第86回日本ダービー(GⅠ)・各馬評価(後半)
ダノンチェイサー 評価:△~△△
確か戦前はキングリーとチェイサー逆じゃないか、って言われていた気がするんですけどね。いつの間にかキングリーが3強の一角になっていますね。まぁあの戦い見るとそうなってしまいますが。。
デビュー以来掲示板を外していない素質馬で、NHKマイルカップではミドルペースの中アドマイヤマーズと同じ位置で戦うも、ルメールアタックの影響で4着までとなった。2~3着馬は展開利によるもので、そこまで強いと思っていないので、ルメールアタックがなければもう少し食い込んでいた気がする。
また、何よりも3歳世代の中でも上位に入るレースレベルであるきんもくせい特別では皐月賞9着のダディーズマインドより前で、きついペースの中走りながら、交わさせなかった点が魅力。高い先行力と基礎スピードが武器で、皐月賞組以外からでは面白い1頭だろう。
ただし、2,400mへの一気の距離延長は大きなハードルではある。デビュー戦となった2,000m戦では、1,000m1分5秒という超ドスローを先行しながら、上がりは35秒台で同じような位置にいたカテドラルには完敗だった。7月の頭だし、まだまだ身体が出来上がっていなかったとは思うが、この時に川田が「距離はもう少し短い方が良い」と回答している。
ナイママ 評価:消
いやこの馬ホントタフですね。ダービーで今年6戦目。毎月1回以上のペースで出走しています。
コスモス賞、札幌2歳Sで頭角を現すも、東スポ杯以降は凡走続き。北海道所属馬にはよくありますが、夏競馬時点ではJRA所属馬より成長が早いのと洋芝適性で勝てるんだけど、秋以降勝てなくなるという現象かな、なんて思いつつも、ちょっとこれまでのそういう馬とは違う気もしていたので、弥生賞までは地味に印打ってました。
京都新聞杯ではあわや馬券内とも言える好走。ただし、タフな流れになったのと、上位人気の差し馬が今までとは違う先行競馬をして沈没していったことが大きいと思われるので、ややフロックかなと。
テンが速い割には基礎スピードが全くないので、無理についていけば後半沈没するし、好位~控えてもキレる脚は持っていないことが京都新聞杯でも分かったので、流石に一線級のダービーではつらい。
ニシノデイジー 評価:△~☆
皐月賞ではもう少し戦えると思ったので、おや?と思える大敗。談話を見ると、1角過ぎて外に出そうとした辺りで引っかかった模様。そういやこの馬、いつも内枠引いてたもんね。
これはパトロールビデオなどを見て頂きたいが、向正面あたりで首をブンブン動かしたり、コーナーでもないのに外に膨れたりと折り合いに苦慮している様子がうかがえる。
以前ホープフルSの展望で、「内枠でいつも競馬しているから、外枠引いたらどうなるんだろうか?」といったことを書いた覚えがあるが、「引っかかる」というのが答えだった模様。そういう意味では皐月賞での大敗と引換に良い収穫を得られたとも言える。
この馬の特徴については、以前に以下のように書いている。
------------------------------------------------------------------
流れるペースで消耗戦となった札幌2歳Sと東スポ杯2歳Sで好走、スロー前残りとなったホープフルSで負けているように、消耗戦で浮上するタイプで、ペースが流れる中でも好位から速い脚が使えるのが特徴。
------------------------------------------------------------------
そういった意味では、ダービーではスローよりもやや流れるペースを望んでいるだろう。
東京コースは、ヴェロックスをも凌いだ東スポ杯2歳Sでの良いイメージがあるので、折り合いなども含め陣営としてはその時と同じ内枠が欲しいところだろう。勝浦騎手も、前走の大敗で完全に人気の呪縛から解き放たれたので、意外にまたやりよるかもしれない。
なお、ダービーでは差しに徹するようなので、位置次第では届かずで終わる可能性も十二分にある。
メイショウテンゲン 評価:消
弥生賞勝ち馬。皐月賞では最後方を追走するも全く歯が立たず15着と大敗を喫した。談話では「早くから積極的に仕掛けていれば違っていた」と言っているが、上がりが34.9秒で先行していたアドマイヤマーズと同じ。これでは多分息があがって終わっていた気がする…。
この馬については、以下のように皐月賞前に書いている。
------------------------------------------------------------------
スローペースが蔓延る2~3歳戦では珍しく、ほとんどのレースで流れるペースを経験している。基本的には差し勝負がメインだが、そこまで高いスピードの脚を持っているわけではなく、道悪やタフな馬場での差しに強い傾向が見られる。
------------------------------------------------------------------
上記の通り、陣営も雨を望んでいるようだが、週間天気予報は晴れということで、まぁ今回も厳しいでしょう・・・。
ランフォザローゼス 評価:▲~△△
戦績見るとエタリオウみたいですね。京成杯、青葉賞で2着と結構賞金を積んでいる素質馬。
