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第86回 日本ダービー(GⅠ)・展望&各馬評価(前半)

展望・・・の前に、現3歳世代の総括

いや~1年って早いですね…。

2~3歳限定戦は毎年6月からスタートするわけですが、私は7~8月に各所の2歳ステークスをやる程度で、未勝利戦や特別戦はデータが集まり始めた秋から本格的に参戦するようにしているんですね。

思えば、レッドアネモス・コントラチェック・アガラスを中心に広がる2歳馬の相手関係縮図を把握してからというもの、「あ~なめられてるなぁ」とか「こいつ強いか?」と勘違いされている馬が多かった1年でした。

自分が1年間見て来ての感想ですが、恐らく今年の3歳は全体的にレベルが低い、と思います。

その根拠はタイムとペースにあります。
昨年は、結構色んなレースでハイペースが生まれて、そこで前粘った馬を次で狙ったり、流れるペースの中を先行押し切りで勝った馬の持ちタイムが良くて、多少近走成績が悪くとも穴として狙ったり(忘れな草賞のリュヌルージュとか)したのですが、それが結構ハマったんですよね。

でも、今年はスロー展開頻発でそうした好タイムがなかなか出ない。
世代全体としてもレースで鍛えられることなく、終わっていく馬が多い。
そして相手関係としても、古馬と混じって通用するのかな?という低レベルメンツしかいないレースが未勝利、500万下で頻発しています。

中には、展開向いて間違って勝ってしまい、多分2勝クラスでボロクソ負けまくって引退だな…と思われるような馬もいます。

ダービーが終われば、オープン入りできなかった3歳馬達は「1勝クラス(旧500万下)」や「2勝クラス(旧1000万下)」などに振り分けられ、4歳以上の古馬たちと混ざっての降級なきサバイバルバトルに突入していきますが、斤量が軽いからといって3歳馬にさっと手を出してしまわないようご注意ください。

さて、そんな世代の上位は果たしてどうなるか?昨年6月から始まり、平成~令和という時代をまたいで繰り広げられた3歳クラシック戦線も、いよいよ最大の山場、日本ダービーを迎えます。

例年の傾向

今開催の東京競馬場はずっと高速馬場。ヴィクトリアマイルでレコード決着直後に勝ち馬が骨折したことを気にしたのか、一昨日は水がかなり撒かれていたようで、「変な馬場だった」と騎手がコメントしていたそうです。

確かに実際目の前で見た感じ、良だけど高速馬場…ではない?ちょっと変な感じではありました。

馬場造園課の方々も苦慮しているようですね。。さて、今週からCコース替わり。月火と雨が降るものの、以降は好天かつ気温も高いので高速馬場傾向は続きそうで、先行勢有利の可能性が高いです。

日本ダービーのポイント

皐月賞と日本ダービーとの大きな違いは何かというと、スピードです。
皐月賞にはマイルからの転戦馬が多いため、どうしても中距離馬よりもマイル転戦馬がレースの主導権を握りやすい傾向にあります。

例えばスタートの瞬間。上の写真で○で囲った馬が皐月賞でスタートが速かった馬です。
左からアドマイヤマーズ、ダノンキングリー、ランスオブプラーナ、サートゥルナーリア、ダディーズマインド、ナイママ。

この内、マイルからの転戦馬は3頭で、ダノンキングリーを以外の2頭はダービーには出ません。

次にスタートして100mくらい進んだ瞬間です。
ここで○で囲っている馬は何かというと、これまで先行していた馬です。サトノルークスとラストドラフト。

この2頭は、流石にマイルの馬たちよりは初速・二の足が遅くなってしまうため、主導権を握られて控えざるをえなかった馬です。つまり自分の競馬をしていないわけです。

ダービーではこうした主導権を握られて、力を出せなかった馬が巻き返してくることにも注意したいところです。(馬券内確実というわけではなく、あくまで「紛れ込んでくるかも」といったレベルですが)

昨年も逃げ先行馬たちがぶっ飛ばして控えざるを得なかった(どころか最後方でしたが)ワグネリアンが、ダービーでは先行して成功していますし、皐月賞ではたくさんいた逃げ先行馬が、ダービーではエポカドーロとジェネラーレウーノしかおらず、先行有利の流れになりました。

皐月賞では【スピード&スタミナ】が色濃く問われますが、ダービーでは【展開を読んだ立ち回り&総合力】が問われます。

で、今年は?

