麗しくない美しさ
ハッピーな気持ちで毎日を過ごしたいけれど、こんな新年早々、終電で周囲の迷惑メールも考えられないほど、立ちながらぐわんぐわんと寝ているサラリーマンを見ると、どうにもこうにも、たまらないね。
年末年始はあったのかな
指輪をしているけど、奥さん、もしかしたら子供も、みんなでこたつでみかんとか食べれたのかな
ひとり、また、彼を横目に違う車両に移動した。
ぐわんぐわん、電車の流れに身を任せ
右へ左へ
前へ後ろへ
もう終点の駅も迫っているけど、彼の降りるべき駅は大丈夫なのかしら。
わたしはただの観客気取り。
「あんた、邪魔」
乗り込んできたキャップのおじさんが彼を押し、そのまま彼は車両に倒れこんだ。
沈黙の2拍子のあと、彼は飛び起き、颯爽と駅に降り立った。
閉まった窓の向こう側に、彼がどんどん小さくなっていく。
明日はもうちょっとゆっくり寝て、早く帰れるといいね
キャップのおじさんの赤色だけが目に残った。