第81回 オークス(GⅠ)・各馬評価〈後編〉
(5/21 19:30更新)抽選突破したリリーピュアハート、フィオリキアリを追加しました。
前編はこちらから。ちょっと傾向部分が長くなったので、前後半に分けて各馬評価をしています。また、抽選対象馬は、出走馬が決まってから、見解を追加します。
各馬評価
項目の評価内容は以下の通りです。
スマイルカナ
桜花賞は重馬場ながら、フェアリーSと同じペースで逃げて3着に粘るパフォーマンスはなかなかのものでした。
この馬は、言わずもがな逃げないとダメな馬で、チューリップ賞のように控えてしまうと上位レベルの上がりの脚は使えないため、今回も逃げると思われます。桜花賞では逃げて上がり38.6秒。レシステンシアとは0.4秒差ということを考えると、タフさはありそうです。ただ、過去のラップからではどこまで対応できるかは未知数ですね…。
どんなペースで逃げるかでもだいぶ変わりますが、今の東京の上がりを見る限り、後続から迫る快速馬たちをしのぎ切るだけのスピードを残しているか?というとちょっと怪しいなとは思います。過去の上がり3Fを見ると、ドスローで差すにしても上がりは34秒台前半が限界なので、あまりに遅すぎるとキレ負けしていまいます。
なので、1,000m59秒台~59秒を切るペースがこの馬の好走ラインではないかと推測されます。最も難しい競馬を強いられることになりますが、持ち前のスピードとタフさを生かしてどこまで粘れるか見ものです。
チェーンオブラブ
この馬は、脚を溜めて瞬発力とトップスピードの高さで一気に前を捉えに行く競馬が得意…なのですが、チューリップ賞を見る限り、位置取りに比して上がりが遅すぎるため、他馬と決定的な差が見られます。
東京コースは経験済とは言うものの、赤松賞で33.3秒を使っても切れないシンハリング相手に間に合っていないため、より相手のレベルが上がる今回、流石に距離が延びての逆転というのもあまり考えづらいところです。
デアリングタクト
桜花賞は、これまで経験のないスピードに耐えられるかがカギでしたが、見事クラシック1冠目を獲得。距離延長で2冠目を狙います。
この馬の持ち味は、卓越した瞬発力と速い脚を持続する力です。桜花賞の各馬評価では以下のように書きました。
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新馬戦は最後の1Fしか力を出していません。残り1Fを切るまでは他馬のペースに付き合い、1F過ぎるとグンとギアチェンジをして一瞬の脚だけで突き抜けた形。※但し、相手が弱いから出来た芸当ですが…
続くエルフィンS、後方からの競馬になりましたが、3角⇒4角で徐々に位置を上げて、残り400mで一気にスパート。残り200mで先頭に立ち、そのまま後続を大きく突き離す圧巻の勝利でした。実際、2Fはずっと10秒台の脚を続けて出していました。
ただし、これをそのまま鵜呑みにして良いか、というと、正直私は疑問符がつくと思っています。まず、京都は壊滅的な馬場が続いていたとは言え、エルフィンSの日は1週間近く雨が降らなかったことで、馬場差もマイナス方向に動いたタイミングです。なので、上がり34.0秒は決して破格の脚ではありません。また、先行勢がほとんど沈没しているように、差し・追込馬に展開が向いたことも確かです。
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桜花賞では上がり最速の36.6秒で前残りを差し切る強い競馬でした。後方勢も良馬場と変わらないペースと過酷な馬場のために、前を抜こうにもバテているような状況だったことを考えると、この馬の力を認めなくてはなりません。
ただ・・・この馬、繋がめちゃくちゃ立っているんですよね。そりゃ重馬場得意ですわと。。また、「桜花賞の速いペースに対応できた」とは言うものの、上がりが掛かったことで、速いペースかつトップスピードが問われるレースにならずに済んでしまい、トップスピードがどこまであるか未知数という状態になっています。
もちろん、10秒台の脚を連発できる以上、恐らく高いトップスピードを出せるとは思いますが、それは100%とは言えない以上、そこに絶対的な信頼は置けません。
また、初の輸送、初の距離、初の高速馬場と初めて尽くし。桜花賞の上がり3Fのタイムを見る限り、距離への対応は桜花賞出走馬の中で最も心配はなさそうですが、1倍台の人気になることと、この馬が背負うリスクを天秤にかけた時に、そのリスクに見合うバックがあるか、、ここはじっくり考える必要がありそうです。
デゼル
デビュー戦が未勝利戦で、2戦目でスイートピーSを勝利。2戦2勝でクラシックに殴り込みをかけてきた遅れてきた大物(の可能性がある馬)。
戦前からユーキャンスマイルとの追い切りで先着したことで話題になっていましたが、スイートピーSの末脚がとにかくエグい。クリスティばっかり見ていたので、気づかなかったのですが、改めてレース映像を見ると、かつてエリザベス女王杯で驚異的な末脚を披露した海外馬スノーフェアリーを彷彿とさせました。
それを証明するかのように、400m地点で騎手がゴーサインを出すと、2F続けて10秒台の脚を連発。新馬1,400m戦で前残りを差して話題になったアカノニジュウイチをいとも簡単に置き去りにしました。
課題は対マイラー比較で、①スイートピーS以上に位置取りが後ろになっても追いつけるか、②スイートピーS以上に速くなるペースに対応できるか。
