ヴィクトリアマイルで露呈したもの

人間、4時間×2日もサイリウム振ってたら、流石に関節の辺りが筋肉痛になるようです。どうもこんばんは。

今回、ヴィクトリアマイルのレースを見るにつけ、競馬の予想において欠かせない要素がたくさんあったのと、今の古馬牝馬路線の現実が見えた気がするので、ちょっとコラム的に書いてみようと思います。

ヴィクトリアマイルで何が起こったのか

まずはレースの回顧、というか、ラップからレースの質について書こうと思います。

細かな騎手の挙動だとか、レイパパレが発走直後躓いてあわや落馬になりそうとか、細かく見ていくと色んな要素はありますが、レイパパレはともかく、他の要素については一切考慮しません。

過去の傾向

2014~2021年のラップ
2014~2021年の3着以内馬データ

まず過去のレースで注目すべきは2019~2021年の異常な高速馬場。
馬場差-1.6~1.9というかなりの高速化(個人的には春の東京開催で最も馬場差が高い時期と思っています)により、前半3Fが33秒台になろうが、先行馬も上がり33.5秒とか使う超異常なレースになるのです。

こんなレース、ヴィクトリアマイル以外にありません。

で、今年はというと、多少雨の影響を受けてここ3年程ではないにしろ、京王杯SCや未勝利戦のレースを見る限り、馬場差は-1.5近辺であろうという見込みが立ちました。(とある計算方法でこの辺かなという予測が出来ます)実際は-1.4でしたが0.1の誤差なら許容範囲でしょう。

となれば、レシステンシアが34秒台前半くらいで逃げて、先行馬なら33秒半ば、差し馬なら33秒前半~32秒台でないと厳しい、そんな風に考えて予想を考えていました。

が、しかし、想定していた展開からは大きく外れる事態が起こります。

格下を逃げさせたことで生じた極端な前残りレース

2022年 ヴィクトリアマイル レースラップ
12.5-10.8-11.4-11.6-11.7-11.1-11.3-11.8
馬場差 -1.4
前半3F 34.7秒 5F 58.0秒

前半3F34.7秒。
これは雨が降って馬場状態の読みが難しかった2018年、稍重で馬場差±0だった2017年を除いても、ここ最近では遅い。しかも-1.4という馬場差、そしてGⅠという格を考えると、どうなんでしょうか。NHKマイルより遅いし。

最初にハナ争いをしていたのはテンが抜けているソダシとレシステンシアの2頭、しかしそこにガシガシ追ってなんとかハナに立とうとローザノワールが出てきたことで、2頭とも譲ってしまいます。

そりゃまぁ勢いで言えばローザノワールが勝ってたので仕方ないですが、中盤11.6-11.7のところで息を入れさせずに持続力戦に持ち込むとかあったんじゃないのと…。

この時点でレースの大勢はほぼ決しました。この高速馬場で格下にスロー逃げさせれば何が起こるかと言えば、前が残るに決まっています。

2022年ヴィクトリアマイルの結果

結果、このように、後方から上がり32.9秒を使っても1着馬に0.6秒も離されるレースとなりました。

ついでに言うと、ローザノワールが4着に残っているのもなかなか…何もせず直線勝負に賭けようとした後方勢は本当に反省した方が良いかと。今年のGⅠの中でもだいぶ凡戦だと思います。

とは言え、致し方ない部分もあって、実際のところ、

感想としてはこんな感じです。7~16着馬は皆ヴィクトリアマイルで好走出来るような適性ではありませんでした。

戦前から分かっていた適性外馬の大量出走

これ、私がTwitterでヴィクトリアマイルの2週間以上前に書いたものです。

今年のヴィクトリアマイルは「豪華メンツ」と言われていたようですが、メンツは豪華だけど、高速マイルで到底通用しなさそうなのばかりだな、と思いこうしたことをつぶやいたわけです。