今年は25頭もの登録がありますが、想定としては優先出走馬+収得賞金順の17頭を念頭に置き、900万組5頭から抽選で1頭だけ出れますが一旦無視します。

細かな展開予想は枠順が出てからにしますが、

逃げ候補は青葉賞でも逃げて強い勝ち方をしたリオンリオン。
続いてアドマイヤジャスタ、ランフォザローゼス、サトノルークス、ロジャーバローズ、ナイママが先行しそう。

サートゥルナーリアは好位。ヴェロックスは川田がサートゥルナーリアを相当意識しているはずですから、皐月賞での先行押し切り作戦ではなく、サートゥルナーリアと全体の流れを見ながら動ける位置で競馬する可能性が考えられます。ダノンキングリーとテンが速そうなチェイサーも同様か?

エメラルファイトは出たなり。

中団にはレッドジェニアル、クラージュゲリエ。ニシノデイジーは東スポ杯の再現を狙っての差し追込み作戦、
メイショウテンゲンはよく分かりませんが恐らく最後方、タガノディアマンテも京都新聞杯での失敗から控えるでしょう。

逃げ リオンリオン
番手 アドマイヤジャスタ、ランフォザローゼス、サトノルークス
   ロジャーバローズ、ナイママ
好位 サートゥルナーリア、ヴェロックス、ダノンキングリー
   ダノンチェイサー、エメラルファイト☆
中団 レッドジェニアル、ダノンチェイサー、クラージュゲリエ
   ニシノデイジー
後方 メイショウテンゲン、タガノディアマンテ

☆は陣営と鞍上の作戦次第

各馬評価<前半>

この流れで17頭一気に紹介するのは書く方(自分なんですけど)も見る方も大変だと思うので、前後半に分けます。

アドマイヤジャスタ 評価 △~消

ホープフルSまでは先行~好位で競馬をして好走していたが、すみれS~皐月賞と控えての競馬で凡走が続いている。

京都新聞杯で2着に入ったロジャーバローズを負かしたことを考えると決して弱くはないが、すみれSで明らかに勝算がないと分かったはずの控えての競馬を、皐月賞でも繰り返した。
談話を見る限りでは、枠と出足の鈍さで最後の脚に賭けたようだが、先行したダノンキングリーと上がりが同じでは全く収穫なし。(良い脚で来ていたとかいうプラスコメントがちらほらありますが、こういうのは無視)

枠次第だが、今回はそこまで初速が速くならないので、出来るだけ先行することを狙うはず。ただ、皐月賞は前が潰れる展開ながら、強い先行馬が速い上がりを繰り出しており、最後の直線で太刀打ちできないまま流れ込みそうな気も…。

ヴェロックス 評価:○

皐月賞では、若駒S・若葉Sで見せた3~4角で早め先頭に立って押し切る競馬を思った通り実践。サートゥルナーリアとの壮絶なたたき合いを演じながら惜しくも2着。ダービーでも有力の1頭で、今回はサートゥルナーリアを最も意識した動きをすると思われる。

この馬は常に中団から前での競馬をしており、800m通過以降は11秒台が続いた東スポ杯でも上位にいたように、タイトなペースにも耐えられる地力があるのが特徴。

今回は、血統的に2,400m持つかという不安、そして直線も長いのでサートゥルナーリアより早めに抜け出しとはいかないと思われるので、いつもよりは少し下げる可能性があるが、これも枠順次第だろう。(勝ちに行くなら先行したいと思われるが)

エメラルファイト 評価:△

スプリングSを制覇し、いざ皐月賞へというところで捻挫のために回避。今回は仕切り直しの1戦となる。

1,600~1,800mで戦ってきているように、スピードで勝負してきている馬なだけに、距離延長はあまり歓迎できない。血統的にもクロフネ産駒は、つい先週もエールヴォアがオークスで15着と大敗している。