新馬戦は当初パッとしないなと思っていたが、サトノダイヤモンドの弟サトノジェネシスや現在の未勝利では上位のトランスナショナル、500万下のエターナルヴィテスなど、時間が経つとそれなりのレベルであったことが分かってきた。なお、ここでは前半1,000m1分2秒のスローとは言え、先行して33秒台の脚も使えているので速い上がりには対応できなくもなさそう。
また、葉牡丹賞では先行不利な流れの中で、内を立ち回って2着に粘る地力を見せた点は高く評価。京成杯はスロー前残り競馬でラストドラフトに出し抜かれた形だが、ここでもしっかりと2着は確保。
青葉賞も横山典のリオンリオンでの逃げを4番手から追走。追いかけていったアドマイヤスコールやセントウルが垂れたところを外から交わし、あわや1着というハナ差まで迫った。
この馬の武器はどんな流れにも対応できる立ち回り力。サトノルークスと似たタイプだが、キレる脚も使える分、強化版とも言える。
内枠を引くと最も怖い1頭になりそうだが、鞍上が「詰まる」「前が壁」でお馴染みの福永騎手ということで、鞍上的には去年みたく外枠の方が実は良い…かも。
リオンリオン 評価:△
個人的な話で恐縮だが、後輩と一緒に選んだPOG馬の一頭。若駒Sまではクラシックに乗るのは難しいかなと思っていたが、横山典弘騎手に乗り替わって一変。
水仙賞では2,200mと長丁場にも関わらず、前半1,000mは1分を切る速いペース。それを2番手から追走して3着となり、先行して強いところを見せた。
続く大寒桜賞ではスローペースに落として後続を寄せつけず完勝。そして青葉賞では、またも前半1,000mが1分を切る速いペースで逃げるも、上手く息を入れてランフォザローゼス以外の後続を完封し、横山典の巧妙な逃げがさえ渡った。
青葉賞のラップ推移を見ると分かるが、最後の1Fはその前の1Fと比べて1.1秒も落ちており、流石にバテていたよう。上手く逃げ粘った格好なので、これも横山典の騎乗の上手さがあったからこそだろう。
(鞍上次第だが)11秒台後半~12秒台前半の遅すぎず速すぎずの淀みのないラップを刻んで逃げ粘れるスピードとタフさがこの馬の強みと言える。
横山典の騎乗で一気に頭角を現してきただけに、今回の乗り替わりはかなり痛い。若手の中では上手い(らしい)息子の横山武史なので、恐らく横山パパがアドバイスを色々とするだろうが、果たしてどこまであの独特な雰囲気に呑まれずに本番でアドバイスを実践出来るかは未知数。
※今日のニッカンの記事でアドバイスはしないというノリさんのコメントがあったので、ちょっと厳しいかもしれない(5.22 10:45更新)
レッドジェニアル 評価:消
京都新聞杯では11番人気ながら差して1着。一気にダービー出走へとこぎつけた。
京都新聞杯は先行勢・差し勢の順位が固まっておらず、全体的にフラットな決着ではあるが、時計としてはミドルペースで差しに展開が向いたレースと言える。そういう意味では差してきたレッドジェニアルよりも、逃げて2着に粘ったロジャーバローズの方を上にとりたい。
戦績的に稍重で崩れている一方、良馬場ではそれなりにやれているが、どれも一線級相手ではない。新馬戦はトーセンスカイやサトノソロモンを差し切れていない(京都新聞杯では勝ってるが)し、未勝利戦で負かした相手もパッとしない。初の輸送もあり、相手が一気に強化される今回、どうなのかな…という感じ。
ロジャーバローズ 評価:☆
スプリングSで7着に負けた後、少し間隔を空けて京都新聞杯へ出走。誰も逃げないと判断すると、浜中騎手がこれまで見せなかった思い切った逃げで2着に粘り込み、見事ダービー出走へとこぎつけた。
京都新聞杯は結構軸を悩んだが、スプリングSでの負け方が実は良い負け方で、この馬について、戦前に以下のように書いた。
--------------------------------------------------------------------
マイルからの転戦馬が多く出走し、基礎スピードが求められたスプリングSで中団より少し前で先行して0.4秒差ならここでは上位評価出来る。
(中略)先行勢が少なく、あまり後続が競ってこない展開であれば、この馬に有利になる可能性は高い。坂を使って加速し、先行押し切りを狙える。
------------------------------------------------------------------
何を言っているか分かりづらい(書き物としてどうなんだ)かもしれませんが、京都新聞杯では結構ズブそうというか、そこまで基礎スピードが高い馬があまりいなかったので、ある程度スピードを持っているこの馬が、ちゃっちゃか前に行ってしまって、後ろが追いつけないんじゃないか、と考えていたわけです。
結果的に後続は競るまではいかないが割とピッタリとくっついてきて、しかも速い流れになったのは誤算だったが、期待以上の好走を見せてくれた。
この馬の武器は、アドマイヤジャスタやサトノルークス、ランフォザローゼスと同じくタフな流れを先行して押し切るところ(そういう意味では同じような馬が何頭も出走するんですね)。アドマイヤジャスタらとの違いは、マイルのスピードにも遅れずついていける基礎スピードの高さ、でしょう。案外と、他の馬に比べて今の高速馬場も合うかもしれません。