【コラム】2024年皐月賞・展望
※今回はエッセイ風にお送りします
格言は生きているか?
皐月賞は「最も速い馬が勝つ」
こう言われて久しいが、近年はそんなこともない。
というか、コントレイルを最後に、勝ち馬が古馬になってから活躍していない。
エフフォーリアは、3歳の時に古馬相手に天皇賞・秋、有馬記念と勝ったが、大阪杯以降沈没して宝塚記念を最後に引退。
ジオグリフは、皐月賞で勝った後、馬券外が長らく続き、今年の中山記念で久々の3着も、次の大阪杯では馬券外。
ソールオリエンスは、古馬になってから凡走続き。
その前はどうか?
2019年勝ち馬 サートゥルナーリアは古馬1戦目の金鯱賞で勝利、次の宝塚記念では4着。このレースは、その後調子を崩す馬たちが続出したとんでもない道悪だったので、情状酌量の余地はある。サートゥルナーリア自身もこれが祟ってか、引退する形になった。
2018年勝ち馬 エポカドーロは中山記念、大阪杯と連続凡走し、引退。
コントレイルの次に古馬になっても活躍したのは、2017年アルアインまで遡らなければならない。
挙げてみると気づくが、勝ち馬の未来がどうにも暗い。
何故こんなことが起きているかと言うと、近年とにかくスピードが問われない傾向が続いているためだ。
先に挙げた馬たちが勝った時の馬場を見ると、
2023年 重
2022年 良
2021年 稍重
2020年 稍重
2019年 良
2018年 稍重
2017年 良
実に2年に1回は道悪状態。
季節的に致し方ないが、もうちょっとどうにかならないの?と思うレベル。これでは「最も速い馬が勝つ」という格言が崩れるのも無理はない。
レースの中身も馬場状態やメンツによってかなり落差がある。
2023年 重 前半5F 58.5秒 上がり4F 49.7秒
2022年 良 前半5F 60.2秒 上がり4F 47.2秒
2021年 稍重 前半5F 60.3秒 上がり4F 48.9秒
2020年 稍重 前半5F 59.8秒 上がり4F 48.0秒
2019年 良 前半5F 59.1秒 上がり4F 46.9秒
2018年 稍重 前半5F 59.2秒 上がり4F 49.7秒
2017年 良 前半5F 59.0秒 上がり4F 46.4秒
前半速く、後半上がり4Fもしっかりと脚を使わなくてはいけなかったのは、
サートゥルナーリアの2019年、アルアインの2017年。
2頭とも古馬になっても勝ち鞍があった。
コントレイルの年は、前半5Fは60秒を切っており、馬場差は過去の中でも2番目に重い。上がり4Fは単純に見るとそこまで速くはないが、馬場差を考えると48.0秒は明らかに速い。
良馬場なのに前半が遅い、或いは上がり4Fが49秒、といったレースでの勝ち馬は結局その後大成しにくいことを歴史が物語っている。
個人的に、こういった「勝利」は点で見れば喜ばしいことだが、線で見るとそうとも限らない。トライアルでの賞金積算も同様。
言い方は良くないかもしれないが、展開のアヤで分不相応な賞金を積んでしまい、クラシックはもちろん、古馬になってももうどうにもならない馬を時々見かける。苦し紛れに距離を縮めるも、適性がないから負けが続く。
以前存在した「収得賞金の半減」が、こういった馬にとっては救済措置であったことを強く実感する。
話題が逸れてしまった。
数年ぶりのスピードが求められるレースに?
何故冒頭にこのようなことを書いたかと言えば、4/14当日の天気予報だ。
月火は雨も、その後は晴れ、しかも気温は20℃超えが続く。
流石に去年のような上がり4F49秒などというレースにはならない。
また、少し前はちゃんとした逃げ馬不在とされていたところ、毎日杯で道悪にも関わらずペースの締まった逃げで驚異のパフォーマンスを出したメイショウタバルの存在もある。
こうなると、2017年や2019年のように、前半がそこそこ流れて、後半もしっかりと脚を使う必要がある展開になる可能性を考えておきたい。
今年の出走馬で2,000m以上で前半5F60.0秒を切ったのは唯一、京都2歳S、そしてコスモキュランダが2着だった1勝クラス、わずかこの2鞍。
ただ、京都2歳Sは後半4Fのラップが最速でも1F11.9秒で上がり切っていないし、1勝クラスも残り400mまで12秒台が続いており、これまた上がり切っていない。
スパート経験が乏しい世代
以前にもXで指摘したが、この世代はスパート経験が乏しい。
というか、残り3Fのうち12秒台があるレースがとにかく多い。
若駒Sのように、馬場が重くて時計が掛かって11秒台が出しづらい条件のレースももちろんあるが、
きさらぎ賞、スプリングSなどは、逃げ馬がスパートしなかったがために上がり勝負になった。
前者はこの12.0秒の間に下り坂を利用して前に迫ったことで前を飲み込み、
後者はその逆で後ろが何もできないで終わっている。
弥生賞は中盤が緩まず、最後の1Fが12.0秒まで落ち、地力勝負になった。
とまぁ、状況は様々だが、いずれにしても、3F、或いは4Fスパートする経験が少ない、つまり、後半を速く走るよりも、12秒台が入るタフ寄りの適性がある馬が賞金を積んで皐月賞に出ている可能性が高い。(スプリングSは上がり勝負だが、少なくとも前にいたタフ寄りの馬は展開に恵まれた)
これは、昨年の桜花賞の際に指摘した事象に近い。
詳細は下のリンクを見て欲しいが、端的に言えば「前哨戦は前潰れで上がりの掛かるレースになることが非常に多く、上がりの掛かるレースで強い馬が賞金を積んだ状態」になっていた。
逃げ馬がほとんどいなくなってしまったので、前が潰れるようなレースにならず、桜花賞は、リバティアイランド、コナコースト、ペリファーニア、と上がりが求められたレースで上位だった馬を狙うことで的中出来たレースとなった。
恐らく、今年の皐月賞はこの感じにかなり近いハズである。
少なくとも現時点で、
・サンライズジパング
・ウォーターリヒト
・アレグロブリランテ
この3頭は高速決着や、後半速く走る能力にはかなり乏しいと思われる。
とは言え、前半が速くなれば後半は時計も掛かってくる。特に今週は道悪でレースが行われた分、3~4角の内側の馬場は掘れに掘れてボロボロである。
どこまで馬場が高速化するかは、前日・当日の馬場を見てしっかりと判断したい。