この馬の武器はスピードの高さとタフな流れの中での伸び。速い流れでも余力を残しながら追走できるので、それなりに上がりの脚も使える。逆に、各馬が余力を残したスローの上がり勝負ではコスモカレンドゥラさえも抜かせなかったように不向きなようだ。

札幌2歳Sで4着、アイビーSでクロノジェネシスの3着、朝日杯FSで6着と実績はこのメンツの中に入ってもひけはとらない。持ち前のスピードとタフさを活かしてどれだけ戦えるかだろう。

クラージュゲリエ 評価:△~消

皐月賞では14番人気という低評価ながら5着と好走。ただ、今回はこの馬にとってはあまり条件が良くないと思われる。

以下、前回の評価。
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札幌や京都でのレースぶりから、小回りコースで4角を捲って前を飲み込む競馬が得意で、戦前から皐月賞では怖い存在となることが予想される。前走の共同通信杯は明らかにこの馬には不向きな、東京の直線瞬発力勝負だった。(中略)

また、3角あたりからデムーロが既に鞭を打っていたことから、かなりズブいのだろう。恐らく、モレイラはこの点を分かっていて、京都2歳Sでは坂を利用して早仕掛けをし、残り400m付近で先頭集団に取りついたと思われる。そういう意味ではマイラーとのロングスパート戦で優位に立てるかと言うとちょっと怪しい部分があり、早仕掛けをして出来る限りスピードに乗った状態でたたき合いに持ち込みたいところ。
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という具合に、小回りが得意で坂を使って加速することでギアチェンジ能力のなさを補っているというのがこの馬の評価。

皐月賞でも、同じ位置にいたサートゥルナーリアとは動き出しのタイミングが遅れたとは言え、サートゥルナーリアは1頭分外を走っているのに、完全に置かれている。

おおよそスロー~ミドル程度のペースが想定され、なおかつコース替わりによる高速決着が予想される今回は、かなり不向きなきらいも。

サートゥルナーリア 評価:◎候補

ホープフルSからの直行ローテを不安視されるも、ジンクスをはねのけて皐月賞1着となり、2冠目を目指す。3歳世代のダービー最有力候補。

前走は中団よりやや前の好位で競馬をし、流れるペースの中で最後方にいたタガノディアマンテよりも0.3秒速い上がりの脚を繰り出したように、基礎スピードの高さ、ギアチェンジ能力の高さ、タフさ、どれをとっても世代最上位で文句のつけようがないパフォーマンスを見せた。アーモンドアイと言い、世代上位の能力を持つロードカナロア産駒は共通してこの基礎スピードの高さが特徴的。

今回は、たたき2走目で皐月賞よりもパフォーマンスを上げてきそうだし、皐月賞前は流れるペースでのレース経験がなかったことが唯一の不安点だったので、この点まで解消されてしまうと本当にケチがつけられない。

なお、「皐月賞が辛勝だから、東京替わりだとダノンキングリーやヴェロックスの逆転も・・・」って言ってる方がいましたが、サートゥルナーリアは皐月賞が今年初戦だったっていうの分かっていますよね?

サトノルークス 評価:△

これまで先行して押し切る競馬をしてきたこの馬も、マイル転戦馬のスピードについていけず、皐月賞では後方に控えてしまっての大凡走。2,400mに延長される今回は条件好転となりそうな1頭。

この馬の前回の評価は、
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この馬の武器は立ち回りの上手さとタフさ。スッと前に行って好位の位置を取れるし、すみれSで見せたように、緩急のあるスピードにも置かれずに番手で対応できるだけのギアチェンジ能力も見せている。

基本的にはロングスパートが得意と思われるが、クラージュゲリエほどのズブさもない、本当に器用という感じなのだろう。そして、500万下戦で流れるペースでもしっかりと先行して押し切るだけの力を証明した。
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という具合。

今回は確実に先行するだろうし、内枠でも引ければ、馬券内に食い込んできてもおかしくはなさそう。皐月賞上位3頭とはスピードに差があるので、その差を持ち前の立ち回りの上手さでどれだけ補えるかがポイントになる。

