新潟2歳S(GⅢ)・各馬評価
皆様、コロナで世の中が大変な状況になっておりますが、お元気でしょうか。
前回投稿が7月頭のラジオNIKKEI賞ということで、早1.5ヶ月。そろそろ秋競馬の音が聞こえてきていますよということで、今年も2歳世代最初のマイル重賞の季節になりました。
例年の傾向
昨年も書いていたので、一部引用(という名の省エネ対応)。
例年のラップを見ると、平均で前半3F35.6秒かつマイル重賞とは思えない、中盤12秒台連発のレース。最後の3Fが薄緑~青が多いように、とにかく上がり勝負のレースになりがちです。
昨年2020年はレース上がりが35.1秒と時計が掛かっていますが、これはハヴァスの暴走気味のペースと開催後半に度重なる雨で馬場が傷んだことが大きいです。
今年は22日に雨が降って稍重での開催となりましたので、この影響がどこまであるか。今のところ、週末の天気が日ごとに変わっているので、注視したいところです。
その特殊な昨年を除くと、1着馬は上位の上がりを使っており、差し・追込馬がほとんどです。中でも差し馬は12年間で36頭中20頭が馬券圏内に入っており、差し馬を狙うのが最も的中確率を高めると言えます。
また、次いで多いのが9頭で先行勢(追込馬が6頭なので、ほとんど差はないですが)。基本的にスローペース、直線平坦なので、先行しながらスパッと瞬発力が使える馬は残りやすい傾向にあると言えます。
以上の通り、1,400m~1,600mの流れるペースを勝ってきた馬にとってみれば、全く質が異なるレースとなります。
普段なら速いペースで押し切ったことは非常に高く評価したいところなんですが、キツイペースからの持続力勝負が得意な馬はキレ負けするので、この辺りの出し入れを上手くやりたいですね。
もちろん、600mの直線をずっとスパートし続ける形になるので、瞬間的な脚しか使えない馬よりは、速い脚を持続的に使える馬の方が良いのですが。
で、今年は?
今年は1200mからの距離延長組であるサイードの動きが気になるところですが、談話で「今後につながる競馬をしてくれた」とあるので、逃げることはしたくなさそう。鞍上も積極的な逃げは打たない戸崎騎手。
とすれば、オタルエバーとタガノフィナーレが逃げ候補でしょう。前者は幸騎手、後者は田辺騎手(ブックでは不明でnetkeibaだと田辺騎手想定)なので、どちらも逃げるとなればあまり躊躇はしないタイプ。
また、流石にここでガン逃げをするとも思えないので、例年くらいのペースと考えて良さそうです。(森厩舎の2頭が何を考えているか分かりませんが)
各馬評価
今回は各馬とも1戦、多くとも3戦なのでこの表でまとめて見られるようにしました。先の図のテン1Fの速さ順※に並べています。なので、評価もその順で。(※この順に隊列が組まれるとは思っていませんので、悪しからず)
なお、どの馬も1戦、多くても3戦しかしておらず、未知数なところも多いので、レースラップから推測される能力の評価に加えて、相手関係からもレベルを考察する構成にしております。
サイード
1200mしか経験がないので判断材料に乏しいですが、キズナ産駒かつスプリント戦や千直で強かったベルカントの弟。となれば、1600mのスローからの上がり勝負では厳しい気がします。
今回、前半の追走が緩む分はプラスなので、先行してどれだけ前で粘れるかを予想して取捨を決めたいところ。多少乱ペースになった方がこの馬には有利に働きそうですが…。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
各馬次走の着順を見ると、勝った時の新馬戦自体はそこまでレベルが低くなかった印象。ただし、0.3秒差だったショウナンが1600mで1.0秒も離されており、やはりレース質という面で怪しい可能性も。
オタルエバー
新馬戦では、逃げながら上がり33.5秒をたたき出し、残り4F目12.4秒⇒3F目11.5へのギアチェンジ、さらにそこから2F目10.7秒へギアを上げています。前述した「先行しながら速い上がりが使える」理想的な先行馬と言えます。
勝ち時計を見ても、新潟2歳Sの例年のものに近いという点では馬券内は堅そうな気がしています。