1頭1頭見ていくと、

7着 アブレイズ
これまで1度もマイルを使っていないのに、いきなりヴィクトリアマイル参戦。過去好走したのは中山1800mか京都2000mという小回りロンスパコースと、上位3頭のレースだったメイSのみ。追走力が問われないこと自体はプラスですが、スタートが不安定な上に上がりを出せても差せないのは新潟開催の福島牝馬を見ても明らか。

8着 アカイイト
阪神2,000m~2,200m、中京2,000~2,200mの持続力ロンスパ戦が得意な馬が高速マイルに対応出来るハズがありません。位置取りも後方必至で条件最悪。

9着 シャドウディーヴァ
東京新聞杯で上位に来ているように、ちょい時計が掛かるマイルなら対応が可能なので、ペースがだいぶ速くなればあるかなとは思いましたが、前が遅すぎましたし、位置取りも後ろ過ぎました。

10着 ミスニューヨーク
アブレイズ、アカイイトと似た馬。ターコイズSを勝っていますが、あのレースは速い上がりは必要なく、むしろスタミナが問われるので、小回りロンスパ戦が得意なこの馬には合っています。なので、ヴィクトリアマイルとは真逆。

11着 ディヴィーナ
マイルは3戦していますが、どれもこれも前半遅いですし、馬場差を考慮しても速い上がりが使える感じではありませんでした。何より、7、8、10着馬と同じような小回りロンスパ得意な戦績なので当然適性外。

12着 レイパパレ
この馬については、スタートの落馬寸前のつまずきを考慮する必要がありますが、とは言え、元々現3歳のウィズグレイスっぽいなと思ったのでほとんど評価していませんでした。

なにより、2,000mの重馬場であんな勝ち方する馬が、東京の高速上がりマイル戦で勝てるとは到底思えないんですよね。だって、適性真逆ですよ?同じ道悪得意な馬と言えば、モズベッロ、ステラヴェローチェ、レッドジェネシスがいますが、皆高速上がりレース不得意ですよね。

もちろんスピード能力が非凡なのは確かです。ただし、ウィズグレイスもそうですが、1,800~2,000mを主戦とする中距離馬相手であれば相対的に基礎スピードで優位に立てる馬というのは、えてして距離短縮するとその優位性を削がれてしまうので凡走しがちです。

だからこそ、

かなり早い段階で、このようにレイパパレを危険視していました。

13着 テルツェット
昨年の負け方を見る限り、馬場差が多少プラスに向いたからと言って上位に来るとは思えませんし、クイーンCを勝っているように、やっぱりこの馬も小回りロンスパ向き。

14着 アンドヴァラナウト
阪神牝馬の負け方が気にくわず、いくら中盤がそこまで緩んでいないとは言え、これで33秒台出せないなら厳しいなと思っていました。
過去の戦績を見ても持続力が問われるレースの方が良さそうですね。

15着 デゼル
そもそもマイルが合っていません。あまり追走能力も高くないので、馬場差-1.5でもジンワリとですが上がりに影響しています。
去年の阪神牝馬のように、馬場があまりに軽すぎて追走力が全く問われない、究極的なトップスピードが求められるようなレースは別ですが。
昨年の凡走で分かるはずなんですけどね…。

16着 クリノプレミアム
キャピタルSを見れば分かりますが、そもそもそこまでマイルが合っている馬ではないんですよね。レイパパレ同様、そういう馬って1,800くらいだとスピード能力で優位に立てるので強い競馬が出来るんです。だからこそ、中山牝馬Sでワイドの軸にしたり、福島牝馬Sで本命にしていました。フロックではなく、馬の能力と適性の問題。

17着 マジックキャッスル
お兄さんがそうでしたが、かつて強くても、頓挫するとこの一族はダメになります。前半が遅すぎたのもありますが、昨年より上がりが使えていない時点で能力の衰えは確実かと。適性はあっても、流石にここまで頓挫してしまうと…という例。

18着 メイショウミモザ
この馬の前走の好走は驚いたんですが、前半3Fを見て「え?」ってなりました。前半3F36.0だったんですよね。
で、この36.0秒というのは、マイル戦ではだいぶ遅い、差し追込馬の時計です。