シュヴァルツリーゼ 評価:消(成長次第で△)

弥生賞では2着に好走するも皐月賞では手も足も出せずの12着凡走。まだキャリア3戦目とこれからの成長が期待され、舞台が広いコースに変わってどれだけやれるか。

この馬の前走評価は、
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新馬戦は1,000m1分5秒という酷いスローを先行して押し切ったが、ラップの通りレースレベルはかなり低く、2着以下は未勝利脱出はおろか、上位でもダート転向してようやく上位というメンツばかり。

弥生賞は出遅れがかえって良い方に向き、後方から進んで4角で外に出し、上がり最速で差しての2着となった。が、前がきつくなってバテているように展開が向いた上に、4角でのカーブの曲がり方がかなり雑なように、まだまだ競走馬としてては未熟で、色んな要素がハマっての好走という感じ。
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というように、あまり高い評価は出来ない。

皐月賞はナイママに先着されているし、先行して最もキツかったであろうダディーズマインドすら抜かせていないので、スピードもスタミナも根本的に足りていない。あまり良い負け方とは言えないだろう。

「広いコースに変わるから」という根拠のないしょうもない談話よりも、この1ヶ月でどれだけ成長したかに注目したい。

タガノディアマンテ 評価:消

よく見たらこの馬、1勝しかしていないですね。まぁいいや。皐月賞では上がり2位の脚で最後方から押し上げるも6着まで。直線の長い東京で末脚を生かして逆転なるか。

賞金的にボーダーラインにいたとは言え、とにかく京都新聞杯が余計。しかも勝ちをかなり意識したのか、エリカ賞で見せた先行競馬を再びやるも5着までと賞金も積めずに終わった。

結果的にザダルの回避や賞金上位の馬が出てこなかったこともあり、17番目で出走可能になったが、2月以降毎月レースに出ていて今年5戦目となり、流石に上積みはもうないのでは?

皐月賞でも、最後方から仕掛けていって、先行したヴェロックスと上がりが同じでは到底上位馬に太刀打ちするのは難しい。

ダノンキングリー 評価:△

皐月賞ではサートゥルナーリアとヴェロックス相手にタイム差なしの3着。実績のある東京コースでどれだけ巻き返せるか。

この馬の戦前評価は、
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ひいらぎ賞はロングスパート戦、共同通信杯はギアチェンジによるトップスピード戦と、全く異なる2つのレース展開でいずれも勝ち切っており、経験値と潜在能力はかなり高い可能性がある。2,000mさえこなせれば、サートゥルナーリアを倒す筆頭株となり得るだろう。

この馬が特筆すべきはとかくひいらぎ賞。前半3Fは34.7秒、1,000m通過も57.6秒という超絶ハイラップ。さすがに最後の3Fはすべて12秒~12.1秒になったが、中団からスパートをかけて、上がり3Fは35.5秒で後続に0.6秒もの差をつけている。マイル馬の中でも卓越したスピード能力の持ち主と言える。
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としておりました。そして最大の不安は鞍上とも。

枠の問題もあったが、結局3~4角では外でヴェロックスが押し上げる中、内で踏み遅れて仕掛けが遅くなってしまっており、2頭の後塵を拝す結果になっている。ここが川田・ルメール>戸崎、の最たる所以。

ダービーでも引き続き同じ鞍上戸崎圭太だが、距離不安から今回は控える形を選ぶだろう。ただ、正直やっぱりこの人に賭けるのはおススメしない。

4月後半~5月に好騎乗が目立ったので、結構ノれているなと思ってNHKマイルでヴィッテルスバッハに注目していたらあの騎乗である。(伸びない内に突っ込むバカ騎乗・・・)

戦略的に考えて乗らないし、馬群を捌けないのに馬群につっこむので、ハマれば好騎乗、ハマらなければクソ騎乗となる。実力的には上位だが、3強崩れがあるとすれば、この鞍上のミスだと思う。

今回はここまで。読んでいただき、ありがとうございました!(後半に続く)

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