど、色々と大変ではありますがなんとかやっていきます。
漫画の方面で活動していけると嬉しいな。

7000字超えの文章となりました。
ここまで読んでいただきありがとうございました!

どうかお元気で!!!!!!



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