まずは、1つ目の位置取りについて。この馬は、2戦とも位置取りが後ろになっていますし、何よりレーンの出遅れ率は高いようなので、今回も良い位置をとるのは厳しいように思います。また、スイートピーSと比べても、先行して速い上がりを出す馬たちがゴロゴロいるのが今回のレースです。位置取りを誤ると差し切れずに終わってしまったり、或いは少しでも不利を食らってしまえば致命的になります。
2つ目のペースについて。スイートピーSでは前半1,000m通過が61秒ですが、この時の馬場差が-2.1秒でかなり軽かったことがうかがえます。今回2秒近く速くなる可能性があることを考えると、多少なりとも脚が削がれる、或いは1つ目とも関係しますがより位置取りが後ろになる可能性があると思われます。
フィオリキアリ
この馬は大変分かりやすいのですが、馬場差がプラスになってから好走が続ているように、上がりが掛かるレースが得意なようです。
桜花賞では以下の通りに評価。
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究極のトップスピード戦になった赤松賞以外は、上がり3Fすべて1or2位という馬。しかも不思議なのが、時計が掛かっても上がり35秒台が出せているところ。ストップウォッチで測ると、アネモネSの最後の1Fは10秒台を出していますからね…。ほぼ最後方くらいで競馬をしていることが多いので、当たり前っちゃ当たり前なんですが。
東京でキレ負け⇒上がりが掛かった馬場で好走、というところから、トップスピード勝負には向かないでしょうが、馬場が渋って時計が掛かったりすると(あまり脚が削がれないなどの理由で)相対的に浮上するタイプなのかもしれません。
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桜花賞は重馬場の中で7着と好走していますが、上記の通りだったので、上がりが掛かるレースが得意なことを証明した形。
今回は前日は怪しいものの、当日は晴れで恐らく良馬場は確定。しかも今の東京の高速馬場を考えるとまず厳しいのではないでしょうか。
ホウオウピースフル
ブラストワンピースの半妹の素質馬で、フローラSで2着に入り、オークスへの出走権を獲得しました。
フローラSではこの馬について、以下のように書きました。
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クイーンCではまず来ないなと思っていましたが、思ったよりは頑張ったなという印象。ただ、今回も果たしてどこまで善戦できるかは何とも…。
百日草特別は5頭立てという少頭数に加えて、相手も雑魚ばかり。個別ラップは12.2-10.7-10.6で33.5秒(実測値)で10秒台を2F続けて刻んではいるものの、その前の1,200~1,400m地点で13秒台が続いているので、今回も同じような上がりを出せるかは疑問。
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この馬は、お兄さんであるブラストワンピースに近いと思っていただければ、なんとなく適性や特徴がわかるのではないでしょうか。
ブラストワンピースは、2,000mのスピード戦となった大阪杯で惨敗、洋芝の札幌記念や2,200mのAJCC、2,500mの雨天の有馬記念で勝利しているように、スタミナが問われる長距離戦や上がりが掛かるレースには強い一方、トップスピード戦や高いスピードを持続するレースには弱いです。
こう考えると、ホウオウピースフルも、当然ながらマイルは合いませんし、(時計がかかっていなければ)フローラSも合わないと考えていました。
ただ、ウインマリリンの項でも書いた通り、フローラSは異例の35秒台の上がりがかかる決着。この馬が好走して不思議ではないレース質になったと解釈しています。
今回は2,400mでさらなる距離延長となり、この馬にとっては前走よりも条件は好転すると思われます。ただ、サトノワルキューレが、マイラーたちに対して全く歯が立たなかったように、上がりが33秒台になるようなトップスピード戦になると厳しいのではないでしょうか。
マジックキャッスル
ローテや相手関係、ペース経験から考えても、割と評価していた馬なのですが、思った以上に過酷な状況には耐えられなかったようです。。
この馬の持ち味は、基礎スピードと瞬発力の高さ。基礎スピードが高いのでハイペースでも脚があまり削がれず、脚を溜めて瞬発力で11秒前半~10秒台の脚が繰り出す⇒後方からでも前に届く、というわけです。
課題は距離と位置取り。初戦で1,200mを使っていた馬が、とうとう倍の距離に挑む、というなかなかなローテで、兄姉を見ても短距離でこそという血筋なので、能力で距離をどこまで誤魔化せるか、疑問はあります。
また、位置取りがどうしても後ろになりがちなのもマイナスです。クイーンCはペースがそれなりに流れたことで前に追いつけたという側面があるので、ペースが緩んで相手も強化されて…という状況で先行勢を差し切るだけの力があるか。。
距離への不安もある以上位置を取りにいくことは考えづらいので、なかなか厳しい競馬を強いられる可能性があるように思います。
マルターズディオサ
クラヴァシュドール同様、総合力が高い馬です。阪神JFでは2~3番手で先行し、差してきたクラヴァシュドールを最後まで抜かせなかったように、持続力も高いです。
