【JRA GⅠ参戦海外馬分析①】チャリン


秋の特別版:海外馬分析シリーズ始めます

「ジャパン・オータムインターナショナル」という言葉をご存知でしょうか。

Wikipediaによると、

2008年度よりエリザベス女王杯からチャンピオンズカップまで4週連続で行われる、秋季の国際GI競走ならびにワールドスーパージョッキーズシリーズに、海外の主要競走で好成績を挙げた外国馬および騎手の参戦を促すため、2007年11月19日に賞金総額約12億円の国際競走シリーズを実施することが発表された。

このシリーズでは指定された海外競走に優勝もしくは2着に入った外国調教馬に優先出走権が付与されるほか、対象の競走で外国調教馬が3着以内に入った場合、賞金に加え褒賞金を交付している。

Wikipedia「ジャパン・オータムインターナショナル」より

洋芝だし「香港」の方が1日でまとめて色んなレースやるし、楽でええやんけ~、となってもはや死語になりつつあったこの言葉ですが、

今年はマイルCSとジャパンカップで海外馬の参戦が表明されました。

ジャパンカップの賞金を増やしたり、東京競馬場の馬場内に外国馬のための国際厩舎を建設したりと、JRAの努力が少しずつ実ってきたようですね。

マイルCSは京都競馬場だけどな!

ということで、凱旋門賞的中のために、海外の色んなサイトでラップ情報をちゃんと集めるようになって以来、欧州馬とアメリカ馬との違いとか、あ~こういうラップで走るのかとか、色々と分かるようになってきましたので海外馬の情報が欲しいこの局面、しっかり発信していきたいと思います。

JRA-VAN海外にしても、専門紙にしても、netkeibaにしても、情報がほとどないですよね…このレース何頭立てだったんだろう?先行だったのか?差しだったのか?相手は強かったのか?どんなレースだったのか?

情報が不足し過ぎな上に、誤った情報発信すらまかり通ってしまう。
先日もグリーンチャンネル内で、BCマイルを「スロー」だと解説してしまっていたのはちょっと酷いですよ。ホント。

というわけで、こういった状況を打破すべく、今週からこのジャパン・オータムインターナショナルに参戦することを表明した、海外馬全4頭の分析をしてきたいと思います。

更新は不定期ですが、ジャパンカップ週初までに全馬終えられるようにしたいと思います。というわけで、まずはマイルCSに参戦を表明したチャリンから分析していきましょう。


①戦績分析

チャリンの戦績データ

戦績から分かること

チャリンは18戦7勝、クイーンエリザベスⅡ世S、ジャックルマロワ賞など欧州のマイルGⅠを3勝しています。

なお、今年の9月に行われたムーランドロンシャン賞では、ノータブルスピーチに先着しています。

戦績を見ますと、1,200mからキャリアをスタートしており、1,200⇒1,400⇒1,600と徐々に距離を延ばしながらキャリアを着実に積み上げてきています。

スプリント戦や1,400m戦の重賞でも戦えているので、そこそこスピード能力もありそうです。

次に、馬場状態の観点から見てみましょう。
良馬場でも勝っていますが、重馬場でも好走しています。こういうのはスピードに特化したタイプではないのではないか?と見ます。

欧州の場合、坂の高低差がすごいですし、雨に祟られることも多いので、どうしてもタフな馬の方が台頭しやすいですからね。この辺はラップの観点からも併せてみることが大事です。

欧州馬の能力判定は初期のキャリアにあり

中長距離を走るトップレベルの欧州馬の戦績を見て頂くとよく分かりますが、彼ら彼女らはマイルからキャリアをはじめて徐々に距離を延ばしていきます。

これ、個人的にはすごい理に適ってるなと思ってるんですよね。
というのも、マイルで戦えるスピード能力を保ち、そこから距離を延ばすことで、一定のスピード能力を持った中長距離馬が誕生するからです。

日本の場合、中距離馬だと判断したら1,800とか2,000からキャリアをスタートさせますよね。でも、日本の場合は大体新馬は超スロー。で、特別戦とかも頭数揃わないから大体スロー。頭数揃った重賞でいきなりキツイペースになる、というのが、まあ割とあるあるなわけです。