あとは、横の比較。新潟を使っているのがこの馬だけなので、なかなか比較が難しいのが悩ましいところ。この馬が先行して33.5秒で上がりをまとめたとしても、後続で32秒台が使える可能性も残っているので「馬券内は絶対」とも言い切れないのは否めません。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
スローペースを最後方から差してきた5着馬が大敗。と言っても、オタルエバーはムーンリットナイトに1秒着差をつけているので、これだけではあまり判断がつかず。2~4着馬は未出走。
タガノフィナーレ
ダリア賞の時、一番飛びそうだなと思ったのがこの馬です(結果的に3着粘られましたが)。
新馬戦は1400m戦なのに、前半3F36.9秒と壊滅的に遅く、上がりも3F目が12秒台でもはや2Fしか走っていません。これではまず勝てないだろうと踏んでいましたが、その通りになりました。
瞬発力勝負にはそこそこ対応出来ていますが、2戦した阪神も新潟も、1400mは600~400m区間がコーナーになっていて、ペースが上がり切らずに済んでいた(残り400m地点で余力があった)面は否めません。また、2戦共にペースが遅いので、追走が楽になる等の距離延長の利はほぼゼロ。
むしろ、距離延長+直線が長くなってスパート時間が増えることを考えると、マイナス材料が多い印象です。
前走の負け方を見ても、明らかに瞬発力のある先行勢にやられそうで、頭はまず厳しく、3着残れるかどうかというところでしょう。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
前残りを差してきたドンフランキーが次走崩れていますが、ペースが速かったにも関わらず強気になって速めに位置を上げたことが要因と考えられます。4着以下は、ダートにでたり、新潟1600mで大敗(相手はプルパレイ)していてあまり良い結果が残せていません。
コムストックロード
新馬戦クレイドル組4着。これだけならハイレベルレース出走馬ということで買い要素があるのですが、1400mと1600mでのパフォーマンスを見ると雲泥の差が見られます。
これは上の表を切り取ったものですが、1400m戦では10秒台の脚を使えている一方、1600mでは使えていないことが分かりますでしょうか。
仕上がり云々の話はあるかもしれませんが、2走目は新馬から中1週での出走ですし、ラップ面では、レース全体のペースは1400mの方が速いものの、本馬の前半3F走破タイムは36.5、36.6、36.2秒とほとんど差がありません。しかも馬場差は新馬の時の方が速いです。
にも関わらず、上がりの脚にこれだけ差が出るということは、単純に1600mはこの馬には距離が長い可能性が高いという仮説が成り立ちます。
なお、兄弟を見ると短距離~中距離様々出ていますが、結果が出ているのは1400以下が中心でした。
<未勝利戦 上位馬の前走戦績>
この馬については、未勝利勝ち馬ということでその時の上位馬の前走戦績からレースレベルを確認しています。
2着から5着まですべて前走同じレースを走っていた馬の再戦でしたが、コムストックロードにまとめてやられた格好。
こう考えると、新馬クレイドル組>新馬ビーオンザマーチ組という図式になりますし、レースレベルもかなり微妙な印象を持ちます。なお、ビーオンザマーチ組3着馬マニカルニカは、次走で新馬サイード組のショウナンラタンに0.3秒差先着しています。
スタニングローズ
出走馬の中で、1200mのサイード以外にマイル戦で速いペース(前半3F35秒台)を経験しているのはこの馬のみとなっています。
が、新馬戦もそこそこのペースで流れており、中盤もそこまで大きくはペースが落ちなかったため、新潟2歳Sに対する適性は未知数と言えます。
ただ、未勝利戦で11.8-11.3-12.5というラップに対応し、本馬の上がり3Fは11.6-11.3-12.5という推移になっています。特に内回り外回りの合流地点辺りでの加速は見どころありでした。
全体的にペースが速かったことで、最後の200mでガクンと落ちていると思われますが、緩くなれば最後までもっと速いラップを持続できると思われるので、何かしら印は回したいところ。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