以前に書いた気もしますが、マイル以下のレースでは前半3Fと上がり3Fはキレイに反比例するようになっています。ですが、36秒辺りからその反比例のグラフの伸びが鈍ります。つまり、36.1秒で走ろうが36.5秒で走ろうが、上がりの脚がほとんど変わらない状態になるわけです。

そんな時計で前半走っていたわけですから、阪神牝馬Sの本質がここで見えてきます。あのレースは上がり勝負&前残りレースだったんです。
ただ、前にいた馬が全く上がりの使えない馬、能力が足りない馬ばかりだったことで、前からも後ろからも来れたような形に見えたわけです。

そして、上位3頭全馬が2桁負けを喫しているように、かなりヤバいレベルのレースでした。


露呈した牝馬マイル一線級の層の薄さ

ちなみに、レイパパレ以外にも色々不利だったりはあったようですが、不利がなければ、とかもう少し位置が取れていればとか、そういった部分って、本当に適性があったり、馬に実力があればある程度巻き返せる話だと思うんですよね。

しかし、現実はソダシだけがさっさと押し切ってしまい、他の馬はなす術なく、レシステンシアはローザノワールを交わすので精一杯という状態。
とにかく無事に走り切ることが最優先となっていた6着のデアリングタクトを除くと、7着以下はソダシに0.6秒以上離される結果になっています。

見た目は豪華でも、適性外の馬ばかり…これは裏を返すと牝馬マイルで一線級の活躍が出来る馬がほとんどいないことを表しているように思います。

多様な活躍が薄い4~5歳世代

昨年までは、グランアレグリアという絶対王者がいたのですが、

<現5歳世代>
デアリングタクト⇒故障で今回ようやく復帰
レシステンシア⇒短距離で活躍
マジックキャッスル⇒安定した成績を残すも、今年完全に落ち目
スマイルカナ⇒引退(時計の掛かるマイルでしか好走しない)
クラヴァシュドール⇒OPでも苦戦(そもそも追走力が低い、脚が一瞬)
サンクテュエール⇒凡走繰り返す
マルターズディオサ⇒時々好走も晩年は凡走続きで引退
リアアメリア⇒凡走続き

マイル一線級はレシステンシアくらいで、ソフトフルートやミスニューヨーク、ウインマリリンなど、どちらかというと中長距離の方が活躍。

<現4歳世代>
ソダシ⇒VM1着
サトノレイナス⇒引退
ファインルージュ⇒VM2着
アカイトリノムスメ⇒引退(VMは適性外だと思う)
アールドヴィーヴル⇒条件戦止まり
ククナ⇒条件戦止まり
ストゥーティ⇒条件戦止まり
エリザベスタワー⇒凡走続き
ソングライン⇒VM5着
ヨカヨカ⇒スプリント路線、引退
メイケイエール⇒スプリント路線
オパールムーン⇒条件戦止まり
ジェラルディーナ⇒重賞凡走続き
スライリー⇒凡走続き
クールキャット⇒凡走続き

中距離路線のステラリアがエリ女で2着(但し展開利)。

もうこんな状態なんですよね。。

例えば、グランアレグリアの世代であれば、シゲルピンクダイヤ、ダノンファンタジー、コントラチェック(好走条件限られるが)、シャドウディーヴァ、とまぁまぁいましたし、
アーモンドアイの世代であれば、ラッキーライラック、サウンドキアラ、ノームコア、トロワゼトワル、なんかも。

やはり上の世代と比べるとだいぶ手薄になっていますし、どちらかというと、中距離路線に傾いている印象が強いですね。

現3歳世代の合流後は・・・

現3歳世代が合流して以降どうなるかですが、ちょっと出遅れ癖のある差し馬とか、キツイ競馬になるとダメそうな馬とか、結構条件が付く馬が多いので、この戦況が大きく変わるかは微妙なところ。

少なくとも牝馬マイル路線では、ソダシの1強状態と見ても不思議ではないですね。

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