馬がスローで走るのを覚えてしまった段階でいきなりドぎつくなるので、スロ専の馬が人気背負って飛び、逆にキツイペースでこそみたいな馬が台頭してくる。

でも、キャリアの早い段階で、速く走ることを覚えれば、逆に距離延長でペースが緩むと「あれ、前より楽じゃん」ってなる。
※人間のスピード競技も結構考え方近いんですよね。短い距離で走ったり或いは泳いでいた選手が距離延長しても通用することが多い

欧州のトップレベルの馬たちが欧州だけでなく、アメリカや香港、他の国でもしっかりと結果を残せているのは、別にタフだからというだけではなく、速く走ることを覚えるようにしていることも大きいと私は考えています。

たまにマイルで結果出なくて距離延ばしてようやっとみたいな欧州馬もいますが、大体ちゃんと相手が揃ったGⅠではやられています。
少し前に有名になったスノーフォールなんかはその典型でした。


②ラップ分析

ラップが分かりやすくなるよう、右下にスケールを入れてみました。

1つの基準としまして、日本のマイルの場合、OPクラスでは最初の1F以外12.00より右側がほとんどということが多く、たまにスローで中盤が12秒台に緩む、という具合です。
(参考にマイルCS有力馬2頭の過去のレースのラップを載せておきます)

そう考えると、キャリア初期の1,200~1,400では日本でもよく見るラップになっているんですが、1,600に延ばして以降はえらく左側が多いのが分かると思います。

それでは、ラップから馬の特性を探っていきましょう。

①ミルリーフS 3着/クリテリウムドメゾンラフィット 1
いずれも1,200mですが、片や前半が遅くて後半3Fの上がり勝負で3着、片や最初の1F以外11秒台前半持続レースで1着。
この戦績を見るに、上がり勝負はそこまで得意ではないと考えられます。

②ジャンプラ賞 8着/ロッキンジS 2
こちらは1,400m戦と1,600m戦です。
いずれも2F目から6F目まで11秒前半連発ですが、ジャンプラ賞では8着と一番悪い着順である一方、ロッキンジ賞では2着と好走しています。
以降のラップの落ち方を見ても、ジャンプラ賞の方がバテているのがよく分かると思います。

この2つの大きな差は馬場。重馬場でこれだけのキツいペースではさすがにもたないようですね。一方で1,600m戦ではかなり耐えています。

最初の1Fは日本と海外とで差異があるので、どうしても比較が難しいですが、ジュンブロッサムとソウルラッシュの過去のレースを見ても、11秒台前半がこれだけ続いているのは去年の京成杯AHくらいで、相当珍しいことが分かるのではないでしょうか。
上がり36秒08は相当時計が掛かっていますが、決して悪い数値とは言えません。

③ムーランドロンシャン賞/2
重馬場ですが、11秒台後半が連続するラップです。
ラスト3Fの中でこの馬が10.84秒を出しているように、11秒台後半は重馬場であってもこの馬にとっては結構遅いようですね。

勝ったのは香港マイルで14着と大敗している馬で、逃げ切り。展開に恵まれたと言えます。また、BCマイルで3着だったノータブルスピーチはこの時5着。後ろから差し切れませんでしたが展開面が大きい。
なお、この馬は4番手から上がり最速を出しているので、少なくともノータブルスピーチより力は上かもしれません。

③総括

以上まとめると、これまでのレースでのパフォーマンスを見る限りは以下のような特徴を持っていると思われます。

・速いペースに対する対応力は高く、基礎スピードもある。11秒後半くらいなら連発でも余裕あり。
・速い上がりへの対応は微妙だが、10秒台は出せる
・位置どりは恐らく先行〜差しくらいになりそう

今の京都は高速馬場なので、速いペースへの対応は出来るとして、速い上がりへの対応が同時に出来るかは未知数。
また週末の天気がどうなるか分からないような予報になっているので、天気予報とにらめっこしながら考えてきたいですね。

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