新馬戦でスタニングローズは2着。3着以下の馬の次走を見ると、適性外とも言えるようなローテを使われているような印象ですが、レースレベルは微妙です。
なお、マイネルレノンは未勝利戦でも再戦となるわけですが、新馬で0.1秒差⇒未勝利戦で0.6秒差と、着差が広がっていることを考えるとスタニングローズはキツイ競馬の方が適性が高い…気もします。
<未勝利戦 上位馬前走戦績>
上位のメンツを見ると、今回出てくるクラウンドマジック組にコマンドライン組2着馬と、未勝利戦のレースレベルはそこそこ高そうです。
ちなみに、クラウンドマジック組のクロニクルノヴァが大きく前進していますが、この馬、新馬も未勝利戦もほぼ同じ上がりの脚を使っているので、単純に速い上がりが出せない可能性が高い(上がりの掛かるレースで浮上するタイプ)と言えます。
アライバル
1番人気が想定されている注目馬。新馬戦では逃げるプルパレイ相手に残り100m辺りで捉えての勝利となりました。
レースを見た方は分かると思いますが、いきなりグンとギアチェンジするというよりは、速い脚を持続させながらどんどん加速していくタイプのように感じます。
実際、ラップ推移を見ても11.7-11.1-10.9と最後に10秒台に突入しており、キレよりも持続力に寄っているという点でハービンジャー産駒らしいなという印象。
新馬戦では、相手が持続力に長けたタイプのプルパレイだったので差せましたが、この手の馬は、先行して速い上がりを出せるような馬相手になると、出し抜かれやすい(差し損ねしやすい)傾向にあります。
※特に新潟は平坦で前が粘りやすいので
今回その「先行して速い上がりを出せる」タイプの馬が何頭かいますので、頭鉄板かと言うとどうでしょうか。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
見ての通り、皆優秀。レースレベルは高めでしょう。ただし、どの馬も速い上がり勝負よりは、持続力勝負に強い(少なくとも2、5着馬は該当)可能性があるので、その点は要注意です。
※現3歳世代でいうと、ダノンザキッド組がそれに当たります。詳しくは皐月賞の記事を見て頂ければ分かります。
ウインピクシス
ん~・・・まぁ最も新潟2歳Sに合わない馬の1頭でしょう。。
ゴールドシップ産駒の牝馬はユーバーレーベンのように速い上がりを出せる馬もいますが、どちらかというと中距離で先行して一瞬の脚で後続を出し抜く馬が多い印象です(例:ウインマイティー、ウインキートス)。
この手の馬は、マイルになると位置取りが後ろになる、追走に脚を削がれる、速い上がりを出せない、といった理由で凡走しがちです。
新馬戦は、福島1800mで馬場差も他の馬に比べてプラス方向に近い数値ですが、この馬自身の前半3F走破タイムが38.2秒と出走登録馬で断トツの遅さ。
好走するよりも、苦戦を強いられる可能性の方が高い気がします。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
2着以下の馬は2頭が馬券内ですが、2頭とも差してきた馬であることに留意しておきたいところ。逆に、ウインピクシス同様に先行したナザレは、次走逃げて4秒近く速いペースを自ら作り1.8秒もの大敗を喫します。
なお、ワープスピードについては新潟1800mで好走していますが、このレースはMペース判定で上がり勝負にはなっていません。
クレイドル
ステラヴェローチェの妹で、個人的にはPOG指名馬でもあります。
新馬戦はレディナビゲーター、リアグラシアといった注目馬相手に凌ぎ切りました。
クロフネ産駒でキレる脚が使えるイメージがあまりないのですが、新馬戦では、上がり3F推移が12.1-10.9-11.3と(個人的には)意外な瞬発力を見せました。
ただ、新馬で負かしたレディナビゲーターは次走でも差し損ねていますし、リアグラシアにしても、明らかにスパッとキレるタイプというよりは、速い脚を長く使うタイプのようなので、相手にやや恵まれた感もあります。それだけに、今回の出走馬相手にどこまで対応できるか。
テンがそこまで速くはないものの、前半3F走破タイム比較ではそこそこの位置を取ることが出来そうなので、オタルエバー辺りをマークしながら進めるのが得策かなというところ。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
