【JRA GⅠ参戦海外馬分析②】ゴリアット

②~④はジャパンカップに出演するゴリアット、オーギュストロダン、ファンタスティックムーンを取り上げていきます。
まずは、ゴリアットから。


①戦績分析

ゴリアットの戦績データ

戦績から分かること

ゴリアットは戦績10戦6勝。
特に今年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSでは、凱旋門賞を勝ったブルーストッキング、ドバイシーマクラシックとBCターフを勝ったレベルスロマンスらを負かしました。

これにより、ゴリアット自身のレーティングも上昇しているようです。
そのせいでしょうか、馬主がやたらと強気発言をしています。

今の日本に強い馬はいないとか、クールモアに俺はジャパンカップに勝つぞ、と煽りに煽りまくり。ガチのBreaking Downファンですかね?

さらに何故かTシャツも売り出します。

さて・・・それはそれとして、

この馬の能力を判断する上で、キャリアに非常に重要なポイントがあります。それは、「マイル以下のレースを経験していない」ということです。

これはチャリンのところでも述べましたが、中長距離を走るトップレベルの欧州馬の戦績を見ると、彼ら彼女らはマイルからキャリアをスタートさせ、そこで勝ち鞍をあげつつ、徐々に距離を延ばしています。
例えば・・・

オーギュストロダン(23年BCターフ1着)⇒1,400/1,600m
シティオブトロイ(24年英ダービー/エクリプスS1着)⇒1,400m
ゴーストライター(24年英インターナショナルS3着)⇒1,400m
ルクセンブルク(23年香港C2着)⇒1,600m
ブルーストッキング(24年凱旋門賞1着)⇒1,600m
アヴァンチュール(24年凱旋門賞2着)⇒1,600m
ソジー(24年凱旋門賞4着)⇒1,600m
ウエストオーバー(23年凱旋門賞2着)⇒1,600m
オネスト(23年凱旋門賞3着)⇒1,600m

とまぁ、枚挙に暇がありません。

もちろん、エースインパクトのように、マイル未経験でも恐ろしいラップをたたき出せる馬もいるにはいますが、非常に稀です。

例えば、欧州のディープ産駒として有名だったスノーフォールなんかは、デビュー戦の1,400mこそ勝ちますが、その後の1,400m~1,600m戦では3着内すらなく、距離延長してようやく出世したところから、そこまでスピードがないのでは?と以前に指摘しました。

で、実際、欧州の一線級相手だと通じない結果になっていました。

このように、どの距離でどのように勝ち、キャリアを積み上げてきたか、というのは欧州馬の能力を判定する上で結構ポイントになります。

そういった意味では、最初から2,400mでキャリアを始めている点をかなり疑った方が良いと思います。これは、この後のラップ分析からも合点がいきます。

②ラップ分析

いやー真っ赤っか。ここまで真っ赤なラップが多い馬も珍しいです。

それでは、ラップから馬の特性を探っていきましょう・・・と言っても、ほとんどのレースが道中13~14秒台が続くスローのレースばかりで、15~16秒台のレースまであります。

しかもそのレースですら差しが多いのですから、スピード能力については色々と察する部分があります。

さて、ここからピックアップするレースは、その中で数少ないペースが速いレースについて。

①プランスドランジュ賞 4着
キャリア唯一の2,000m戦で、中盤から12秒台前半⇒11秒台後半⇒11秒台前半と徐々にラップが上がっていく推移になっていることが分かります。
ゴリアット自身もついていくにはついていっているものの、追込にも関わらずほぼレースラップと同じような内容。

2,000m戦ではありますが、前半スローの上がり勝負みたいな競馬ですから、こういったレースで勝てていないということは当然上がり勝負には弱いということがうかがえます。

似たようなイメージの馬として、メロディーレーンが挙げられます。
この馬は追走スピードが全くないので、2,000mでは未勝利戦すらほとんど対応できず、3着が最上位。この馬も2,400mまで距離を延ばしてようやく他の馬と勝負が出来るという具合でした。

②KGⅥ&QES 1着
残り1,000mまでのラップは、
13,71-10.98-11.36-11.93-12.39-12.01-12.23
と、前半に11秒台が続くペースの速い展開となっています。

これにより、前半3Fが36.05秒、5Fが60.37秒と、日本の競馬と遜色のないラップになっています。日本式に直すと最初の1Fはもう1秒ほど短縮されるので、2,400mにしてはペースが速いことがお分かりになるでしょう。

そして、残り1,000mからは、
12.49-12.37-12.37-12.63-12.96
となっており、上がり3Fは37.96秒。時計がめちゃくちゃ掛かっています。

レース映像を見れば分かりますが、前半から速いペースでしたから、前が潰れています。むしろ3着で粘ったレベルスロマンスはさすがというところ。
逆に後ろから運んだ2頭、ゴリアットとブルーストッキングでワンツー。

ブルーストッキングは道悪のロンシャンをこなし、凱旋門賞を勝った馬です。当然スタミナや道悪にも対応できることになるので、時計が掛かる決着には強い。(実際、凱旋門賞の前に出走した英インターナショナルSは速い上がりの勝負になり4着でした)

ということは、ゴリアットもその可能性がかなり高いと言えます。

③総括

以上をまとめると、これまでのレースでのパフォーマンスを見る限りは以下のような特徴を持っていると思われます。

・非常に遅いペースでのレース経験がほとんどで、キャリアも2,400mから始まっており、追走スピードにだいぶ疑問
・時計が掛かるレースへの対応力は高いが、上がりが速いレースでは負けていることが多い
・位置取りは恐らく差し~追込

馬主の強気とは裏腹に、netkeibaでは8人気(11/11時点)となっているので、割と冷静に「どうなの?」と思われているようですが、ドボドボの不良馬場でもなければ厳しいだろうなとは思っています。

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