そのため、総合的な力という面ではクラヴァシュドール以上だと見ましたが、桜花賞では3番手に先行しながら最後はガクンとバテてしまい、8着に敗れました。とは言え、4着のクラヴァシュドールとは0.4秒差で、着順ほど負けてはいません。繋も寝がちですし、馬場の巧拙も大きかったように思います。
これまでマイルしか使ってこなかったため、今回は2,400mへの距離延長が課題になりますが、先行が出来て、かつ速い上がりでまとめられる点は魅力。距離さえ持てば押し切る場面があってもおかしくはありません。
ミヤマザクラ
桜花賞ではスタートして6~7番手の好位を進み、800~1,000m区間で位置を押し上げ⇒3角辺りで少し下がり(馬場に脚をとられた模様)、4角で再び押し上げる競馬で5着入線。
道中のペースに沿ったものではなく、位置を上げたり下がったりと、少々チグハグになった感はありますが、うまく善戦したように思います。
京都2歳Sのかなり重たい馬場で先行して2着に粘ったようにスタミナは証明済み。さらにクイーンCでも比較的流れたペースで番手を先行して上がり34.2秒でまとめており、位置取りとペースを考えると2,400mへの距離延長して最も良くなりそうですし、よほどのスローになってハイレベルなトップスピード勝負にでもならない限りは、速い上がりにもそれなりに対応できそうです。
桜花賞では、以下のように評価しました。
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この馬の特長は、瞬発力勝負・キツイペースどちらにも対応出来る点と言えるでしょう。ただし、基礎スピードという面ではクイーンCの結果を以てマイルに対応したとは必ずしも言えず、桜花賞で真価が発揮されます。
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展望・各馬評価<前編>の考え方の部分で書きましたが、”「マイルであと一歩足りない馬」「マイルを勝った経験はあるが、一線級とまでは戦っていない馬」が中距離で結果を出してオークスで上位に入る”傾向があります。
この馬はまさにこの条件に当てはまってきます。
リアアメリア
阪神JFでの敗戦後、桜花賞へ直行する形をとりましたが、成す術なく10着に敗れました。あまり重たい馬場が得意とも思えず、納得の敗戦でしたが、馬場のせいで成長度合も全く分からず、判断が難しいです。
他のマイラー同様、1,600m以外の距離は初めてですが、案外巻き返してくる可能性もある馬ではないかなと考えています。マイルでダメな馬が距離延長で息を吹き返すことはままありますからね。
この馬は桜花賞時に以下のように指摘しました。
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この馬は、12秒台から一気に10秒台までラップを上げられるように、瞬発力が非常に高いです。しかし、その一方で、ペースに関わらず温存⇒加速⇒減速というラップ推移を辿っています。最後方から差し切ったアルテミスSにしても、スロー前残りをなんとか捉えたという印象で、実際に最後の1Fでスピードが落ちています。つまり、持続力が低いわけです。
持続力が低いとどうなるかが、アルテミスSで何とか差した理由、阪神JFで飛んだ理由、につながります。
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かなり後ろの位置から差してくるにも関わらず、スピードの持続力がないのがこの馬の弱点である以上、先頭集団を捕まえられるよう、もっと前の位置で競馬をする必要があります。
そういった意味では、これまでと比べればペースが落ちる可能性がある今回、好位につけてそれなりの上がりで差し切る可能性もあるのではないでしょうか。
阪神JFで本当に強いのか?と指摘し、これまで低評価を続けてきましたが、距離延長すれば話は別です。とは言え、位置取りが今までと変わらない可能性もあるので、今の段階では消すのは危険とだけ言っておきたいと思います。
リリーピュアハート
現6歳世代(マカヒキ世代)の青葉賞馬ヴァンキッシュランの全妹。
新馬戦は多くの勝ち上がり馬を出しているショコラブリアン組で、素質馬らしく2戦目で未勝利脱出。続くゆりかもめ賞で牡馬相手に2,400mを勝ちましたが、忘れな草賞は3着に敗れてしまいます。
この馬の特徴は持続力。上がり3Fが、11秒台を持続して加速していく推移になっているように、じわじわと加速する馬です。そういった意味では、そこまで瞬発力がないとも言え、一瞬の脚が速いウインマイティーに忘れな草賞で出し抜かれてしまっているのもうなずけます。
また、出走馬の中で唯一2,400m出走経験のある馬ですが・・・ゆりかもめ賞のレベルがかなり疑問。2着のヴォリアーモはフローラSで10着と大敗。もちろん、フローラSの「レース質はオークスとは違う」と指摘しているのですが、後方からの競馬で何もできなかった馬と0.3秒差、3着以下も馬券圏内に1頭入った以外は誰も馬券に絡んでいないというのは、レベルが低いと言わざるを得ません。
また、ゆりかもめ賞のラップは12秒台後半が全体距離の半分を占めており、オークスよりもかなり遅い時計です。にも関わらず、この馬の上がりはそこまで速くもないので、信頼に欠けてしまいます。