着差0.1~0.2秒辺りの2~4着馬は次走でも好走しており、レースレベルは高め。ミギーフェイスは上がり3Fを見ても上位4頭とはだいぶ力差があるので、高レベル馬は上位4頭に限られそうです。
グランドライン
新馬はアライバルの5着で0.7秒差負け。次走、福島未勝利戦で200m延長して逃げ切り勝ちをおさめました。
東京のマイル・速い上がり勝負で完敗 ⇒ 距離延長して福島の時計が掛かるレースで逃げ切り勝ち、という過程を見れば明らかで、新潟2歳S向きとは思えません。
<未勝利戦 上位馬前走・次走の戦績>
見ての通り、結構な着差負けを喫している馬が多く、レースレベルはあまり高くなさそうです。
キミワクイーン
新馬戦は逃げ~先行して押し切り勝ち。瞬発力勝負にも対応出来てはいます。が、とにかく距離に反してレースラップが遅すぎます。。
1400m戦にも関わらず、2000mのようなレースラップで前半3Fが39.0秒、1,000m通過が63.9秒。前半3Fの走破タイムは出走馬中最も遅いので、前回とは全く違う展開でどれだけ対応できるかがカギになりそうです。
タガノフィナーレのところでも書きましたが、これだけペースが遅いと追走が楽になるということもなく、むしろこの馬にとってはペースが速くなるような状況になるため、走る距離が長くなる分距離延長はマイナスになります。
また、鞍上はスタートが上手くないので、最後方になるリスクもあり、これらのマイナス要素をどこまで払拭できるかがカギと言えます。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
出走しているのが2頭だけですが、片や馬券内、片や大敗となっています。前者は新馬戦で差してきた馬、後者は先行していた馬、ということで、このレースが如何に前に有利だったかがよく分かると思います。
セリフォス
新馬戦にしては珍しいラップ推移で、前半3Fこそ遅いのですが、中盤の2Fのラップが11.7-11.7と緩んでいません。ほとんど息を入れられなかったためか、逃げた馬は2.9秒もの大敗を喫しています。
そうした意味では、この手のレースで先行して押し切ったことは非常に評価出来ます。が、こうしたラップの刻み方は、上がり勝負になりやすい新潟2歳Sとは異なるレース質。
本馬が厳しい展開のレースに強いダイワメジャー産駒であることも、このレースが持続力勝負だったことの証左と言えます。
テンの遅さや前半3Fの走破タイムから、差しにまわりそうな点がどうかですが、鞍上が先行至上主義の川田騎手なので、前には行きそうです。
中盤緩んだ時のパフォーマンスが未知数(上がりのタイム34.4秒をどこまで縮められるか)な分、強くは推しづらいところ。
<新馬戦 上位馬次走以降の戦績>
差してきたベルクレスタが次走快勝(瞬発力勝負に対応)。1秒突き離した4着馬ヒルノローザンヌは、次走でスタニングローズと対戦しています。特段ハイレベルレースとまでは言えないメンツでしょう。
クラウンドマジック
西の世代最初の勝ち上がり馬。
セリフォスもそうですが、中京競馬場は3コーナー手前から下り坂になるので、息を入れたいタイミングでスピードが出てしまい、結果的に持続力勝負のレースになりやすい傾向にあります。
なので、同じ直線が長い新潟とレースの質が変わってくるというわけです。
クラウンドマジック新馬戦もまさにそれで、中盤がそれほど緩まないまま直線に入っているため、上がり勝負というよりはやや持続力が求められるレースになっています。
実際、2着馬のラクスパラディーは次走こそそこそこ流れましたが、次々走は前半1,000m通過が1分4秒近いレースになってしまい、稍重とは言え上がり33秒台が出る馬場になり、逃げた馬を捉えきれずに3着に負けています。
そうした意味では、今回の新潟2歳Sはこの馬向きのレースとは少々質が異なる可能性が高い。位置取り的にも後方になることは必至で、そこからどれだけの脚を使って上位に上がれるか、この馬の潜在能力が問われることになりそうです。
2着馬が勝ち切れていない一方で、5着馬が次走勝ち上がり、更に6着馬がスタニングローズの2着(6着馬おあつらえ向きの展開になったことは確かですが)と、下の着順の馬が好走していたりしています。評価が難しいところですが、決してレースレベルが低いとまでは言えないでしょう。